【人に臉有り、樹に皮有り】 面子へのこだわりは想像以上 軽んじると…

中山広場の大連賓館 堂堂の風貌(2015年9月)

 

自分は面子など気にしない、と思っていても、中国では周りの人達はそうは思っていません。中国人の面子を大切にする気持ちは、想像以上なのです。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

困獣(こんじゅう)猶(なお)鬥(たたか)う

  • 中国語:困兽犹斗   [ kùn shòu yóu dòu ]
  • 出典:佐傳(宣公十二年)
  • 意味:獣が追い詰められても抵抗すること。悪あがきする。

» 記事へ

 

待理不理

  • 中国語:待理不理   [ dài lǐ bù lǐ ]
  • 出典:紅楼夢
  • 意味:接する態度が不愛想であること。冷淡であること。相手にするようなしないようなふりをする、まともに取り合わない、いい加減にあしらう。

» 記事へ

 

吊死鬼も粉を擦る

  • 中国語:吊死鬼擦粉,死要面子   [ diào sǐ guǐ cā fěn, sǐ yào miàn zi ]
  • 意味:首を吊って死んだ亡霊が白粉を擦る。(その心は)死んでからも面子が要るのだ。
  • 前句でなぞをかけ、後句でなぞ解きをする、歇後語(しゃれ言葉)。

» 記事へ

 

人に臉有り、樹に皮有り

  • 中国語:人有脸,树有皮   [ rén yǒu liǎn, shù yǒu pí ]
  • 出典:金瓶梅
  • 意味:樹に樹皮があるのが当然のように、人には体面がある。誰もが持つ恥の心、つまり面子を無視はできないことの例え。「脸」は顔、体面、メンツのこと。

» 記事へ

» 成功の中国ことわざ・格言リスト

 

記事:【人に臉有り、樹に皮有り】 面子へのこだわりは想像以上 軽んじると…

つぶされた面子

 中国・大連のとある日系企業の開業式に出席するために、社有車の後部座席に乗り込みゲート前に到着した。守衛さんから、駐車場の隅っこに駐車するよう指示された。スペースはたくさん空いているのに、何故遠い隅っこ? しかも、守衛さんの態度は「待理不理」。当社の運転手は、不満らしくぶつぶつ文句を言いながら渋々指定された場所に駐車。

 実は、他の参加者は皆が黒塗りの大きな車である中で、我が社の車は白い小型車。白い小型車なんかに総経理が乗っているわけがない、とその守衛さんは思ったようです。

 その白い小型車は、前任の総経理が、燃費がよく維持費も安いという理由で購入し、社有車として使っていた車であったのです。

 それ自体を否定するものではないが、とにかく、おさまらないのは会社の運転手。面子をつぶされたとカンカン。(半分はその守衛さんの態度に対する怒りではあろうが、同時に、面子をつぶされるような車を買い運転させた会社に対しても、向けられているように感じる)

 

贅沢ではない運転手付き車

 運転手があまりにもぼやくもので、周りを見てみたら、なるほど、どの会社も総経理(社長)の乗る車は黒塗りの、しかもそれなりのグレードの車ばかり。

 人に臉有り、樹に皮有り」と言われるが、白い小型車では面子が無いとぼやくことも頷けます。

 ただ、さほども大きな規模ではない現地企業なのだから、総経理が運転手付きの車両を持つのは贅沢ではないか、という向きもあります。

 実をいうと、経済発展に伴いマイカーが激増し、交通インフラの整備が追い付かず、また、市街地では自動車や自転車、歩行者が入り乱れ、交通マナーはあったものではありませんでした。

 そんなことで、面倒な交通事故を避ける意味でも、日本人社員は運転禁止という社内ルールでしたので、運転手付きの車を使っていたのです。

 

化粧する幽霊

 それにしても、小型車は丈夫で維持費も安いという観点とは、全く違う現地の価値観に驚かされます。

 どんな車でもいいじゃないか、と思うのは一面しか見ていないと言わざるを得ません。会社を代表する人が使用するのに適当な車でない場合は、会社自体が見下げられかねないというのが現地の事情。

 社員達も、総経理が貧相な車より立派な車を使っている方が、いい会社に勤めているという気持ちが強くなり、胸を張ることができるというもの。

 吊死鬼も粉を擦る」と巷間言われるように、中国人の面子へのこだわりは相当なものです。中国の長い歴史の中で培ってきた、日本人とは少し異なる価値観は、尊重しなければなりません。

 

面子を守る重要さ

 突然やってきた外国人総経理が、現地社員達の面子を軽視したり、無視したのでは会社運営が良い方向に向かうはずはありません。ましてや、傲慢不遜な態度で部下社員に接するようなことでは、支持も得られません。

 例えは、ミスを犯した社員を、多くの社員の面前で叱責すると、その社員の面子をつぶしてしまうことになります。そのような対応をしてしまうと、彼は総経理に対して牙をむき、「困獣猶鬥う」ことになるかもしれません。

 社員を手負いの獣にしてしまうと、最悪の場合は周囲のすべてを敵に回すことになり、総経理が孤立してしまいます。

 自分は面子など必要ないと思っても、相手はそうは思っていません。中国で成功するための重大事で且つ不可欠であるのが「相手のメンツを大事にする」ということです。

»現場目線の成功ヒント

お問い合わせ等はメールをご利用ください。info@jita-tomo.net