【井に坐して天を観る】 知らぬ間に陥るこの失敗に気づかせてくれたのは

大連市街の高層ビル群(2017年5月)

 

朝は誰よりも早く出社し、社員が出社する前の静かな時間に前日にたまっていた事務処理を行い、夜は誰よりも遅く会社を出る。土日はゴルフの予定でもない限り自宅で資料作り。自分がいるから会社は回っているのだ。そんなふうに思っていた…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

井に坐して天を観る(坐井観天)

  • 中国語:坐井观天   [ zuò jǐng guān tiān ]
  • 出典:韓愈(原道)
  • 意味:井戸の中に坐って天を観る。見識見聞が狭いことの例え。(何にもわかっちゃいない)

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羽翼已に成る(羽翼已成)

  • 中国語:羽翼已成   [ yǔ yì yǐ chéng ]
  • 出典:史記(留侯世家)
  • 意味:しっかりとした人たちが既に補佐していて、体制ができあがっていること。「羽翼」は、鳥の羽ことで、鳥の羽のように左右から助けるとの意。
  • 故事:漢の高祖が皇太子を廃しようとしたが、四人の賢者が太子の補佐をしている様子を見て、「太子にはもう羽も翼も出来上がっている。もう廃することはできない」と言って、皇太子の廃位はなくなった。

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満懐信心

  • 中国語:满怀信心   [ mǎn huái xìn xīn ]
  • 出典:曲波(林海雪原)
  • 意味:心の中が自信で満たされていること。自信満々である。「信心」とは、自信、信念などの意。

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又驚又喜

  • 中国語:又惊又喜   [ yòu jīng yòu xǐ ]
  • 出典:兰陵笑笑生(金瓶梅词话)
  • 意味:また驚いてはまた喜ぶ。驚きもし、喜びもすること。

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歪打正着(わいだせいちゃく)

  • 中国語:歪打正着   [ wāi dǎ zhèng zháo ]
  • 出典:清·西周生(醒世姻缘传)
  • 意味:本来は適当ではない方法であるが、幸運にも満足できる結果に恵まれたことの例え。怪我の功名。まぐれ当たり。

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記事:【井に坐して天を観る】 知らぬ間に陥るこの失敗に気づかせてくれたのは

右肩上がりで伸びていたが

 大連に赴任して5年が経過。不断にして懸命の努力もさることながら、中国の当時の急激な経済成長と相俟って、会社の業績もぐんぐんと良くなり、仕事が面白くなってきた。

 業績の右肩上がり状態は、自分が会社を引っ張っているという意識を強くさせ、「満懐信心」、自信満々の充実した毎日が続いていました。

 そんな最中に突如、狭心症に見舞われ、思いもしていなかった20日余りの入院生活を余儀なくされることに。人生で初の入院。しかも慣れない中国の病院に入院し、健康のありがたさを身をもって感じることになりました。

 と共に、入院中、案じることは会社がいったいどうなっているか、という心配です。何しろ、会社の責任者である総経理(社長)が長期に不在状態になっているのですから。

 

ドキドキの仕事復帰

 やっとの思いで快復、退院し仕事に復帰。25日ぶりにドキドキで出社した際に、目の前ではいつもと同じように皆が仕事をしていて、業績も順調でした。懸念は全くの杞憂であり、「又驚又喜」、大きな驚きとそれ以上の喜びのは感動すら覚えました。

 自分一人で会社を切り盛りしている、と思っていたのは、ひょっとしたら自惚れであったのかもしれません。

 

社員達の成長

 考えてみたら、会社自体は設立から既に10年が経過していました。立ち上げ時に入社した中国人社員達も十年選手となり、間違いなく一人前の幹部社員として成長していたのです。

 羽翼已成」と言うことわざように。担当する部門を采配する幹部社員として、総経理を補佐する力をつけてきていたことに、やっと気がつきました。

 中国現地の会社で、責任者たる総経理が不在でも、会社は回っていたのです。

 

病気がきっかけで

 突然の病気、入院といった大きな出来事は、仕事にも生活習慣にも大きく方向転換させるきっかけとなりました。

 思ってもみなかった出来事がトリガーとなって、仕事に対する姿勢も変わりました。社員のみなさんとの接し方も変化しました。見えていなかったことに気がつき、そのことで、幸運にも満足できる結果に恵まれました。

 歪打正着」の結果を得ることができたのです。

 その後の会社の大発展の新しいステージは、この入院から始まったと言えます。

 

何もわかっていなかった

 健康であれば、仕事ができるしもちろん遊ぶこともできます。仲間や友人との交流もいっぱいできます。しかし、体を壊したら何もできません。優先して考えるのは「健康」です。こんな簡単なことに入院するまで気にしたことはありませんでした。

 「人生は太く短く」だといい気になり、自らの健康をおろそかにしたことや、社員の成長に気がつかなかったことは、毎日懸命に努力していたつもりで、実は「何もわかっちゃいない」と言われても仕方ありません。注意すべきは「井に坐して天を観る」に陥らないことです。

 先頭に立って引っ張っていたつもりでしたが、実は古参の社員達に後ろから背中を押されていたのかもしれません。もし突然の発病がなかったら、入院することもなく、社員達の成長に気づくこともなかったと思います。そうであれば、その結果は恐らく短命の駐在で終わっていたことでしょう。

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