このゲテモノを食え とは言わぬが【装模作様】では勝てぬぞ
美食、ゲテモノ、食べ物なら何でもありの中国。「そんなゲテモノ、食えるか!」と言ってもったいぶっていては、成功を手にするのは難しい。しかし、何にでも挑戦だ、身の毛立つことも…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
忍気呑声
- 中国語:忍气吞声 [ rěn qì tūn shēng ]
- 出典:潇湘雨
- 意味:言いたいことが言えずにじっと我慢すること。黙って怒りをこらえる,怒りをこらえて我慢すること。
打草驚蛇
- 中国語:打草惊蛇 [ dǎ cǎo jīng shé ]
- 出典:南唐近事
- 意味:藪をつついて蛇を出す。不用意なことをして相手に警戒心を抱かせること。草を打って蛇を驚かせる。
装模作様(そうもさくよう)
- 中国語:装模作样 [ zhuāng mú zuò yàng ]
- 出典:荆钗记传奇
- 意味:模を装い様を作る。格好をつける。もったいぶること。
毛骨悚然(もうこつしょうぜん)
- 中国語:毛骨悚然 [ máo gǔ sǒng rán ]
- 出典:送窮文
- 意味:身の毛がよだち背骨がぞっとする。
記事:このゲテモノを食え とは言わぬが【装模作様】では勝てぬぞ
びっくり
上海のとある中国レストラン。友人の中国人が「蛇」を注文。しばらくすると談笑中のテーブルの目の前にやって来た服務員(サービス係員)が、大きな蛇の首根っこを掴んで、「この蛇でいいか?」と。
「打草惊蛇」ということわざは、人間が蛇を驚かすのですが、その時ばかりは驚いたのは人間の方。
びっくりするも束の間、さっきの蛇の約5センチほどの切り身が「唐揚げ」になって出てきました。人生初の蛇食。これが元の姿からは想像できないほどに美味かった。
しかし、捌いた蛇の生皮と白酒に浸けられた肝は食べる勇気はありませんでした。何しろ皮の縞模様があまりにも生々しく、肝は毒々しい色であったものですから。
ゾッとする
「食は広州に在り」とよく言われます。広東料理の素晴らしさを表した言葉です。広州には、美食以外にゲテモノなど何でもあり。
ある老舗レストランの食材コーナーを見ると、なるほど、ここは動物園か水族館か。血がにじむ鰐の腕も並んでいる。水槽には水面を泳ぐゲンゴロウが。食べるんかいな、これ…
このゲンゴロウ、別名は「竜虱(りゅうしつ)」。中国では「龍虱」。何故、「龍の虱」というのか知る由もないが…
そうこうしている内に「龍虱の油炒め」が出てきました。油で殻が黒光りしていて、まるでゴキブリのよう。これを食べるのかと思うと「毛骨悚然」、ゾッとします。
勇気を出して食べてみた。硬い殻を一気にグッと噛むと、中からブチュっと何やら口の中に…
「龍虱」は中国人にとっても、飲み下しにくい食べ物のひとつだそうです。
何これ
何も広州だけではなく、中国のあちこちに独特の「食」が存在することに感心します。
中国・東北の大連の市場で。大きな籠に山のように盛られた、何やら黒っぽいもの。よく見るともぞもぞと動いているではないか。これ、芋虫?
実はこのゾッとする食べ物は「蚕」。冬の長い東北地方では貴重なたんぱく源となっているそうです。レストランで「炸蚕」という蚕の料理を時々見かけます。それにしても、それを好んで食べる勇気に感心します。もちろん自分には食べる勇気はゼロです。南の「龍虱」、北の「蚕」、ゲテモノの双璧ではないかと思います。
命いただきます
中国のレストランで、回転テーブルに乗せられた大皿が前で止まった。見ると、丸焼きにされた鳥の頭と嘴がこっちを向いている。「忍気呑声」、思わず息を吞んだ。これは、比較的ポピュラーなメニューの「鳩の丸焼き」。平和の象徴である鳩にしてみれば、勝手に丸焼きにされた怒りを、黙ってこらえているようにも見える。目をつぶって、食べるとまあまあ美味い。
もうひとつは「醉虾」。文字通り酔っ払い海老。活きたえびを白酒に浸し、酔っぱらった所で海老の頭を千切り人間が食べる、という料理。無理やり酔わされたえびが文句を言ってはしないか、気になります。
残酷なようにも思えるこの料理。正に「(鳩やえびの)命をいただきます」と手を合わせたくなるのです。
何でも食べる?
陸上では四本足は机以外、二本足は両親以外、空を飛ぶ物は飛行機以外、 水中の物は潜水艦以外なんでも食べる、と巷間言われています。そこで生活をし、仕事をしているのです。時には会食の際には、見たことも食べたこともない料理が出されるかもしれません。
料理の美学も、食材も日本とはずいぶん違う環境にどっぷりと浸かって仕事をする日本人。「そんなゲテモノ、食えるか!」と言い放っていいものであろうか。
日本でも昆虫食が話題になる昨今、「装模作様」とばかりにもったいぶっていては、アウエーの地での戦いに、勝算は見えてきませんぞ。