【人に臉有り、樹に皮有り】 面子へのこだわりは想像以上 軽んじると…
自分は面子など気にしない、と思っていても、中国では周りの人達はそうは思っていません。中国人の面子を大切にする気持ちは、想像以上なのです。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
困獣(こんじゅう)猶(なお)鬥(たたか)う
- 中国語:困兽犹斗 [ kùn shòu yóu dòu ]
- 出典:佐傳(宣公十二年)
- 意味:獣が追い詰められても抵抗すること。悪あがきする。
待理不理
- 中国語:待理不理 [ dài lǐ bù lǐ ]
- 出典:紅楼夢
- 意味:接する態度が不愛想であること。冷淡であること。相手にするようなしないようなふりをする、まともに取り合わない、いい加減にあしらう。
吊死鬼も粉を擦る
- 中国語:吊死鬼擦粉,死要面子 [ diào sǐ guǐ cā fěn, sǐ yào miàn zi ]
- 意味:首を吊って死んだ亡霊が白粉を擦る。(その心は)死んでからも面子が要るのだ。
- 前句でなぞをかけ、後句でなぞ解きをする、歇後語(しゃれ言葉)。
人に臉有り、樹に皮有り
- 中国語:人有脸,树有皮 [ rén yǒu liǎn, shù yǒu pí ]
- 出典:金瓶梅
- 意味:樹に樹皮があるのが当然のように、人には体面がある。誰もが持つ恥の心、つまり面子を無視はできないことの例え。「脸」は顔、体面、メンツのこと。
記事:【人に臉有り、樹に皮有り】 面子へのこだわりは想像以上 軽んじると…
つぶされた面子
中国・大連のとある日系企業の開業式に出席するために、社有車の後部座席に乗り込みゲート前に到着した。守衛さんから、駐車場の隅っこに駐車するよう指示された。スペースはたくさん空いているのに、何故遠い隅っこ? しかも、守衛さんの態度は「待理不理」。当社の運転手は、不満らしくぶつぶつ文句を言いながら渋々指定された場所に駐車。
実は、他の参加者は皆が黒塗りの大きな車である中で、我が社の車は白い小型車。白い小型車なんかに総経理が乗っているわけがない、とその守衛さんは思ったようです。
その白い小型車は、前任の総経理が、燃費がよく維持費も安いという理由で購入し、社有車として使っていた車であったのです。
それ自体を否定するものではないが、とにかく、おさまらないのは会社の運転手。面子をつぶされたとカンカン。(半分はその守衛さんの態度に対する怒りではあろうが、同時に、面子をつぶされるような車を買い運転させた会社に対しても、向けられているように感じる)
贅沢ではない運転手付き車
運転手があまりにもぼやくもので、周りを見てみたら、なるほど、どの会社も総経理(社長)の乗る車は黒塗りの、しかもそれなりのグレードの車ばかり。
「人に臉有り、樹に皮有り」と言われるが、白い小型車では面子が無いとぼやくことも頷けます。
ただ、さほども大きな規模ではない現地企業なのだから、総経理が運転手付きの車両を持つのは贅沢ではないか、という向きもあります。
実をいうと、経済発展に伴いマイカーが激増し、交通インフラの整備が追い付かず、また、市街地では自動車や自転車、歩行者が入り乱れ、交通マナーはあったものではありませんでした。
そんなことで、面倒な交通事故を避ける意味でも、日本人社員は運転禁止という社内ルールでしたので、運転手付きの車を使っていたのです。
化粧する幽霊
それにしても、小型車は丈夫で維持費も安いという観点とは、全く違う現地の価値観に驚かされます。
どんな車でもいいじゃないか、と思うのは一面しか見ていないと言わざるを得ません。会社を代表する人が使用するのに適当な車でない場合は、会社自体が見下げられかねないというのが現地の事情。
社員達も、総経理が貧相な車より立派な車を使っている方が、いい会社に勤めているという気持ちが強くなり、胸を張ることができるというもの。
「吊死鬼も粉を擦る」と巷間言われるように、中国人の面子へのこだわりは相当なものです。中国の長い歴史の中で培ってきた、日本人とは少し異なる価値観は、尊重しなければなりません。
面子を守る重要さ
突然やってきた外国人総経理が、現地社員達の面子を軽視したり、無視したのでは会社運営が良い方向に向かうはずはありません。ましてや、傲慢不遜な態度で部下社員に接するようなことでは、支持も得られません。
例えは、ミスを犯した社員を、多くの社員の面前で叱責すると、その社員の面子をつぶしてしまうことになります。そのような対応をしてしまうと、彼は総経理に対して牙をむき、「困獣猶鬥う」ことになるかもしれません。
社員を手負いの獣にしてしまうと、最悪の場合は周囲のすべてを敵に回すことになり、総経理が孤立してしまいます。
自分は面子など必要ないと思っても、相手はそうは思っていません。中国で成功するための重大事で且つ不可欠であるのが「相手のメンツを大事にする」ということです。