【心を嘔き血を瀝ぐ】とは大仰な 中国・小康時代若者の事勿れ主義への対応
現地のある若い営業員からいきなり「いくら迄値引きをしてもいいでしょうか」との質問が。おいおい、ちょっと待ってくれ、交渉をする前から値引きの話はないだろう…
成功のヒント 中国のことわざ・格言
意気風発
- 中国語:意气风发 [ yì qì fēng fā ]
- 出典:三国·魏·曹植(魏德论)
- 意味:意気盛んであること。意気軒昂。
一事の多きは一事の少なきに如かず
- 中国語:多一事不如少一事 [ duō yī shì bù rú shǎo yī shì ]
- 出典:清·刘鹗(老残游记)
- 意味:事を余計にするよりは控えた方が良いという消極主義のこと。触らぬ神にたたりなし。事勿れ主義。
心(しん)を嘔(は)き血を瀝(そそ)ぐ(嘔心瀝血)
- 中国語:呕心沥血 [ ǒu xīn lì xuè ]
- 出典:李商隐(李贺小传)
- 意味:「嘔心」は口から心臓を吐き出すこと。「瀝血」は血が滴り落ちること。心血を注いで、全力で物事に取り組むこと。
青紅皁白 (そうはく)分たず
- 中国語:不分青红皂白 [ bù fēn qīng hóng zào bái ](俗語)
- 出典:诗·大雅·桑柔
- 意味:「皂(皁)」は黒色のこと。事の是非、黒白をわきまえないこと。有無を言わせないこと。
目睜(せい)口呆(ほう)
- 中国語:目睁口呆 [ mù zhēng kǒu dāi ]
- 出典:水滸伝
- 意味:驚き惧(おそ)れ眼を大きく見開き、言葉が出ないこと。(驚き・恐怖のために)ぼうぜんとする。あっけにとられること。
小康
- 中国語:小康 [ xiǎo kāng ]
- 出典:詩経(大雅·民劳)
- 意味:(成語ではありません)生活が比較的安定していること。
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安直な問いかけ
あまりにも唐突であったので「目睜口呆」。その訳を聞くと、ある見込み客を訪問し商談をするので、値引き限度枠を前もって知っておきたいとのこと。
どうせ、〇〇%までならいいよ、とでも言おうものなら、交渉が不首尾に終わったときに「指示通りで交渉しましたが、商談は成功しませんでした」と言い訳するのが落ちです。つまり、その商談がまとまらなかった原因は自分には無い、ということです。自分の営業力には触れず、責任を他所に求める無責任極まりない考え方が見え隠れ。
「掛け値なしで提示する見積り条件に値引き許容範囲などあるわけがない、精一杯頑張ってこい」と、肩のひとつも叩きながら励まして、笑顔で送り出すのが妥当解です。
安易な処世術
主に1990年以降に生まれた若手社員達。彼らの親世代は、貧しい生活を強いられた時代で、それでも懸命に仕事に励み憧れのマンションを購入しマイカーも手に入れ、「小康生活」を手に入れたのです。
そしてその子供世代は、既に衣食住が足りた中流階層の子として、何不自由なく育てられた彼ら。唯一備わっていないのはハングリー精神。そんな彼らのモチベーションを上げることは簡単ではありません。リーダーとしては頭が痛いところです。
もう一つの背景はセールスという仕事の歴史が浅いこと。以前の計画経済体制下では「営業」ということをする必要性がありませんでした。1992年に解放改革施策が打ち出され、その後出現した職種なのです。営業理論や営業マネジメント手法など、根付いているとは言い難い状況でありました。
例えば、総経理(社長)としては、少し高めの営業目標に挑戦してもらいたいのですが、営業員達は低めで無難なレベルに設定したいようです。
「一事の多きは一事の少なきに如かず」、余計なことはしないで控えた方が無難だと言うのです。積極的に高い目標を設定して、達成できずに叱責をされるより、小さな目標でやった方が無難という考え方が当時は支配的でした。
これを処世術と言う向きもあるでしょうが、消極的であるとの誹りは免れません。若手社員が事勿れ主義から抜け出さないと、自らの成長も会社の発展も大きくは期待できません。
高めの目標
もし自己申告した高めの目標を達成できなかった社員に対して、「青紅皁白分たず」と叱責することは、避けたいものです。
営業というのは相手あってのことですから、懸命の努力を行ったとしても満足できる成果を獲得できるとは限らない。
にも拘らず、頭ごなしに「何やってんだ!」「自分で言ったことくらいちゃんとやってくれよ!」と叱責したのでは、せっかく次月以降につながるはずの成長の芽を摘んでしまいます。
むしろ、小さな目標しか持とうとしないでお茶を濁そうとする消極的な営業員が多い中で、敢えて、高めの目標を設定し周囲にそれを宣言する営業員の勇気を称えるべきです。何故なら必然的に彼の営業活動量が増えるのだから、その月は未達成に終わったとしても次月以降、何れは実を結ぶはずだからです。
積極社員への期待
大事なことは、高めの目標を設定したならば、「心を嘔き血を瀝ぐ」とばかりに、定めた目標の達成に向かって活動を開始し、最後まで全力で力を出し切ることです。結果は二の次なのです。
気を抜かずにやり通すことを続けることによって社員達は必ずや成長することでしょう。その結果、会社の業績の拡大にも繋がります。
そうして成長した社員はそれなりの役職を担い、相応の待遇を享受できることになります。大事な面子も上げることができるというものです。そうなると若い社員達は「意気風発」、仕事が好循環に入った心地よさを体験できるはずです。
今月、今週、今日と全力投球。力を出し切れば見えるであろう自分の限界点。そこに到達した時に次なる成長への展望が開けてくる。これが新たな可能性の創出です。つまり社員の成長は無限大であるということです。
決して、リーダーが部下の可能性を摘んでしまうようなヘマをしてはなりません。何より総経理こそ自らが「嘔心瀝血」を忘れずに!