【酒は量無し、乱に及ばず】仕事での酒も自己管理 命を懸けることは無い
「酒は量無し、乱に及ばず」とは、節度ある飲酒を進めた論語にある言葉。酒席では乾杯の嵐に抗うことは難しく、大変な目に合うことも。そこで、大事なのは、自身のセルフコントロール…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
酒は能く事を成し、酒は能く事を敗す
- 中国語:酒能成事,酒能败事 [ jiǔ néng chéng shì, jiǔ néng bài shì ]
- 出典:水滸全伝
- 意味:酒は事を上手くも運びもするし、駄目にもする。
酒は量無し、乱に及ばず
- 中国語:酒无量,不及乱 [ jiǔ wú liàng, bù jí luàn ]
- 出典:論語(郷党)
- 意味:酒には決まった量はないが、乱れるまでは飲まない、との意。節度ある飲酒を進めた言葉。
始料 及ばず
- 中国語:始料不及 [ shǐ liào bù jí ]
- 出典:里乘
- 意味:準備はできていたが、局面が変化し、対応が間に合わなかった。始めに予測出来なかった、予想もしていなかった、との意。
莫名其妙
- 中国語:莫名其妙 [ mò míng qí miào ]
- 出典:吴趼人(二十年目睹之怪现状)
- 意味:とらえ難くてわけがわからないこと。起きたことが奇妙であること。
白酒
- 中国語:白酒 [ bái jiǔ ]
- 概要:中国の穀物を原料とする蒸留酒で、世界の6大蒸留酒(ブランデー、ウイスキー、ウオッカ、ジン、ラム、白酒)のひとつとされる。アルコール度数が52度に達するものもあります。白酒の“白”は“透明”という意味。乾杯の後で、グラスを逆さにして、飲み干したことを相手に示す習慣があります。
記事:【酒は量無し、乱に及ばず】仕事での酒も自己管理 命を懸けることは無い
散乱する衣服
大連に赴任してまだ日が浅い、ある日の午後、自室のベッドの上で目が覚めた。その日は平日。いつも通りに出勤したはずなのに、「莫名其妙」、一体何が起きたのかわけがわからない…
辺りに脱ぎ捨てられたネクタイや衣服を拾い集めながら、我に返りました。真っ昼間から白酒を飲み、前後不覚状態となってしまったのでした。
大連市中心部から小一時間のところの旅順。日露戦争の激戦地であったところです。天然の良港であることから大きな軍港があり、当時は外国人の立ち入りが制限されている場所が多く存在していました。
そして、制限区域の中に、自社の営業所があり、旅順の顧客に対するサービス拠点となっていたのです。
しかし、外国人立ち入り禁止区域でしたから、日本人総経理(社長)は、自社の旅順営業所を訪問することすらできなかったのです。
思いがけず
そこで、旅順の当局を表敬訪問し、営業所への立入りについて了承を取り付けることができました。
そして、その後、昼食に招かれたのです。恐らく、表敬に対する答礼の意味合いであったのだろうと思われます。歓迎の会食とはいえ、真昼間、しかも仕事中の時間帯でしたから、昼食を共にするとのイメージでした。
しかし、「始料 及ばず」、お酒が出されました。それも、東北地方のお酒の定番である白酒。
アルコール度数52度の強烈さ。普通はひと口サイズの「小杯」で乾杯するのですが、その日は普通のグラス。なみなみと白酒を注ぎ、お互いの量が同じくらいであることを確認し合い、顔をしかめながら乾杯。歓迎の気持はありがたいのですが、相当きつい!
酒を飲むのも仕事
当時はまだまだ「酒を飲まずして仕事にはならない」という雰囲気が強く、宴席では酒を飲むことが必須。社業の発展のためにと、かなり無理をして乾杯の誘いに応じました。
その結果、友好関係を作ることができ、成功裏に終わることができました。
ただ、酷く酔っぱらってしまい。やむなく直接自宅に戻り、その後は記憶がありません。どうも、無意識のうちに着ているものを脱ぎ捨てながら寝てしまったということのようです。
「酒は能く事を成し、酒は能く事を敗す」と、成功、失敗の両面があるのがお酒。社内もしかり、対外的な席であっても、どの程度まで飲めばよいのか、また、飲んでもよいのか、その場での自分の立場、相手や周囲との力関係などによっても異なります。それを判断しなければならず、新参者にはなかなか大変です。
酒も変化すれど
中国経済の発展等によって社会も変化し、また、白酒よりもワインが好まれることも多くなりました。お酒の伴う会食機会も以前よりは減少したとはいえ、全く無くなったわけではありません。
また、乾杯を無理強いされることも少なくなり、飲み方もずいぶん「品」が良くなりました。車で来た人は飲まないと言いますし、それを皆が了承する時代になりました。飲まなくてもちゃんと仕事ができるようになったのです。
「酒は量無し、乱に及ばず」と、飲む場合にも、ほどほどがよいとの格言を守ろうと思えばできる時代の到来です。自己管理の範疇でコントロールできるのです。
酒に命を懸ける必要はなく、最も大事な健康を最優先に考えるべきだと言えます。今は「酒を飲まずとも仕事はできる」のです。