【一樹百穫】片腕が突然退職し走る激震 しかし【逢凶化吉】の結果が

新緑の大連・中山路(2019年5月)

 

現地会社での日本人総経理(社長)にとって、ナンバーツーの幹部社員は頼みの綱。そんな幹部社員が突然退職。さてどうする?

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一樹百穫

  • 中国語:一树百获   [ yī shù bǎi huò ]
  • 出典:管子(权修)
  • 意味:原文では「一樹一穫なるものは穀なり、一樹十穫なるものは木なり、一樹百穫なるものは人なり」とあります。大計を成し遂げるには、人材を育成しなければならないというたとえ。 一を育てて、 百倍もの収穫があるのは人材であるとの意から。

»記事へ

 

恩を将に仇で報いる(恩将仇報)

  • 中国語:恩将仇报   [ Ēn jiāng chou bào ]
  • 出典:西游记
  • 意味:恩を仇で報いるとの意。恩返しをしないで、かえって恩人に害を与えること。恩を仇(あだ)で返す。

»記事へ

 

詭計多端

  • 中国語:诡计多端   [ guǐ jì duō duān ]
  • 出典:宋・苏辙(论吕惠卿)
  • 意味:詐欺的計略が次々を現れる事。詭計とは計略のこと。多端とは多くもっていること。悪知恵がよく働き、人をだます計略をたくさんもっているとの意。

»記事へ

 

凶に逢い吉と化す(逢凶化吉)

  • 中国語:逢凶化吉   [ féng xiōng huà jí ]
  • 出典:明·施耐庵(水浒传)
  • 意味:遭遇した危険なことを目出度いことに転じること。禍を転じて福となす。

»記事へ

 

土を破り出る(破土而出)

  • 中国語:破土而出   [ pò tǔ ér chū ]
  • 意味:各種の人材や新しい事物が芽を出して成長する。(改革開放期の言葉)

»記事へ

 

吐故纳新(とこのうしん)

  • 中国語:吐故纳新   [ tǔ gù nà xīn ]
  • 出典:庄子(刻意)
  • 意味:濁った空気を吐き出し、新鮮な空気を吸い込む呼吸のこと。転じて、古いものを捨て、新しいものを取り入れること。古いものを捨てて、新しいものを取り入れること。

»記事へ

» 成功の中国ことわざ・格言リスト

 

記事:【一樹百穫】片腕が突然退職し走る激震 しかし【逢凶化吉】の結果が

生え抜き幹部社員

 ある生え抜きの幹部社員から突然の退職申し出があった。

 日本人の総経理(社長)にとっては、現地の幹部社員の存在は自身の片腕でもある。まして、彼は現場にも通じた営業部門のリーダーでもあったのですからなおさらです。

 本人との面談によって、「退職し自分で起業する」とのことがわかりました。男子一生の夢でもある起業は十分理解できます。また、彼の場合は、年齢的にも起業には最後のチャンスでありました。

 起業しても会社との競合はしないと言っていましたので承諾することにしたのです。ささやかな送別会を開き、在職中の労をねぎらうとともに記念品を贈り、今後の成功を祈りました。

 こうして快く送り出したのですが、暫くすると、あろうことか、彼は、我が社と競合する会社を設立したのです!

 退職をスムーズに進めるために嘘をついたようです。「恩を将に仇で報いる」ような行動をとるとは何たることか!

 

ナンバーツー

 詭計多端」と、よくもまあこんな悪知恵がはたらくものだ。そんな出来事もありました。

 まぎれもない会社のナンバーツーの幹部社員が、良からぬ事態を引き起こしたのです。彼は、部下社員に対して自分の言うことを聞くように巧妙に仕向け、社内に自分の派閥を作ったのです。

 そうなると部下社員にとっては総経理が二人いるようなもので、それでは会社方針や総経理指示事項が組織の隅々に正しく徹底できるわけがありません。

 また、顧客に対して会社が取扱うハイグレード製品を売らずに、こっそりと安価な他社製品を会社名義で販売し、個人で利益を得ていたという黒い噂が耳に入りました。

 さらには、自分の生まれ故郷で、会社の看板を勝手に掲げてニセの会社を作ったというとんでもない話もありました。

 こうなってはどうしようもなく、辞めてもらわざるを得ません。本人に面接し通知する際に、彼の口から「会社を辞めろという通知でしょう?」と、先に口を開いたのです。恐らく、通告される前に自ら退職することで、自分のメンツを守ろうとしたのでしょう。

 

案に相違

 上の二人は、どちらも会社にとって不可欠の人材だと思われていました。それだけに、彼らが退職後の会社業績が悪くなりはしないかと懸念されました。社内にも大丈夫だろうかといった心配する声が多くありました。

 しかし、案に相違して、業績は以前よりもよくなったのです。

 察するに、後任として任命した「次」の人材が、頭上に覆いかかっていた重石が無くなり、一気に芽が出たのであろう。

新進気鋭の後任者が「破土而出」、大活躍したのです。古い幹部社員の退職は、むしろ新しい人材登用のチャンスとなりました。

 

頼りの社員

 中国を知るベテラン日本人総経理、といっても所詮は現地では外国人。マーケット事情や政府人脈など、自分の足りないところは中国人幹部社員に頼らざるを得ません。

 その頼りにしていた幹部社員に辞められると困ることになると思うのが普通でありましょう。

 しかし、そういう思いが会社という組織内で仇になることもあるということです。要はその幹部社員が会社にとって必要か否かを客観的に判断することが肝要であるといえます。

 幹部社員の退職は一時は凶事に見えることでしょうが、「逢凶化吉」と吉事に変えることができるのです。

 

総経理だけができる

 そのためには、日頃から社員教育、適切なマネジメント、社員とのコミュニケーションなどを十分に行い、社員の成長を常に促すことが不可欠です。放っておいては人は成長しません。

 一樹百穫」を理解し、日常的に実行していれば、患部社員の退職などという事態が起きてもあわてることは無いのです。加えて言うならば、「吐故纳新」が実行できるのは総経理だけであることを銘記し、日々のマネジメントを行うべきであります。

»現場目線の成功ヒント

お問い合わせ等はメールをご利用ください。info@jita-tomo.net