継続は力 【一日一銭、千日千銭】の努力が成功に繋がる
今年はいくら上がるだろうか、と中国のサラリーマンにとって春節前の関心事のひとつは自分の給料の上がり幅。それに対して経営幹部はどう臨む…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
一日一銭、千日千銭、縄木を鋸きて断ち、水石に滴りて穿つ
- 中国語:一日一钱,千日千钱 绳锯木断,水滴石穿 [ yī rì yī qián, qiān rì qiān qián shéng jù mù duàn, shuǐ dī shí chuān ]
- 出典:南宋・羅大経(鹤林玉露)
- 意味:一日に一銭というわずかなお金でも千日で一千銭という大金になる。縄で作った鋸でも木を切ることができる。水滴でも石に穴をあけることができる。わずかずつでも努力を続ければどんなことでもできることを例えた言葉。
鍥(きざ)み而して捨(お)かず(鍥而不舎)
- 中国語:锲而不舍 [ qiè'ér bù shě ]
- 出典:荀子(劝学)
- 原文:锲而舍之,朽木不折。锲而不舍,金石可镂(鍥〈きざ〉んで之を舎〈お〉けば、朽木も折れず。鍥んで之を舎かざれば、金石も鍥む可し)
- 意味:「锲」は彫刻のこと。「舍」は放り出すこと。刻みかけて途中でやめてしまえば、腐った木も折ることはできないが、止めずに刻み続けたならば、金石さえも彫刻することができる、との意。転じて物事を根気よく,粘り強くすることで、成功の可能性が大きくなることを例えた言葉。
挙棋不定
- 中国語:举棋不定 [ jǔ qí bú dìng ]
- 出典:左傳(襄公二十五年)
- 意味:碁石を手に持ったまま、打つのをためらう、との意。ためらって態度を決めかねること。
携手並肩
- 中国語:携手并肩 [ xié shǒu bìng jiān ]
- 出典:凌濛初(二刻拍案惊奇)
- 意味:手を携え肩を並べる。行動を共にすること。
樹大招風
- 中国語:树大招风 [ shù dà zhāo fēng ]
- 出典:西游记
- 意味:樹が大きくなれば風を招く。能力が目立ったり、仕事が順調に推移すると、妬まれたりして風あたりも強くなる。出る杭は打たれる。
大鍋飯
- 中国語:大锅饭 [ dà guō fàn ]
- 意味:すべての人が同じ待遇を受けることを例えた言葉。
- 背景:1950年代末、人民公社には食堂が設けられ、そこでは誰もが平等に食事を供されました。(働いても働かなくても飯にありつけるということになった。)
記事:継続は力 【一日一銭、千日千銭】の努力が成功に繋がる
昔の名残色濃く
上班族(サラリーマン)にとっての楽しみのひとつが「給与改定」であることは中国にあっても同じ。
大連に赴任して初めてのその季節が到来したころ、幹部社員から「今年の改定額はいくらにしますか」との問いかけがあった。聞けば、その6年前に会社が設立されて以来、ずっと全社員一律に改定してきたとのこと。
1992年以降、中国では改革開放政策が推し進められ、市場競争経済による社会に変化しました。とはいっても、当時はまだまだ見様見真似の競争社会。計画経済時代の名残りが色濃く残っていました。
少しずつ社会は変わりつつも、社員達の間にあったのは、大きな鍋でみんな平等にご飯を食べる「大鍋飯」の意識であったのです。
出る杭
言わば、「携手並肩」状態。皆が手を繋ぎ横一列で一歩一歩前進する。これが公平と思われていたのであった。
しかし、市場経済が伸展するに伴い、「横一列」の中でも、他人よりも二歩三歩前に出たいと思っている人もいれば、反対に、一列ではしんどい人もいるはず。
他方、横一線の社会では、他人よりもたとえ頭ひとつでも前に出るのは、それなりの勇気が必要であったのです。人間関係が重視される社会では、「樹大招風」、他人から妬まれることも心配しなければなりません。
横一列の打破
しかしながら、そんなぬるま湯状態では会社に活力が生まれるとも思えません。ますます伸展するでろう競争経済の中で、いずれついていけなくなってしまう。そうなっては、事業展開どころか、社員の生活にも大きな影響が避けられません。
従って、会社として市場の中で勝ち抜くためには、どうしても、社内で社員間の競争原理を芽生えさせなければなりません。
そこで、繋いでいる手を一旦解放し、お互いの幸福を産むことになる競争をしよう、と社員達に話しましたが、社員の多くは「挙棋不定」で腹を決めかねている様子。
何せ、当時は社内で同僚社員同士がと競争するなんてことは経験もなく、中には競争すると同僚との関係がまずくなるという意見も社員から出る始末。
わずかな努力でも
それでも、説得を繰り返していると、競争の考え方を理解し、他の社員以上に努力をしようとする社員が少しずつ出てきました。たとえ、その月の目標が達成できなくても、懸命の努力を続けるならば、いつかは達成できるようになる。
「一日一銭、千日千銭」、わずかであっても毎日のコツコツとした努力を続ければ、成功を手にすることができるはず。そう社員を励ますと共に彼らの持つ可能性を信じることに。
彼らが、総経理(社長)から信じられていることを感じると、一層の努力をすることになります。そうした努力を繰り返し、ようやく社員間に競争意識が芽生えてきたのです。
継続は力
「一律の評価」の別の側面に、経営幹部側の問題も看過できません。
社員に対して評価を行うことは、社員間に「差」をつけることであり、それ自体が幹部社員にとって煩わしいことであるとの認識があったようです。評価をすることを避けていたのです。
業容拡大を実現するためには、一般社員にも幹部社員にも漂う「ぬるま湯」感覚を一掃し、緊張感のあるピリッとした組織体を目指すべきであります。
同時に、総経理(社長)等の経営幹部は、如何にして部下社員達に、「懸命の努力」を継続させることができるかが、管理者としての能力のひとつであります。
それらの努力は、「鍥而不舎」と、粘り強く根気強く行うことが重要です。
つまり、部下が自身の目標を達成できるか否かはひとえに管理者にかかっています。部下に可能性を自覚させ、管理者はそれを信じ、共に努力を重ねていけば必ず実現できる。その時には総経理も社員も共に成功を勝ち取ることができるということです。