【事予めすれば則ち立つ】 中国で成功を得るために外せない考え方は
朝礼や会議で、今日も頑張ろう、今月も頑張りましょう、などと気合を入れたつもりなのでしょうが、その程度のことでいったい誰が頑張るのでしょうか…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
勢に因りて利導す(因勢利導)
- 中国語:因势利导 [ yīn shì lì dǎo ]
- 出典:司馬遷(史记・孙子吴起列传)
- 意味:事情や発展の趨勢によって、目的の実現に向かって有利に導くこと。物事の動向・情勢に応じて指導すること。
一廂情愿(いっしょうじょうげん)
- 中国語:一厢情愿 [ yī xiāng qíng yuàn ]
- 出典:金·王若虚(滹南遗老集)
- 意味:自分だけの思い込み、一方的な考えや望みのこと。
事予めすれば則ち立ち、予めせざれば則ち廃す
- 中国語:事予则立、不予则废 [ shì yǔ zé lì, bù yǔ zé fèi ]
- 出典:中庸
- 意味:何事も十分に準備をして取りかかれば成功し、それを怠れば失敗するとの意。
捜腸刮肚(そうちょうかつと)
- 中国語:搜肠刮肚 [ sōu cháng guā dù ]
- 出典:不伏老
- 意味:腸を捜し肚を刮る。あれこれと知恵を絞ること。
恒を以って之を持つ(持之以恒)
- 中国語:持之以恒 [ chí zhī yǐ héng ]
- 出典:曾国藩(家训喻纪泽)
- 意味:根気よく続けること。頑張るとの意。恒は恒心(根気)の意。長期にわたって堅持する、あくまでやり抜くこと。
無稽之談(むけいのだん)
- 中国語:无稽之谈 [ wú jī zhī tán ]
- 出典:根拠のない話 よりどころの無い話。
記事:【事予めすれば則ち立つ】 中国で成功を得るために外せない考え方は
無益の精神論
営業会議や朝礼などで、「今月も目標達成に向かって頑張ろう!」という激励のひと言で済むかもしれません、日本国内なら。が、中国ではそんな精神論はほとんど用をなさない。「無稽之談」と言わざるを得ません。
中国現地の会社では、総経理(社長)は眼前のマーケットを知り、現地の習慣や考え方を理解し、その上で、どうすれば会社を発展させ、社員をより幸福にすることができるか、思いを巡らせなければなりません。
広大な中国
広大な国土を持つ中国では、地域で考え方や習慣が異なり、また、都市によって発展度合いも違います。つまり、日本本社の言うような画一的な指示や施策ではとても対応できないのです。
そこで、異なる地域性や事情に応じた、「勢に因りて利導す」という考え方が重要です。総経理として赴任した地の事情に応じた、画一的ではない独自的な施策を考えるのが総経理の任務なのです。
現地のマーケットを知らない日本本社は、せいぜい前年比などの数字でものを言う程度のことなのですから…
感じられない反応
では、総経理として課されたミッションを果たすために、何をどうすればよいのか。
経営拡大に繋げる施策について、自分としては「捜腸刮肚」の結果を社員の皆さんに訴えた。ですが、目だった反応は無くまるで暖簾に腕押し。どうも、社員達の心には響かなかったようです。
一体どこで間違えたのであろうか
一方通行では
社員達は何のために仕事をしているのか、という思いが十分ではなかったことに思い当たった。
会社の発展拡大を願う気持は、社員としても同じであろうと思っていましたが、どうもそれは「一廂情愿」であったようです。
社員達は必ずしも会社の為ではなく、むしろ、自分や家族が豊かな暮らしをすることができるように仕事をしている、という視点を十分考えられていませんでした。
会社施策を検討するにしても、考え方の基礎には「自他共」という思想が無いと一方通行で終わってしまいます。
総経理が訴える施策を実働部隊である社員達が実行することで、自分達の暮らしはもっとよくなるという納得感が得られる。結果、彼等の腑に落ちてこそ施策の徹底がなされるというもの。
何事も準備こそ
具体的には、まずビジョンの策定。
親会社が定めたものではなく、そのエリア、その会社(事業)に見合ったビジョンを、責任者である総経理が自ら考え策定するのがよいと考えます。
例えば、「5年後には売上〇〇元を目指す」とか、「地域で業界ナンバーワンの会社になる」などです。
それを実現するために共に努力しようと訴えれば、社員達は自分の中に希望が湧き、会社の発展と自分の将来を重ね合わせイメージしやすくなるのではないかと思います。
何事も「事予めすれば則ち立つ」、十分な準備をして取りかかれば成功する。方針・施策を熟考しビジョンを作る、合わせて実行基盤となる思想を組み上げるという準備が成功の最大要因です。
会社のビジョンを明確にすることは、社員に夢と希望を与え自らが挑戦する勇気を湧きたたせることになります。
方針を発表した大事な会議。ビジョンも説明し、今回は手応えを感じることができた。皆さん理解してくれたようです。
しかし、会議で聞いたことは帰る途中で半分くらいは抜けてしまい、3日も経てば何も残っていない。自身の経験上もそうでした。所詮サラリーマンはそんなもの。聞いただけではすぐ抜けてしまうと考えておくべきでしょう。
そこで考えるべき次のポイントは、「恒を以って之を持つ」。社内で物事を徹底するには、どこまでも丁寧に、一歩一歩、時間をかけ、理解と納得を得て、共感させるという根気のある総経理の取り組みが欠かせないことです。
実は、「人は情報の8割は視覚から得ている」のだそうです。つまり、会議や朝礼で話しを聞くだけでは十分ではないということです。
そこで、例えば、啓発ポスターを作り社内に貼り出し、四六時中、目に入ってくる状態を作ること。それは、目と耳と口でビジョンを語りかけ、社員が理解する接点を多くすることになります。
総経理が自身でビジョンを策定し、組織内に周知させることが、成功の路程の出発点なのです。
風土が異なる地で物事を衆知徹底するには、根気が何より大事だといえます。これらを乗り越えると、組織は自然と回転していきます。
そして、常に思考の底流には「自他共」の思想が不可欠なのです。