【戦いは必勝にあらざれば以て戦いを言うべからず】 勝利を引き寄せるマネージ
巨大会社に挑むことになった。勝てる見込みは薄い中で活路を見い出せるであろうか…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
衆寡敵せず
- 中国語:寡不敌众 [ guǎ bù dí zhòng ]
- 出典:孟子(梁惠王上)
- 原文:寡固不可以敌众 [寡は個(もと)より以て衆に敵すべからず]
- 意味:「衆」は多人数、「寡」は少人数のこと。少人数は多人数には勝てない。多勢に無勢。
初難を憚(はばか)ること毋(なか)れ
- 中国語:毋惮初难 [ wú dàn chū nán ]
- 出典:菜根譚
- 原文:毋恃久安,毋惮初难(久安を恃むことなかれ、初難を憚ることなかれ)
- 意味:安寧はいつまでも続くとは限らない、最初の困難であっさり挫けて逃げ腰になるないように。
戦いは必勝にあらざれば以て戦いを言うべからず
- 中国語:战不必胜不可以言战 [ zhàn bù bì shèng bù kě yǐ yán zhàn ]
- 出典:尉缭子(攻权第五)
- 意味:戦いは勝算を得てから始めるべきである。勝算のない戦いはするべきではないとの意。事前に敵の勢力を調査分析し、勝算を得てから始めるべきである。
虎に翼を添えるが如し
- 中国語:如虎添翼 [ rú hǔ tiān yì ]
- 出典:諸葛亮(心书·兵机)
- 意味:虎に翼をつけるようなものであるとの意。強い力を持つ人が更に強力になることの例え。鬼に金棒。
始めは処女の如く、後には脱兎の如し
- 中国語:始如处女,后如脱兔 [ shǐ rú chǔ nǚ,hòu rú tuō tù ]
- 出典:孫子(九地)
- 原文:始如处女,敌人开户;后如脱兔,敌不及拒 (始めは処女の如くにして、敵人戸を開き、後には脱兎の如くにして、敵、拒(ふせ)ぐに及ばず)
- 意味:始めは物静かに振舞っていると、敵は油断する。その間に着々と戦いの準備を行い、機を得て脱兎のような勢いで攻め込む。
記事:【戦いは必勝にあらざれば以て戦いを言うべからず】勝利を引き寄せるマネージ
吹けば飛ぶよう
設立後約6年の中国現地法人に総経理(社長)として赴任。顧客数は数百件のみ。経営は勿論赤字。
一方、競争相手となる会社の顧客数は2万件。吹けば飛ぶような規模の我が社のことを競争相手だとは認めていなかったに違いありません。
「衆寡敵せず」、多勢に無勢もいいところ。マーケットでの勝算の端すら見えません。
象と蟻
さらには、その「競争相手」は、背後に絶対的な官権力を有していました。「虎に翼を添えるが如し」のような、まさに強力官製企業で、その前にあっては、象に挑む蟻のようなもの。
そのちっぽけな会社の総経理として、さてどうしたものか。何とか現状を維持しておけばいずれ帰国するという道はありますが、それでは現地の社員達があまりにも可哀そうです。何より、細々とした仕事は自分の性に合わない。
暗闇の中で
国の体制は違っていても、習慣が異なっていても、そこで人々は生業を持ち生活を営んでいるのですから、どこかに勝算を見出すことはできるはず。たとえ劣勢の中であっても敢えて戦いを挑むと格好よく意気込んでは見ましたが、さて如何なりますことか…
暗闇の中にあっても、しばらく目を凝らしているとうっすらと物が見えてきます。ですから最初はおとなしく観察していればそれでよい。うっすらと見えるものを感じ、それがはっきりとした段階で打って出よう。
孫子の兵法にある「始めは処女の如く、後には脱兎の如し」だ。
大軍に怯まず
ガリバーのような競争相手。しかも背景には強力な官権を持つ。どうにも打つ手がないと思っていたが、実はそこにこそ弱点がある。赴任して3年後にやっと気がつきました。
ぞんざいで、時には尊大な態度での顧客対応。脆弱な社内の団結力。巨大であるが故か、背景にある権力の故か、どうも企業としての満足な営業活動はなされていなかったようでした。
見えてきた勝算の目途とともに、施策を矢継ぎ早に打ち出し、数年後には逆転勝利を修めるまでになりました。
中国で成功を勝ち取るには決して奇策などなく、基本はやはり正攻法です。
最も大事なことは、「初難を憚ることなかれ」、見上げるほど高い壁であっても怖気づくことなく、くじけないことです。すると勝算が見えてくるのです。
味方となる社員達の気持をひとつに纏め、自発能動の組織体を作ること、つまり、総経理の強い一念があれば大軍にだって勝てるのです! 大軍に相対して怯むことはないのです。
勝算を見つけ勝つ
人生には「負け戦」とわかっていながら戦わねばならないこともあるかもしれません。
しかし、わざわざ中国に赴任して、勝算も無いのに戦いを挑むのは無謀です。そんな犬死にのようなことだけは避けたいところです。
であるならば「戦いは必勝にあらざれば以て戦いを言うべからず」です。勝算を見つけてから戦いを挑めば勝ちはぐっと近づく。
勿論、社員の皆が「誰かがやってくれるだろう」とか「やらされ仕事」の域を脱し、できるだけ主体性を持ち能動的に取り組むこと。そして、社内でも競争心と団結力を醸成することなどをマネジメントのベースに置くことが不可欠です。