【切磋琢磨】が社員を救う 現地会社内の活力を増強し勝ちを得るために
海外で仕事をしていると、時に想定外のことを社員から聞かされ面食らうことがあります。「こいつ何を寝ぼけたことを…」と思わせるようなその一言。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
一事(いちじ)成(な)ること無(な)し《一事無成》
- 中国語:一事无成 [ yī shì wú chéng ]
- 出典: 白居易(除夜寄微之)
- 意味:一つの物事ですら最期までやり遂げることができないこと。何一つ成果を得られないという意味。
一仍旧貫
- 中国語:一仍旧贯 [ yī réng jiù guàn ]
- 出典:論語(先进)
- 意味:旧貫は旧制度、旧習のこと。一切を旧例のとおりに行うとの意。旧態依然。
挙足軽重
- 中国語:举足轻重 [ jǔ zú qīng zhòng ]
- 出典:後漢書(窦融传)
- 意味:足を上げた時に両側の重さを変えることができる、との意。重要なポストを占め、一挙手一投足が全局面に影響することの例え。
耳濡目染
- 中国語:耳濡目染 [ ěr rú mù rǎn ]
- 出典:韓愈(清河郡公房公墓碣铭)
- 意味:耳が濡れ目が染まる。日頃から耳にしたり目で見たりしているうちに、知らず知らず影響を受けるようになる、との意。
切磋琢磨
- 中国語:切瑳琢磨 [ qiē cuō zhuó mó ]
- 出典:与孙莘老书
- 意味:石などを切って磨くこと。仲間同士が互いに互いに長所を吸収し、欠点を直すことの例え。
莫逆(ばくぎゃく)の交わり
- 中国語:莫逆之交 [ mò nì zhī jiāo ]
- 出典:庄子(大宗师)
- 意味:逆らうこと無く非常に親しい付き合い、との意。意気投合した友のこと。莫逆の友。
悶悶不楽
- 中国語:闷闷不乐 [ mèn mèn bù lè ]
- 出典:三国志演義
- 意味:鬱々としていること。ふさぎ込んでいること。
記事:【切磋琢磨】が社員を救う 現地会社内の活力を増強し勝ちを得るために
ふさぎ込む社員
ある時、「悶悶不楽」の体の地元営業員を見かけた。聞いてみると、総経理(社長)が言うとおりに、社内で営業員同士が競争すると大事な友人を無くしてしまうことになる、と心配しているのだと。
会社が拡大していくためにエンジンの働きをするのが営業部門。そこで、社内で営業員同士が競争をすることで、更なる活力を持って会社を牽引することができる。
営業会議で彼らの前でそう訴えた時の反応だったのです。
総経理の言うことには従わなければならないし、かと言って友人は失いたくないし、どうすればいいんだ、と言ったところだったのでしょう。
組織に風穴
中国が計画経済から市場経済に移行したのは1978年。以来、改革開放政策を推し進め中国経済は目を見張る発展を遂げてきました。そして20年余。ようやく沸き立ちかけたころの大連に赴任したのですが、現実の市場での競争はまだまだ「緒に就いたばかり」という状況でした。
のんびりと競争の真似事のようなことをやっていても埒があくことは無い。いつまでも「一仍旧貫」の状態ではいずれ変化についていけなくなってしまう。
そこで、社内で競争の構造を創り出し、組織に風穴開けようと。それには営業員同士の競争が打ってつけであった。
大鍋飯から脱却
市場経済に移行後に出現した職種である営業職。彼らは競合する他の会社との競争など、市場競争経済に少しずつ慣れてはきていましたが、それでも社内で、しかも同僚でもある社員間で競争するなどということは考えられないことであったようです。
社員ごとの業績評価もしないで、個人の成果に関係なく一律にベースアップするという「大鍋飯」の運営をしていたのですから無理もないことです。
しかし、そのままでは生ぬるい会社にしかなり得ず、「一事無成」に甘んじることになりかねません。そうならないためにも、どうしても社員間で競争し会社を活性化させなければ…
※大鍋飯:すべての人が同じ待遇を受けることを例えた言葉。
競争の必要性
手始めに社員のみんなにこう語りかけました。
「改革開放が進み、すでに“大锅饭”の時代ではなくなった。今までは、手をつないで横一列に並んでみんなで歩を進めてきた。しかし、歩調を合わせて歩くのがつらい人もいるだろうし、他の人よりも早く歩きたい人もいるだろう。だから一旦その手を放してみようよ」と。
更に、「競争は向上心をもたらし自分も競争相手も共に成長できる。『切磋琢磨』という言葉があるではないか。その結果、皆の生活は今よりもっと豊かで幸せにすることができる」と競争の必要性を説いたのです。
すぐには納得しない社員
しかし、社員達からは芳しい反応は得られませんでした。中には、そんなことをしたら友達を無くす。だから友達とは競争できないと訴える社員が目立ちました。
そういう訴えに対し、「お互いに幸せになれるのが競争なのだから、友情と競争が共存できるはずだ。また、そうすることが真の友人ではないのか」と口酸っぱく訴えたのです。社員同士で競争してもし離れていく同僚がいたとすれば、それは決して真の友人ではない。正々堂々と競争して勝負がつけば握手してお互いが相手を讃える。それが「莫逆の交わり」ではないのか、とも話しました。
そろりと
浮かぬ顔をしていた営業社員も、そろりと動き出しました。社内で競争を始めてみると、人よりも少しばかり気の利いた社員も現れ、少しずつ変わって行きました。競争するというということがどんなものか、「耳濡目染」、少しずつ理解され肯定されるようになったのです。
成功しそうな営業社員の姿を身近で目にしたとき、自分も後れを取っては…と考えるようになったのではないでしょうか。
競争のキーパーソン
ほんの少し前までは、中国で仲間同士としての社員同士が競争をするなどとは、考えられなかった風潮の中で、社員達を「その気」にさせるのは簡単ではありませんし、根気強く話し込み動機づけをすることが必要です。
成就するためのポイントは、総経理自身と幹部社員達の「挙足軽重」の行動でありましょう。
簡単ではありませんが、成功すればその苦労は消えてしまいます。むしろ、その苦労があってこそ成功の喜びを享受できるというものです。目指すは、会社の拡大大発展!