大連労働公園から臨む(2017年5月)

途方もなく、そして圧倒的な歴史をもって現代を生きる中国。いく度となく繰り返される関係改善と悪化。できる限両国関係の良し悪しに影響されない、安定した中国ビジネス展開はどうすれば実現できるのであろうか…

 

一衣帯水

 成田や関空から飛行機でわずか2~3時間、中国の大連や上海など沿海部に到着します。地理的にはとても近い位置にあります。

 中国の歴史書である南史にある「一衣帯水」という言葉。「帯」のように狭い川のこと。つまり、海や川で隔てられてはいるが両者が近いことを意味し、それはよく日中の関係に例えられます。

 地理的な近さだけではなく、悠久の歴史をもつ中国とは遣隋使(西暦600年)のころから千年以上の関わりがある隣国同士でもあります。

 しかし、両国の違いたるや非常に大きなものがあるのも現実です。実は「帯のような狭い川」と言われているのは、チベット高原を水源とする長さ6300キロ、川幅は20キロにも及ぶ中国最大の大きな川のことなのです。

 

弯弯曲曲

 上海郊外から長江の対岸である南通市の間にはフェリーが走っていますが、向う岸はかすんで見えません。船上から夕日を眺めると、そこは川ではなくまるで「海」。一衣帯水と言っても、実際には、向こう側とこちら側では大きな隔たりがあり、価値観などが違っていてもむしろ当たり前。

 近年においては新中国が建国された1949年以降も日本・中国の国交は断絶したままでしたが、1968年、創価学会池田会長(当時)が日中国交正常化提言を発表。その4年後、日中共同宣言が調印され国交が回復し、さらに1978年には日中平和友好条約が調印されました。

 さて、国交を回復したとは言っても一直線に推移したわけではなく、むしろ「弯弯曲曲」、曲がりくねり、日中関係は良くなったり逆戻りしたりの繰り返しでした。

 しかし、日中平和条約締結40周年となる2018年に、何と、両国首脳の相互訪問が再開され、「日中の新たな時代に向け、競争から協調へ」との合意がなされたのです。これは劇的な変化といえるものです。まるで蜜月のような日中の歩み寄りに、驚き喜ぶとともに一抹の不安がよぎります。次に来るのは関係悪化ではないかと気がかりです。

 ことほど左様に、「一衣帯水」だからこそ、お隣さんとの付き合いは容易ではないということです。

 

一帆風順

 日中平和友好条約が締結された20年後くらいには、「改革開放」路線の背景もあり、相次ぎ日系企業が中国に進出しました。安価で豊富な労働力を活用して生産工場が次々と建設され、また、膨大なマーケットを開拓しようとばかりに販売拠点を設けたり、日系企業は沸いていた時期でもあります。

 中国国内でも、ものすごい高度成長期が始まり現地に進出した日系企業ではありますが、すべてが「一帆風順」の発展を遂げているわけではありません。振り子のように繰り返される政治主導のぎくしゃくに翻弄され、少なくない影響を受けながらの現地企業の経営であったのです。

 

安きに危を忘れず

 きしむ日本と中国の関係に加えて、何もかもが異なる環境の中で、現地法人の経営を任された現地の総経理(社長)は、事業成功のため相当のタフな仕事になることは避けられません。

 易経にある「安きに危を忘れず」とのことわざ。例え、両国の関係が良くてもいずれぎくしゃくし悪化するであろうというのが常。その政治主導による関係の悪化に際して、民間人は如何になすべきか。常に次の「危難」が来た時の備えを講じておかねばなりません。政治が冷めても民間レベルの交流やビジネス面で揺るぎがあってはならない。そのためにどうすればよいのか、そこに腐心すべきであると言えます。

 

温柔敦厚

 日中双方の「違い」という高い壁を乗り越え、現地に根を張り業績を大きく伸ばし、事業として大成功に導く基本が「自他共に」という考え方です。自分だけが成功するのではなく、相手方だけでもなく、つまり、双方が共に勝利を得る、「」、ウィンウィンの関係を築くことです。価値観や習慣の違いを認め、受け入れ、融合させることに他なりません。

 外国人である日本人が中国で成功するためには、「温柔敦厚」という柔和で誠実であるこベースとなった「人間力」が不可欠です。

 そのために、常に自分を磨き高めていく不断の努力が求められます。そうすれば必ず現地の社員達から尊敬されるようになり、成功への展望が開けます。

 その結果、国同士の関係の良し悪しにはできるだけ影響されない、安定したビジネス展開が実現できると確信します。

 途方もなく、そして圧倒的な歴史をもって現代を生きる中国。今後も改善と悪化を繰り返すであろう両国関係の下でも成功の道は見出せる。

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

一衣带水 / 一衣帯水

  • 中国語:一衣带水  [ yī yī dài shuǐ ]
  • 日本語読み:「いち、いたい、すい」
  • 出典:南史·陈纪下
  • 意味:細い帯のように、長く狭い川や海峡のこと。二つのものがきわめて近いことの例え。
  • 語源:陳の国の王は酒色におぼれることがひどく、民は生活に苦しんでいた。それを見た隋の文帝が「私は人民の父母である。帯の様な一本の川(長江)の隔たりがあるというだけで、どうして彼らを救わずにいようか」と言って陳の国を討伐した。(一衣帯水という言葉には川の向こう側の相手を滅ぼすというところが語源になっているのだろうか?)

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一帆风顺 / 一帆風順

  • 中国語:一帆风顺   [ yī fān fēng shun ]
  • 出典:清·李渔(怜香伴·僦居)
  • 意味:すべてのことが何の障害もなくうまく運んでいること。順風満帆。

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温柔敦厚 / 温柔敦厚

  • 中国語:温柔敦厚   [ wēn róu dūn hòu ]
  • 出典:礼記(经解)
  • 意味:柔和で誠実であること。温厚。

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安不忘危 / 安きに危を忘れず

  • 中国語:安不忘危   [ ān bù wàng wēi ]
  • 出典:易経(系辞下)
  • 意味:安全な時に危難を忘れない、との意。絶えず注意深く警戒心を高くすること。

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弯弯曲曲 / 弯弯曲曲

  • 中国語:弯弯曲曲   [ wān wān qū qū ]
  • 出典:紅楼夢
  • 意味:曲がりくねって真っ直ぐではないこと。

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プロフィール

作者:曽賀善雄

1998年6月から2000年3月まで中国・上海で、その後2000年4月から2012年12月末まで
中国・大連でそれぞれの現地法人の総経理(社長)として勤務。

 

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