【水の下きに就くがごとし】 奇を衒うことなく 坐りの良い序を
現代中国社会に根強くある「長幼の序」。それは、会社組織にあっても同様で、「序」は外さないことに重きを置いた方が業績向上につながる…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
設身処地
- 中国語:设身处地 [ shè shēn chǔ dì ]
- 出典:礼記(中庸)
- 意味:人の身になって考えること。他人の立場に立って考える。
長幼 序有り
- 中国語:长幼有序 [ zhǎng yòu yǒu xù ]
- 出典:荀子·君子篇
- 意味:年長者と年少者の間には前後尊卑に一定の秩序がある。
水の下(ひく)きに就くがごとし
- 中国語:由水之就下 [ yóu shuǐ zhī jiù xià ]
- 原文:民归之,由水之就下,沛然谁能御之
- 出典:孟子(梁惠王上)
- 意味:水は低い方に流れる。物事は成り行きとして自然にそうなる。
無可非議
- 中国語:无可非议 [ wú kě fēi yì ]
- 出典:論語(季氏)
- 意味:別に非難するところが無いこと。
記事:【水の下きに就くがごとし】 奇を衒うことなく坐りの良い序を
縦社会では
年老いた母の手を取ってレストランに入り、家族が揃っての食事会。きっと、母親の誕生日なのでしょうね。そんな風景を時々見かけます。中国社会には「長幼序有り」と、今も根強く生きています。
会社などの仕事現場でも、役職上の目上の上司とともに、年長の社員を敬う習慣が厳然としてあります。
一方、年少の社員が年長の部下を持ったりするときは、長幼の序が逆転することになり、どことなく、坐りが悪い組織になってしまいます。
序を外すと
この社会では、「序」はことほど左様に重要で、これを誤ると日本以上に厄介です。例えば、取引先を招待して会食をする際の席順です。円卓にどのように座るのがよいのか。そこそこ場数を踏んでいても、なかなかわかりずらいのが席順。
テーブルにはあらかじめグラスやお皿などがセッティングされており、その中で、ナプキンが他の席よりもひときわ高く折られていることが多くあり、その席が主賓席(上座)となります。他の席とは異なるセッティングですから一目でわかります。
図では①が上座。ここにはゲストの最上位者が座る席といわれます。しかしながら、実際にはホストが座るケースが多いようです。
ホストは、その日の費用を支払うことが当たり前ですので、ゲストもそれに対して敬意(謝意)を表して、本来のゲスト席をホストに譲ったということかもしれません。
①にホストが座る場合は、その左である②にはゲストの中の最上位者。後は招待者側とゲスト側の人が「序」を考えながら交互に座ることになります。
しかし、それらが常に正しい席順であるとは言えないのが難しいところ。ゲストとホストの力関係などもあって、実際の場面では、自分がどこに座ればよいのかがわかりにくいのが現実。
そこで、全員が揃うまでは決して座らず、当日の顔ぶれが揃ったところで、空気を読みながら何となく席順が決まっていく。そうすることで、「無可非議」、後々の無用のトラブルの種となることを回避する。
何しろ、大切な顧客を招いての会食ですから、出席した皆さんが、納得して相応の座席に座るのは結構面倒なことです。
お酒飲み
余談ですが。
全員が席に着いたところで、お酒は何がよいかゲストに尋ねます。大連など東北地方であれば、「白酒にしましょう!」と進めるのが一般的。それに対してゲストがワインが良い、と言えばそれに従います。そして、白酒やワインが無くなったら、次はビールを飲む、という順番です。ビールを注文するときには、半分は冷えたのを、半分は常温を、という心配りも。
酒席でも「設身処地」というところでしょうか。
中国では、料理もお酒もお互いのコミュニーケーションを深めるツールです。一口飲みたいときにも、誰か相手を見つけて目を見ながら乾杯をするのが習わし。
また、他の人からも乾杯を求められますから、それに応じることが大事です。宴席で一人飲みは禁止。
こうしてお互いに打ち解け合っておくと、後々のビジネスで比較的スムーズに事が運びます。
自然な組織
会社の組織を作り、或いは役職社員の人事を行う際には、「序」を外さないで済む方法を、総経理(社長)は熟考しなければなりません。
「水の下きに就くがごとし」と言われるように、自然な組織ができれば何よりなのです。能力や経験など実力はどうか、年齢はどうか、等々の面で「序」に従った組織作りが、中国では特に求められます。
そうした細やかな配慮に裏打ちされた組織と、そうではない組織とでは、結果として会社業績に差が出てきます。
つまり、「序」が軽視された坐りの悪い組織では、社員が気持ちよく仕事をする環境が整わず、団結力の発揮も期待できません。
その結果として、業績を拡大することは非常に困難となってしまいます。総経理は、まずは坐りの良い組織を構築することが賢明でありましょう。