小節などには拘らず【時に安んじて順に処す】がおすすめ

植樹して5年後の桜(2015年5月大連)

 

意に沿わない結果が出現したとき、一体どういうことだと詰め寄りたくなる。それでいいのであろうか。かと言って、「時に安んじて順に処す」との処し方は一見して幾らか無気力にも感じます。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

慨然允諾(がいぜんいんだく)

  • 中国語:慨然允诺   [ kǎi rán yǔn nuò ]
  • 出典:杨家将演义
  • 意味:少しのためらいも無く承諾すること。「慨然」は「快く」との意。

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時に安んじて順に処す

  • 中国語:安时处顺   [ ān shí chǔ shùn ]
  • 出典:荘子(内篇·养生主)
  • 原文:安时而处顺,哀乐不能入也(時に安んじて順に処れば、哀楽入る能わず)
  • 意味:時の巡りあわせに安んじて自然の流れに従えば哀楽は無くなる。無理をせず、流れに逆らわない、言わば「自然流」の生き方がよいとの考え方。

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渺無踪影(びょうむそういん)

  • 中国語:渺无踪影   [ miǎo wú zōng yǐng ]
  • 出典:和邦额(夜谭随录·霍)
  • 意味:少しの跡形も見ることができないこと。

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不拘小節(ぶこうしょうせつ)

  • 中国語:不拘小节   [ bù jū xiǎo jié ]
  • 出典:後漢書(虞延传)
  • 意味:小事に拘らないこと。「小節」はつまらない節操のこと。

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撫今追昔(ぶこんついじゃく)

  • 中国語:抚今追昔  [ fǔ jīn zhuī xī ]
  • 出典:平步青(霞外捃屑)
  • 意味:目の前の事に触れて、過去を思い出すこと。

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付之逝水(ふしせいすい)

  • 中国語:付之逝水   [ fù zhī shì shuǐ ]
  • 出典:汤斌(汤子遗书·请旨行取疏)
  • 意味:「逝水」とは流れ去る川の水のこと。水泡に帰す。努力や成果がむだになるとの意。

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二重の区切り目

 経済の急拡大の中国・大連で赴任以来奮闘を続けること10年。その年は自分の還暦でもある。そのふたつの区切り目を何かで記念したいと思いつきました。時は、毎年一度は訪れる桜の季節。

 優美な桜花を眺めて「撫今追昔」と、大連での奮闘を友に偲んでもらえることができれば、これほど光栄なことは無い。

 そんな思いから、大連の地で桜を植樹することを考えついたのです。

 

咲いた桜

 桜の苗木や場所の選定など、解決すべきことについて、大連の友人に相談。自らの人脈を使って大連郊外の植物園を紹介していただいた。

 同行を得て園長に植樹の思いを伝えたところ、「慨然允諾」、快諾を得ました。

 植樹当日は園の職員の方の手助けもあって無事に終了。樹の前には自前で準備した小さな石碑を置き納得の「記念の日」にすることができました。

 そして2年後、後ろ髪を引かれる思いで大連を後にすることになりました。植樹から5年後の写真を大連の仲間が撮影し送ってくれました。濃いピンクの花を見るととても感慨深く、植樹して本当に良かったと改めて感じたのです。

 

桜が消えた

 ところが、翌年、桜が「渺無踪影」と消えたとの思いがけない知らせが届きました。元部下の社員が現地の植物園を訪問したところ、あるはずの場所に桜は無く、記念の石碑もなくなっているというのです。

 どうも、植物園側が木々の再配置のために散在していた桜を植え替え、その際に「私の桜」も移動して、どれだかわからなくなったということのようです。

 そして植樹から9年の月日が過ぎ、紹介をしていただいた大連の友人にお会いする機会があり、事情を話し、植物園長に問い合わせをしていただいたのですが、結局行方はわかりませんでした。

 

潰え去ったロマン

 当初のロマン溢れる熱い思いは、10年もたず「付之逝水」、残念ながら潰え去りました。

 人の気持ちをかくも簡単に消し去られたことに対しては、いささか憮然たる所もありますが、さもありなんということで割り切らざるを得ないようです。

 ただ、植樹をした事実は脳裏に焼き付いています。また、写真にも残してあります。それに、我が家の近くには、植樹した桜と同じような濃いピンクの花をつける桜が植わっています。比較的早く咲くその桜を見て、自身で往時を偲ぶことができそうです。それで我慢することになりました。

 

積極的秘策

 とても残念ではありましたが、元はと言えば、園の好意で実現した記念の植樹。不満の意を唱えるのは「不拘小節」に反する、そういう考えをもつべきなのでありましょう。

 何と言っても、日本人にとってアウエーである中国では、「時に安んじて順に処す」との処し方が得策であるということです。そう言えば幾らか無気力に見えかねませんが、実は、積極的成功秘策なのです。とにかく中国では、無理をしない自然流がよいのです。

 そして、不明とはなりましたが、「大連桜」は心の中ではいつも満開。永遠に忘れることのできない思い出なのです。

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