【小利を見れば則ち大事成らず】 門外漢と無責任な現地化では覚束ない成功

ハクモクレン(白玉蘭)先頭に立って道を切り開く意味が(2022年3月大阪)

コスト削減を行うのは勿論理解できるが、安易な方法を取ることは、むしろ成功から遠ざかると心得るべきではないだろうか。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一無所知

  • 中国語:一无所知   [ yī wú suǒ zhī ]
  • 出典:警世通言
  • 意味:何ひとつわからないこと。ちんぷんかんぷん。

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意を得て形を忘る(得意忘形)

  • 中国語:得意忘形   [ dé yì wàng xíng ]
  • 出典:晋書(阮籍传)
  • 意味:気分が舞い上がって、我を忘れること。

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忍ぶ可き無きを忍ぶ(忍無可忍)

  • 中国語:忍无可忍   [ rěn wú kě rěn ]
  • 出典:官场维新记
  • 意味:耐えるに耐えられない、これ以上耐えられない、との意。堪忍袋の緒が切れる。

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小利を見れば則ち大事成らず

  • 中国語:见小利则大事不成   [ jiàn xiǎo lì zé dà shì bù chéng ]
  • 出典:論語
  • 意味:小さな利益に惑わされては、大きな仕事をやり遂げることができない。

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明哲保身

  • 中国語··:明哲保身   [ míng zhé bǎo shēn ]
  • 出典:詩経
  • 意味:聡明な人は巧みに身を処して、その結果、自分の地位を守ることができる、という意味の褒め言葉。転じて、自分の身の安全を確保するために要領よく立ち回る、との意味。

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記事:【小利を見れば則ち大事成らず】 門外漢と無責任な現地化では覚束ない成功

容認できないその一言

「君を日本に戻せば現地会社は黒字になるよ」と。設立して数年が経過、今だ赤字経営の現地会社を何とか早く収益体制に転換しなければ、と現地で格闘している総経理(社長)に対して、本社が発した言葉。「忍無可忍」、聞くに堪えない暴言以外の何物でもない。

しかし、そこは憤慨はしてもキレてはなりません。サラリーマン、笑って受け流す術くらいは身についています。

 冷静に考えると、わからなくもありません。日本人社員を総経理として現地に派遣すると、給与や住居費、車両費等々の費用は年間2000万円にも達するのですから。

 それに何より、経済成長と共に続いた現地社員の人件費などの高騰により、ビジネス環境は変貌し、プロフィットセンターとしての現地会社の立ち位置も厳しくなる一方。本社がコスト削減を至上命題とするのも理解できます。

 

エイや

 コスト削減のひとつの目玉施策は、総経理を日本から派遣することを止めて、現地の人材を抜擢するという手法。

 総経理を日本から派遣するよりも、現地スタッフに変えた方が費用負担は遥かに低減します。いわゆる「現地化」のひとつのパターン。日本人総経理を帰国させ、現地の優秀と思われる人材を総経理に任ずることです。これが本社経営層に「君を戻すと黒字になる」と言わしめる簡単なからくりです。

 例えば合弁パートナーの人脈を使って外部から総経理人材を招聘する、ということが考えられます。或いは、現地社員の中から総経理に抜擢する方法。更には、日本本社で採用した中国人社員を総経理として現地会社に送り込む、等々の手法があります。

 それらの方法で、エイやと総経理を交代させることでコストカットが実現し、本社では「得意忘形」の様相。

 

脱線して気がつく

「お手柄」を手にしたと自認する本社ですが、そういった現地化には落とし穴が潜んでいることを見逃してはなりません。。

現地でヘッドハンティングした人材は、会社業務には「一無所知」、まったく通じていないことが大きなハンディ。何もわかっていない門外漢と言わざるを得ません。

一方、本社で採用した現地社員は日本語がわかるので便利ではあるが、厳しい競争の中で揉まれていたわけでもなく、こちらは言わば「マネジメント門外漢」。

 そういった「門外漢」に事業成功への淡い期待を抱いたまではよかったものの、その後、気がついたころには、「門外漢」に経営を丸投げした現地会社はとんでもないことに。

 日本本社と同じロゴの看板を掲げてはいるが、中身は似ても似つかぬ会社になってしまった、ということが珍しくないのです。

 表向きは日系企業であるが、企業内管理や経営手法は国内企業、まして利益も出ず。これで果たして満足できるのであろうか。

 

安直では

 現地化ありき、で安易に走ってしまっては中国の事業成功は遠のいてしまいます。

 「日系企業のような国内企業」と化した現地会社の実態を目の当たりにして、ため息をついたとしても、それは、安易な姿勢が生んだ結果。文句は誰にも言えない。

 コストカットのためという名分のもとに総経理を「現地化」するという安易な考えは、「小利を見れば則ち大事成らず」と、大きな果実を手にすることはできないと知るべきです。

 もちろん現地法人の責任者としての資質を備えた人物であれば、その国籍にこだわる必要はありません。それ自体、素晴らしいことですので、外部からの招聘が悪いとも言えません。

 手っ取り早いコスト削減を目指す裏に、もしも本社経営層の「明哲保身」の企みが潜んでいるとすれば何をかいわんや、であります。

 「君が帰国すれば現地会社は黒字になる」などという言葉を発せさせないためには、確固たる業績を早期に上げることが大切であることは無論であるが…

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