【朋有り遠方より来る】仕事休んで出迎え とにかく情の厚さには脱帽

植樹して5年後の桜(2015年5月大連)

 

「朋有り遠方より来る、亦楽しからずや」は論語にある、友が遠方から訪ねて来た時の喜びを表す言葉で、人の情の深さを感じます。実際に目の当たりにすると、それは半端なく舌を巻くほど。一方、情の感じられない会社運営は、社員からの支持を得られるものではありません。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

《今回のことわざ・五十音順》

 

一往情深

  • 中国語:一往情深   [ yī wǎng qíng shēn ]
  • 出典:南朝宋・刘义庆(世说新语·任诞)
  • 意味:人や物事に対してとても深い感情を傾けること。ひたすら思い焦がれる。

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感慨万千

  • 中国語:感慨万千   [ gǎn kǎi wàn qiān ]
  • 出典:平凡的世界
  • 意味:過去を回想すると感慨無量であること。

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索然無味

  • 中国語:索然无味   [ suǒ rán wú wèi ]
  • 出典:且介亭杂文附集
  • 意味:生気も味気もなく、面白味が少しも無いこと。

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朋有り遠方より来る、亦(また)楽しからずや

  • 中国語:有朋自远方来、亦乐乎      [ yǒu péng zì yuan fāng lái, yì lè hū ]
  • 出典:論語(学而)
  • 意味:同じ思いをなす友が遠方から遣って来た。なんと楽しいことか。

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花紅にして柳緑なり

  • 中国語:花红柳绿   [ huā hóng liǔ lǜ ]
  • 出典:生查子
  • 意味:清らかで美しい春の光景の形容。

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翻雲覆雨(ほんうんふくう)

  • 中国語:翻云覆雨   [ fān yún fù yǔ ]
  • 出典:杜甫(贫交行)
  • 意味:状況によって言葉や態度などをがらりと変え、手練手管を弄すること。人の心や、世間の人々の考えは変わりやすいことのたとえ。

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記事:【朋有り遠方より来る】仕事休んで出迎え とにかく情の厚さには脱帽

受け入れざるを得ない当たり前

 寒い冬が終わり、春がやってくると「花紅柳緑」の光景が出現する。自然の摂理で、いわば当たり前のことです。

 サラリーマンにとって、たくさんある「当たり前」のうちのひとつが「転勤」。待ちに待った喜びの場合もあれば、嫌々の場合も。どちらにしても、社命であり受け入れることは当たり前です。

 12年余にわたって大連の現地法人でで総経理(社長)を張ってきたが、遂に帰国命令が出されました。会社の内規とやらに基づく異動であって、しかも定年を既に通過した身でもあり、受け入れざるを得ないことです。「喜んで」でも「嫌々」でもなく、只々「感慨万千」、適当な言葉が見つかりません。

 そして、帰国を前に、総経理職を解かれることになりました。

 

日本人は事務的?

 後任は、同じく日本本社より派遣され、それまで共に仕事をしていた、副総経理が昇格することになりました。部下が昇格するとは、こんな喜ばしいことはありません。ある意味、サラリーマン冥利に尽きるというもの。

 その後の活躍を祈りつつ、総経理を解かれた翌日に、簡単な引継ぎを実施。

 その際に、新総経理から「○○さん」と呼ばれてしまった。昨日までは「〇〇総経理」と呼んでくれていたのに、一夜明けたら「さん付け」。確かに総経理職を解かれたのですから、決して間違いではありませんが、あまりにも鮮やかな変わりようで、まるで「翻雲覆雨」。心の中で苦笑い。

 手のひらを返したような態度に、いかにも事務的であって、何とも言えない情の薄さを感じ、切なかった心情は忘れられません。極めて残念なことですが、その後、会社業績は右肩上がりにはならず、ジリ貧状態となったそうである。

 

変わらぬ深い情

 一方、在任中は共に苦労してきた中国人の幹部社員達とは、帰国後もずっとSNSのやり取りが続いています。春節や中秋節等の中国の節目にメッセージを送り合う時に、お互いに苦労しながらも楽しく仕事をしていた、当時の様子が瞬時にまざまざと甦ってくるのです。

 その時、彼らは、メッセージの冒頭には、相変わらず「総経理」という呼び名が付いています。既に私は会社をリタイヤしているにもかかわらず、である。

 そこには、「一往情深」ともいうべき一途な深い感情が感じられます。これは生涯薄まることがないであろう互いの感情の深さと言えます。それぞれが恩を感じ、感謝の思いが今もって息づいているのです。

 

情無くして

 中国で、年老いた母親をおんぶしてレストランに入っていく子供と思しき人達を、何度か見かけました。誕生日を迎えた母親のお祝いのようです。子供や孫に囲まれ笑みがこぼれ、幸せそうな家族の姿に感動します。

 また、上海に赴任して以来20年以上の付き合いがある上海人の友人。たまに上海に行くと彼は仕事を休んで空港に出迎えてくれます。「有り遠方より来る、亦楽しからずや」という言葉が彷彿とさせます。

 このように付き合うときにはトコトンやろうとする気持ちの厚さに日本人にとしては舌を巻きます。

 「情」が過ぎてはマネジメントになりません。が、「情」が無くては、「索然無味」の会社になってしまっては、業績向上は夢物語と化す。機微に触れるマネジメントが成功へ結び付くものと確信します。

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