【破顔一笑】の裏に何かが隠れていると思え でも鷹揚さも必要
中国でビジネスの現場で、笑顔で握手をする場面は多々あります。しかし、その笑顔は額面通りに受け取ってよいものでしょうか。そんな疑問を感じることが…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
合情合理
- 中国語:合情合理 [ hé qíng hé lǐ ]
- 出典:山谷风烟
- 意味:情にも理にも叶っていること。物事の筋道に一致すること。
笑裏(しょうり)に刀(かたな)を蔵(かく)す
- 中国語:笑里藏刀 [ xiào lǐ cáng dāo ]
- 出典:兵法三十六計(第十計)
- 意味:敵を攻撃する前段階として、まずは友好的に接近したり講和停戦して慢心させる作戦を指す。「口蜜腹剣」と同意。にこやかな態度は相手の警戒心を和らげるための方便。
破顔一笑
- 中国語:破颜一笑 [ pò yán yī xiào ]
- 出典:鲁迅(奇怪)
- 意味:顔をほころばせてにっこりと笑うこと。
反復無情
- 中国語:反复无常 [ fǎn fù wú cháng ]
- 出典:行路难
- 意味:しょっちゅう変化して安定しない状態のこと。よく変わること。
惜指失掌
- 中国語:惜指失掌 [ xī zhǐ shī zhǎng ]
- 出典:南史(阮佃夫传)
- 意味:指を惜しんで掌を失う、との意。小事にとらわれて大局を見失うことの例え。
記事:【破顔一笑】の裏に何かが隠れていると思え でも鷹揚さも必要
与り知らぬこと?
継続取引をしていた中国・地場の得意先の責任者が交代したので、挨拶のために表敬訪問をしたときのこと。
新しい責任者の肩がおっしゃるには、「あなたの会社と取引の契約を結んだのは前任者であって、私には関係の無いことだ。与り知るところではない」と。
ちょっと待ってよ。双方の会社として合意のもとに書面による契約を交わし、履行の最中にあって、「合情合理」とは程遠い対局にあるその発言に呆れるばかり。
新任者は別の会社と契約したかったのかも知れませんが、二社間の有効な契約を無視したような態度の変化は御免を被りたいものです。
意識の中では、現代の世でも「個人対個人」という旧習から抜けきっていなかったのでしょうか。
笑顔で握手
一民間企業の小さな契約とはレベルが違いすぎますが、例えば国と国の間の約束事もそれはそれで単純ではないようです。
例えば、二国間の首脳会談で大型の商談や投資案件がまとまった、などとの報道に接することがあります。百機単位の航空機購入、半導体や畜産品の輸入など幅広く、またスケールの大きさにも驚かされます。
報道を見る限りでは、両国の首脳が「破顔一笑」で握手をしているのですから、双方の面子は保たれたのでありましょう。
半信半疑の笑顔
国レベルの交渉事であれ、民間企業同士の折衝ごとあれ、笑顔で握手をする場面は多々ありますが、その笑顔は額面通りに受け取ってよいのでしょうか。
「笑裏に刀を蔵す」と「兵法三十六計」にあるではないですか。笑顔の裏側に何かが隠されてはいないか気になるところです。この地で長らく仕事をしていると、そんな気がしてなりません。
ということで、笑顔には用心するに越したことはありません。もし用心を怠ればひとたまりもなく計略にはまってしまいかねないのですから。
日本式と中国式
一般的には中国側と組んで何かをやろうとした際、まずは意向書を交わすことが多くあります。「こう言うことをしたいね」「そだね~」とまあこんな感じでしょうか。意向書には拘束力がないのが原則ですから、割と早くまとまり、両者が笑顔で握手。
その後、合弁事業設立に向けて詳細を協議することになります。
日本側は事業に当たっておよそ考えられる問題点などを、微に入り細を穿つように検討し、そのうえで中国側と合意ができた時点で契約書にしたためようとする。
一方、中国流のやり方はまずは握手する。これがいわゆる意向書。合弁契約も大体の内容でいいではないかと考える。起きるかどうかわからないことをあれこれ考えるのは時間の無駄、と言わんばかりで、問題が発生したらその時に対応をすればよいというのが普通。
ということで、日本式の考え方では「惜指失掌」に陥ってしまうとあからさまに懸念するのです。
結局、日本側が自分のやり方に固執すると、話がまとまらないうちに中国側がしびれを切らしてしまいます。しかし、中国流では日本側が持つ不安感はなかなか拭えません。
予期すべき
ただ、アウエーで事業をやろうとするのですから、中国式でやらざるを得ません。
そうなると、態度が急変したりするような問題の発生は予期しておかねばなりません。まあ、君子でも豹変するのですから、一般人ならなおさらです。「反復無情」と認識し、鷹揚に構えることが必要だと心得るべきでありましょう。
交わした文書が「契約書」であったとしても、そのとおり履行されるかどうかというのは別の問題。中国はそんなに簡単な国ではありません。