隔世の感がする変化 【夜郎自大】との謗りを受けないために
ysoga
大連・中山路（2019年5月）
上海の日本人向け高級住宅。一流企業の駐在員社員でもなかなか手が出せない。敷地内の日本料理店でたまに「サバの塩焼き定食」を食べるのがせいぜいの一般日本人にとっては、敷居が高い。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
恍たり隔世の如し
- 中国語：恍如隔世 [ huǎng rú gé shì ]
- 出典：吴船录下
- 意味：人や景色の変化が激しいことで引き起こされる感触のこと。さながら隔世の感があるとの意。
大智は愚なるが若し
- 中国語：大智若愚 [ dà zhì ruò yú ]
- 出典：老子
- 意味：徳を持つ真の賢者は、こざかしい知恵をひけらかさないので、一見愚者のように見える。
満は損を招き、謙は益を受く
- 中国語：满招损，谦受益 [ mǎn zhāo sǔn，qiān shòu yì ]
- 出典：書経
- 意味：満は慢心、謙は謙虚のこと。自分の能力を鼻にかけて人を見下す態度のような「満」は、必ず周囲からの反発を受け、自分自身もそれ以上の向上が望めなくなる。よって損を招く。それとは逆に能力がある者が謙虚な態度であれば大きな益を受ける。
無影無踪
- 中国語：无影无踪 [ wú yǐng wú zōng ]
- 出典：吴昌龄（东坡梦）
- 意味：跡形も無いこと。影も形もない。
夜郎自大
- 中国語：夜郎自大 [ yè láng zì dà ]
- 出典：史记（西南夷列传）
- 意味：自分の力量をわきまえず、威張ること。尊大で高慢な態度。
- 故事：「夜郎」とは中国西南地方の小国。当時絶大な強国であった「漢」の使者に対して、「我が国（夜郎国）と漢はどちらが大きいか」と尋ねた。（夜郎国は山奥にあったので「漢」がそんなにも大きいとは知らなかった）
記事：隔世の感がする変化 【夜郎自大】との謗りを受けないために
上海の日本人村
1998年当時の上海は、日系企業の進出ラッシュの時期でもあり、日本人駐在員とその家族が増加の一途をたどっていた。
そして、日本人居住者のニーズを吸収すべく日系不動産大手によって高級マンションがいくつも開発され、そこは俗に「日本人村」と呼ばれていました。
日本人向けを謳うだけのことがあって、各戸には日本式の浴槽を備え、畳の部屋もあったそうな。また、子供たちが通う日本人学校へのスクールバスが運行されるなど、至れり尽くせり。
その代わり、家賃は3000ドル以上もする高級物件ばかり。しかし、家賃は会社側が負担することもあり、中国・上海の中にあって日本レベルの生活ができると大人気でした。
それから約20年、「日本人村」が遂に「無影無踪」に至ったとのニュースに触れ、一時とはいえ栄華を誇ったことを思えば「恍如隔世」を拭えません。
甚だしい勘違い
周囲を塀に囲まれた「日本人村」の正面入口にはゲートセキュリティが施され、出入りの都度、立哨する警備員から敬礼される。
居住する駐在員は、運転手付きの社有車の後部座席に乗り、敬礼を受けると何か偉くなったような気がしてきます。
満員の地下鉄やバスで通勤する現地社員とは、住む世界の違う雲上人のようなもの。会社では「総経理（社長）」と呼ばれ、デスクに着くとお茶が運ばれてきます。背もたれの大きな椅子に座り指示を出す毎日。
しかし、それで偉くなったと思うのは「夜郎自大」の謗りを免れません。総経理といっても、日本国内では一介のせいぜい課長職であったのに、環境が激変しただけのこと。能力は何も変わってはいないのに、尊大で高慢な態度を取るなどという薄っぺらな人間では、三日もしたら部下から見透かされ、誰もついてこなくなることは自明の理。
名役者たれ
「大智は愚なるが若し」と言われるように、賢人と言われる人は一見愚者のように見えると。徳を磨いている人は決して偉ぶったりはしないというのです。
では、偉くなったと勘違いさせてしまいそうな環境の中で、それを防ぐにはどうすればよいのであろうか。
ある人は「お芝居で“総経理”という役を演じていると思え」と言いました。監督（日本本社経営者）から総経理という役を貰って、観客（現地社員達）の前で演じているのだと思うのがちょうどよい、ということです。
加えて、どうせ演じるのなら観客（社員）に感動を与え、涙のひとつもこぼすような名演技をする努力を怠るなと。
成功の第一条件
本社から派遣された総経理とはいえ、能力の面も人としての徳も完成されているわけではありません。
確かに、会社に在っては最高権力をもって采配を振るうのは総経理です。だからと言って、実務をこなす社員のみなさんや、総経理周辺の外部の人達に対して、尊大ぶった態度で接していたのでは、協力を得るのは難しい。
「満は損を招き、謙は益を受く」という格言の通り、やはり成功の第一条件は、こざかしい知恵をひけらかしたりはせず、謙虚であること、ではないでしょうか。
周りから持ち上げられることが少なくありませんが、それに惑わされないよう、自らがよくよく気を引き締めなければ。
