【聴天由命】 運を天に任せて成功するほど中国は甘くはないのに…

成功に向かってまっしぐら…なんてありえない 大連人民広場前の人民路(2019年5月)

 

「聴天由命」は、運を天に任せること。大きな労力と資金を投下してスタートした中国の合弁事業。しかし、そこには時限爆弾が内在されていると思わなければなりません。そのまま放置していたのでは、とても成功は期待できない。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

言わざれども而して喩す

  • 中国語:不言而喻   [ bù yán ér yù ]
  • 出典:孟子(尽心上)
  • 意味:ものを言わなくてもわかる。簡単で理解しやすいこと。口に出して言うまでもない、との意。言わずもがな。

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疑神疑鬼

  • 中国語:疑神疑鬼   [ yí shén yí guǐ ]
  • 出典:准风月谈(前记)
  • 意味:神を疑い鬼を疑う。やたらとあれこれ疑うこと。

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前途無量

  • 中国語:前途无量   [ qián tú wú liàng ]
  • 出典:钱钟书(围城)
  • 意味:前途に限界がないこと。前途洋々。

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聴天由命

  • 中国語:听天由命   [ tīng tiān yóu mìng ]
  • 出典:清·无名氏(说唐)
  • 意味:聴天をもって命とす。運を天に任せること。天命に従う。成り行きに任せる。

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ギクシャクの裏に

 「中国へ進出することは男のロマンだ」と言った人がいました。広大な土地、膨大な市場、悠久の歴史、どれをとっても、ビジネスマンの心を搔き立てるものがあります。それを実現するやり方のひとつが、中国の企業と合弁会社を設立することが考えられます。

 例えば、出資金以外に、日本側はブランド力と事業運営ノウハウを提供、中国側は地元の人脈や土地・建物を出すというやり方。そこに双方の利害が一致したときに合弁契約が成立し、固い握手を交わして念願の中国進出が実現。

 信頼できる友人としての事業パートナーを得、同時に膨大なマーケットを眼前にしたとき、日本人なら誰でも「前途無量」、現地の合弁事業の洋々たる将来を確信することでしょう。ロマンが実現し、お花畑のような夢を見つつスタートを切ったのです。

 しかし、いざ走り出し時間の経過とともに、双方の間にギクシャクすることが目立ち始め、ついには関係が破綻することの多いこと。そこにはいったい何があるのか…

 

やっつけ仕事

 問題のひとつは締結した合弁契約は、必ずしも双方の意見が十分一致したことにより結ばれたものではない、ということが言えます。

 日本側は合弁を協議する際には、できるだけの細かな取り決めをして、契約に臨もうとします。中国側からすれば、いつ起こるかわからない、場合によってはずっと起こらないかもしれない事柄を、どうする、こうすると考え議論するのは時間の無駄ではないか、と。それよりもむしろ、まず走り出すことの方が大事だ。途中で問題が発生したときに対応策などの細部を検討することでいいじゃないか、というのが一般的。

 日本側の時間のかかる考え方、手法に待ちきれない中国側は業を煮やし、早く手打ちして事業を始めようと焦りだすのです。もしこれ以上に時間を費やすようなら合弁の話は止めにする。そんな言葉に日本側が抗しきれず、とうとう見切り発車を決断。

 実はこれ、「聴天由命」、言ってみれば一か八かのやっつけ仕事でしかありません。ただ、日本側にとってはアウエーであることを考えると、合弁の話をまとめるにはある程度そうならざるを得ないのも事実です。

 

疑いばかり

 そうして中国側の意に負けて見切り発車した合弁事業。走りながらでも軌道修正を図り、諸課題の対策を考えればよいのですが、日本側は習性か勘違いか、ことはすべて決まったような気になってしまうようです。つまり、ただただ黙々と走ることになり、当然のように頻発する問題には後手後手の対応。事業展開はスムーズさを欠くことになってしまう。

 日本本社は思うような事業展開になっていない事に、現地の経営サイドの能力に疑問を感じ、中国側は期待した利益の享受が得られないことに苛立ち、更には、出資者双方の間で板挟みになり苦悩する現地責任者。それぞれが「疑神疑鬼」とばかりに、やたらと互いを疑うことが多くなる。

 特に哀れなのは、いい加減な妥協の産物である現地会社に派遣された日本人経営者である総経理(社長)です。

 

言わずもがな

 始めのところが大事であるにもかかわらず、詰め切れていないまま締結した合弁契約には、実は時限爆弾が仕掛けられているようなもの。合弁がスタートした後、何も手を打たなければ何時かはわかりませんが、いずれ爆発するのです。

 最初がいい加減なスタートであったこと。更にその後の対策がなされず、軌道修正してこなかったことが重なった結果は「不言而喻」、言わずもがなではないでしょうか。日本側のお粗末で、他人任せの考え方では成功するほど中国事業は甘くありません。市場がどんなに膨大であったとしても、です。

 「いい加減なスタート」はある意味でやむを得ないとして、その後はどうすれば成功に導くことができるのでしょうか…

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