【巧詐は拙誠に如かず】 偽タクシーにびっくり くそ真面目も困るが

大連空港ターミナルビル(2015年9月)

 

世の中の商品やサービスは、相当の手間や費用をかけて作り出されるはずです。しかし、小手先のつじつま合わせをして、その場しのぎをしているようでは如何なものか。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一模一様

  • 中国語:一模一样   [ yī mú yī yàng ]
  • 出典:儒林外史
  • 意味:完全に同じであること。そっくりであること。瓜二つ。

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一本正経

  • 中国語:一本正经   [ yī běn zhèng jīng ]
  • 出典:抱朴子(百家)
  • 意味:道徳規範の経典に合致する、というのが元々の意味。重々しく厳粛な態度のこと。生真面目、くそ真面目なこと。

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間 髪を容れず

  • 中国語:间不容发   [ jiān bù róng fà ]
  • 出典:·枚乘(上书谏吴王)
  • 意味:一筋の毛髪を入れる隙間さえも無いこと。転じて、間を置くことなく直ちに、ほとんど同時に、との意。

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巧詐(こうさ)は拙誠(せつせい)に如かず

  • 中国語:巧诈不如拙诚   [ qiǎo zhà bù rú zhuō chéng ]
  • 出典:韩非子(説林)
  • 意味:巧みに表面を取り繕うようなやり方(巧詐)は、拙くても誠実なやり方(拙誠)には及ばない。

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記事:【巧詐は拙誠に如かず】 偽タクシーにびっくり くそ真面目も困るが

びっくりのタクシー

 ある時、出張先から大連に戻り、空港からタクシーで宿舎に向かいました。

空港の到着ロビーを出ると、白タク運転手の呼び込みが少なくありませんが、それらを振り切って正規のタクシー乗り場で順番待ちをしていたタクシーに乗り込みました。

 出張疲れからか、ホームグラウンドの大連に戻った安堵感からか、大きな溜め息をついて、車外の見慣れた風景をぼんやり眺めていました。その時、料金メーターの上がり方が異様に速いことに、ふと気がつきました。

 正規のタクシー乗り場で乗り、外観や料金メーターなど、不審なものは何もなく、何の疑いもせず乗り込んだのですが、これはおかしい…

 既に大連の生活にも慣れ、中国語もそれなりに話すことができるようになっていたこともあって、運転手に文句を言ったのですが、運転手は取り合おうとはしません。

 なんとそれは外装や運賃メーターなど「模一様」。実は本物そっくりで、ちょっと見ただけではわからない偽タクシーだったのです。

 正規の料金より二割程度高いだけだったのですが、姑息なその性根に我慢できず、宿舎に到着するまで怒りまくって、結局、相場相当の料金を払って下車しました。

 

活気を呈する小路は

 大都会・上海市の中心部にある華亭路という小路。賑やかな淮海中路と長楽路の間にあって長さは200メートル程度、道幅は約4メートルの静かな住宅街の道路です。

 実は、この華亭路、2000年以前は中国第一の服装街と言われていたそうです。狭い道路の両側にテントやバラックの露店がびっしり並んでいて、活気が溢れていました。

 そこで売られているのは、ブランドもののポロシャツや時計など。もちろんそれらは偽物。上海に赴任した直後、その物珍しさもあって、時々ひやかしに行ったものです。

 ある時、面白がって買い物をしてお金を払いお釣りをもらいました。ついでにもうひとつ買おうと思い、たった今、もらったお釣りの中から、そのお店のおじさんにお金を渡すと、「 髪を容れず」、「これ、偽札!」と突っ返されました。

 ついさっき、そのおじさんから貰ったお札やないかい…

 偽物を売ること自体とんでもないことですが、当時は、よく売れて単価も高く儲かる商品だという程度の認識で、偽物という概念がなかったのかもしれません。

 結構人気のあったその「華亭路」は、その後、すべてのお店が撤去され、都心部の閑静な住宅街の小路となり、当時の面影は跡形なく消え去ってしまいました。

 

生真面目では

 世の中の商品やサービスは、不可欠な手間や費用をかけて作り出されるはずです。しかし、偽札にせよ偽タクシーにせよ、それをしないで小手先のつじつま合わせをして、その場しのぎをしているようなもの。

 そのいい加減さの対極にあるのが「一本正経」という言葉。いわば、くそ真面目に様々なルールや道徳などを、こまごまと遵守すること。日本人は、これに当たり前に慣れ親しんだことですが、中国でも同じように実行することは如何なものか。

 例えば、深夜の交差点で車も来ないのに、赤信号だからということでじっと待つようなもの。この中国社会では、あまり現実的ではありません。

 

妥当解は

 巧詐は拙誠に如かず」とは韓非子にある言葉。表面を巧く取り繕うようなやり方は、とうてい長続きするとは思えない。一方、生真面目であっても度を越さず、巧詐もほどほどに。そんな感覚が最も現実的であるということです。これが正解とは言えないかもしれないが「妥当な解」ではないでしょうか。

 実際には、巧詐と拙誠の線引きは簡単ではありませんが、部下を持つリーダーとしては、拙くても誠実なやり方をベースとしたいものです。そして、自分なりの物差しでその程度を断じ、アジャストしていくのが良かろうと。

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