失敗の陰にちらつく酒女金 【楽しみは極むべからず】 甘い誘いには…
中国現地会社に赴任したサラリーマン総経理(社長)が、偉くなったと大きな勘違い。加えて周囲からの甘い誘いに乗った末は…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
悔やむこと 之晩(おそ)し
- 中国語:悔之晚矣 [ huǐ zhī wǎn yǐ ]
- 出典:大宋宣和遗事
- 意味:後悔が遅きに失するとの意。後悔先に立たず。後の祭り。
自命不凡
- 中国語:自命不凡 [ zì mìng bù fán ]
- 出典:淮阴百一居士(壶天录)
- 意味:自分は大物だと自惚れること。非凡であると自任する。自負する。
楽しみは極むべからず
- 中国語:乐不可极 [ lè bù kě jí ]
- 日本語表記:楽不可極
- 出典:礼记(曲礼上)
- 意味:楽しみものめり込んだら必ず悲しみが生まれる。ほどほどがちょうどいい。
貪らざるを以て宝と為す
- 中国語:以不贪为宝 [ yǐ bù tān wéi bǎo ]
- 出典:佐伝(襄公十五年)
- 意味:むやみに欲しがらないことを宝と思う。財宝よりも無欲を貴ぶこと。
- 故事:宝玉を時の宰相に献上しようと申し出たところ、その宰相は「私は欲張らないことを宝としている。そなたが宝玉を私に与えたならば、二人とも宝を失うことになる。互いに宝を持っていた方がよい」と言って申し出を辞退した。
※ 性騒擾
- 中国語:性骚扰 [ xìng sāo rǎo ]
- 意味:セクハラ。
記事:失敗の陰にちらつく酒女金 【楽しみは極むべからず】 甘い誘いには…
後の祭り
ストーカーまがいの行為が原因で帰国の憂き目にあった管理者、会社の金に手を出した総経理(社長)、出入り業者と癒着し金品を得るなど不明朗な生活をしていた幹部社員等々。それらは、中国現地で耳にした日本人駐在員の話。
どの時代であっても、どこの国、場所であっても、浜の真砂の如くその種の不祥事は尽きることがないようである。
もし男が失敗をしでかすとしたら、それは酒か、女か、金が絡んでいると思って間違いはない、とは先輩の言葉。前出のそれらの不祥事は正にそのとおりであるが、昨今は加えて「性騒擾」なるものが中国社会でも言われるようになってきました。
例えば、中国人の幹部社員が地位を利用して部下の女性社員に性的な要求をするといったことは、日本と大差無いようです。
ただ、業績のことにしか興味を示さない日本人総経理には、社内で「性騒擾」が起きているとはなかなか気がつかないのが実態です。社内の中国人社員の間で噂が広まってからようやく知ることになり、それでは「悔之晚矣」。
総経理が知ったころには、既に多くの社員が知るところであり、それでは社員達の士気は上がろうはずがありません。結局、業績に影響が出ることは免れ得ないでありましょう。
大きな勘違い
最も厄介なことは、トップである総経理(社長)自身がそのような事態に至った時です。それが社内で噂になろうが、忠告やお説教をする人がいません。むしろどんどん深みに入っていく事になります。
もし、酒、女、金などにまつわる日本人不祥事が中国の現地法人で起きるとしたら、その背景には2つの要素があるといえます。
ひとつ目は本人の勘違いに起因する「自命不凡」。
日本では一介の課長や部長である、ごく普通の社員。小さな歯車として汲々としたサラリーマンであったが、中国の現法の総経理(社長)などとして赴任するや、現地社員からは「総経理、総経理」と持ち上げられ、運転手付きの専用車が与えられ、広々とした社宅に住む。そんな日本では考えられない日常の中で、いつしか自分は偉くなったのだと勘違いしてしまう。
さらに日本水準の給料をもらい、現地の物価水準で生活をするのですから、土日はゴルフ、平日はカラオケ、駐在員の奥様方も趣味の教室とかに通っているなんてことも珍しくはありません。結構贅沢な暮らしができるという現実もあります。
日本ではありえないような贅沢な環境の中に、ややもすると勘違いする人が出てくるというものです。しかし、そんな落とし穴に嵌らないように、勘違いをしないで自制が求められます。
卑しさとの闘い
もうひとつは人間の卑しい心根。
下心を持った出入り業者などに食事をごちそうになり、金品を受け取る。そんな餌に一旦食いついたら最後、どんどんエスカレートし抜け出せなくなってしまいます。まさに金、女、酒を目の当たりにする状況が出現します。人間、誰しも卑しい心根を持っていますが、それを上回る自制する倫理観が何としても必要です。
異国の地での仕事には想像以上に大きなストレスとの闘いの日々が続きます。それを乗り越えるためには楽しみも必要です。しかし、のめりこんでは楽しみではなくなってしまうということを理解すべきです。「楽しみは極むべからず」という言葉を胸に叩き込んでおきたいものです。
欲望に負けない
日本と中国は異なる環境ではありますが、俗世間に住む我々は欲望との戦いを常として、勝ったり負けたりを繰り返しています。が、人の上に立つ者として、「貪らざるを以て宝と為す」との格言を実践し、それを誇りにすべきでありましょう。
今日も中国ビジネスの成功を目指しつつも、その裏側では、襲い来る欲望を掻き立てる魔物との闘いが始まります。諸兄のご健闘を祈ります!