【呉下の阿蒙に非ず】 碌碌とした普通の社員でも成功のチャンスあり

大連・労働公園(2017年11月)

 

能力的に平凡な現有社員の中から、経営幹部に育つであろう人材を見つけ出し、心血を注いで育成する。そして彼らは自身の努力によって成功をつかむ。その間、彼らと共にマーケットの中で奮闘…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

藹然(あいぜん)可親

  • 中国語: 蔼然可亲   [ ǎi rán kě qīn ]
  • 出典:贺邑令贺洪滨奖异序
  • 意味:温和な態度で人に親しみ安さを感じさせること。「藹然」は気持ちが和らいで穏やかなさま。「可親」は親しみやすいとの意。

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過ちを改め自ら新しくす

  • 中国語: 改过自新   [ gǎi guò zì xīn ]
  • 出典:史記(孝文本纪)
  • 意味:過ちを悔い改め、心を入れ替えて生まれ変わること。

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堅忍質直(けんにんしっちょく)

  • 中国語: 坚忍质直   [ jiān rěn zhì zhí ]
  • 出典:史記(張丞相伝)
  • 意味:「堅忍」は我慢強いこと。「質直」は飾り気がなくまじめなこと。何事にも我慢強く耐え忍び、飾り気がなくまっすぐな気性をしている、との意。

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呉下の阿蒙

  • 中国語: 吴下阿蒙   [ wú xià ā méng ]
  • 出典:三国志(吴书·吕蒙传)
  • 意味:いつまで経っても進歩しない人のこと。
  • 故事:三国志、呉の孫権の部下の呂蒙は戦には強く将軍にまでなったが、全く無学、無教養であった。孫権から将軍にふさわしい勉強をせよと進められ,呂蒙は一念発起し文武両道の立派な将軍に成長した。それをもって「呉にいた時の阿蒙」ではなくなったと言われたという故事。「非復呉下阿蒙(呉下の阿蒙に非ず)」といえば誉め言葉になる。「阿」は親近感を表す。例えば「阿蒙」とは「蒙くん」「蒙ちゃん」といったところか。

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徳は才の主、才は徳の奴なり

  • 中国語: 德者才之主、才者德之奴   [ dé zhě cái zhī zhǔ, cái zhě dé zhī nú ]
  • 出典:菜根譚
  • 意味:人徳は才能の主人で、才能は人徳の使用人である。才能(能力)と徳(人格)は車の両輪のようなもので、大事なのはむしろ「徳」である。

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碌碌庸才(ろくろくようさい)

  • 中国語: 碌碌庸才   [ lù lù yōng cái ]
  • 出典:东周列国志
  • 意味:凡庸な人のこと。「碌碌」、「庸才」はいずれも平凡との意。

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記事:【呉下の阿蒙に非ず】 碌碌とした普通の社員でも成功のチャンスあり

右に出る者がない正直さ

 2004年、本拠地の大連から400キロも離れた瀋陽に支店を開設することに。勢いで決めたが、当時は特急列車で4時間もかかった。さて、管理者をどうするか。

 毎日、睨みを利かせていても、中国で会社を運営するのは並大抵ではありません。

 現地でリクルートするのは博打を打つようなもので、成功するとはとても思えない。やはり、ここは、自分の目で見た適任者を大連から派遣することがベストの選択。

 そこで注目したのが、一社員として入社し、目立たないがコツコツと努力を続けた10年選手のLさん。誰に聞いても「堅忍質直」の人だという評価。営業力は大きくは期待できないが、表裏のない人柄は安心感を与えてくれる。それに、比較的年長者であり、縦社会の中国では部下の管理も何とかなりそう。

 彼の仕事ぶりは期待通りで、新設支店の十分な基礎を築く役目を終え大連に凱旋。その後、彼は副総経理(副社長)の地位を獲得しました。

 

鋭い切れ味

 会社内に多くいる「普通のレベル」の社員の中に、極めて高いレベルの社員が入ると、時として集団の中で浮いてしまうことがあります。そんな中で揺れていたZさん。折角の持てる高い能力が組織内で生かされない。

 菜根譚には「才は徳の奴なり」とある。大事なのは才能よりもむしろ「徳」であるとの思いで話し込みをした。会社にとっても不可欠な高級人材であり、何としてもその素晴らしい能力を発揮してもらいたい、と。結果、彼女は自らの軌道を修正し、見事に蘇生しました。

 それからは、周囲の社員の支持を得て、その高い能力を組織内で存分に発揮することになりました。

 その後、日常の運営や方針などで意見が相違する場面もありましたが、納得できるまで議論。自分の上司に対して、時として異を唱える彼女の存在は、会社の行く手を決めるときなどにたいへん重要な作用を果たす存在となりました。

 元々の鋭い切れ味に徳が加われば、文句なし。社内では初の女性の副総経理となったのです。

 

誰にも負けない親しみやすさ

 中国人による社内マネジメントは、程度の差こそあれ、強権的で上から押さえつけようとすることが普通。

 そんな中で、会社設立時からの生え抜きのWさんは少し違って、彼はどちらかといえば「情」や「ハート」を前面に出して仕事をするタイプ。

 藹然可親」はそんな彼にはピタリの言葉。営業を専らとする彼に同行して顧客を訪問すると、そのことがよくわかります。

 豊かな経験とその親しみやすさによってトップセールスの座を勝ち取った彼は、会社発展に大きく貢献したことを評価され、副総経理に任じられたのです。

 

見事な更生力

 仕事上でのポカを繰り返すGさん。

 実は、彼も会社設立時に入社した生え抜き。新人の教育などにも携わるほどの信頼性を得ていましたが、時々やらかすポカ癖のために中堅社員の域を脱することができずにいました。

 そして、またもやの大失策。三度目のその時は致命的なミスであったこともあり、これ以上はもう無理との判断で、やむなく解雇することを決めた。

 ところが、彼の直属上司からは「責任を持つから最後のチャンスを」と直談判に。やむなく「改過自新」、心を入れ替えて生まれ変わることを条件に、一旦決定した「解雇」を撤回することにしました。

 一念発起した彼は、一からやり直すことに挑戦。そして見事に立ち直りました。元々持っていた能力が認められるところとなり、改めて社員を指導する立場にまでなったのです。

 彼は自分の努力によって「呉下の阿蒙」ではなくなったといえます。

 むしろ、例え大きな失敗をしても、それを上回る努力をすれば、失ったものを回復することができる、という他の社員に対し模範となる好例を彼は作ってくれました。

 一度は解雇になるところであったのですが、信頼を回復するどころかさらなる信頼を得、その後、遂に副総経理に任じられることになりました。

 

平凡人であるが

 彼らはいずれも高学歴でもなく、コネがあったわけでもありません。むしろ「碌碌庸才」、ごくごく平凡な社員達。共通するのは会社設立時に入社し、コツコツ努力を続けた叩き上げであること。しかしながら、それぞれが他の誰にも負けないモノを持ち、周囲からも信頼されていました。

 外部から有能な人を招聘するよりは、現有パワーの中から相応の人材を見つけ出し、能力を開花させる方が、組織内にどれだけ好影響が出ることか。

 平凡な人であっても、何かひとつ持っていれば、そこを磨き努力することで、立派な人材になる。成功をつかむことはできるのです。

 そして彼等の支えがあったことで会社業容の拡大を成し遂げることができました。

 心血を注いで育成した彼等とは、共にマーケット開拓に戦った戦友。同時に、気心も通じ合い、上司、部下の関係を超越した「朋友」でもあるのです。

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