【漱石枕流】の言を信じていれば負ける 坐っていては見えない現場実態

大連・中山広場の重厚感漲る大連賓館(2016年10月)※本文とは関係ありません。

 

現地で仕事をしていると、とんでもない言い訳に遭遇することがある。こじつけてでも自分を正当化することがとても上手。しかし、それに負けてはいられない。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

石に漱(くちすす)ぎ流れに枕す(漱石枕流)

  • 中国語:漱石枕流   [ shù shí zhěn liú ]
  • 出典:宋书(宋書)
  • 意味:自分の誤りを認めずに、負け惜しみから理屈の通らない言い逃れをすること。こじつけて自らを正当化すること。
  • 故事:「石に枕し流れに漱がんと欲す」と言うべきところを、「石に漱ぎ…」と言い間違えた。それを指摘され、「流れに枕するのは耳を洗うため、石に漱ぐのは歯を磨くため」と言い訳をした。

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強人所難

  • 中国語:强人所难   [ qiǎng rén suǒ nán ]
  • 出典:唐・白居易(赠友诗五首)
  • 意味:難しいことを人に強いる。無理強いすること。

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身臨其境

  • 中国語:身临其境   [ shēn lín qí jìng ]
  • 出典:三国志(吴志·吴主传)
  • 意味:自らその場に臨むこと。その場に身を置く。

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不聞不問

  • 中国語:不闻不问   [ bù wén bù wèn ]
  • 出典:三侠五义
  • 意味:他人の言うことを聞きもせず、主動的に問いかけもしないこと。無関心なさま。

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記事:【漱石枕流】の言を信じていれば負ける 坐っていては見えない現場実態

びっくりするその理由

 とある日系の大規模工場。正面ゲートの横にある警備室内に設置されている監視カメラのモニターが真っ黒。警備員さんにその理由を尋ねると、曰く「カメラが壊れていて、電源を入れても映らない」と。どうも、ずっと前からこの状態だったようです。

 自分の立場を守ろうとしたいのか、警備員さんは、「故障した時には報告するようにとは、総務部長から言われていない。だから私たちにはミスはない」と言うのです。悪いのは具体的な指示をしない管理者の方だと主張しています。

 それはどう見ても「漱石枕流」、こじつけの正当化でしかありません。

 自分たちの任務を果たすために使う設備が壊れたら、直属上司に報告するのは言うまでも無いこと。しかし、警備員さんは平然とそう言ってのけるのです。

 

言い訳を許す緩さ

 欧米やアジア、それに中国などでは、各企業は「セキュリティオフィサー」と言う名の専門家を配置し、自社の安全面に目を配っています。それだけ会社として安全を重要視しているといえます。

 一方、日系企業の多くは、保安業務は一般的に総務部や管財部門の職掌で、企業経営の中で、それほどの重きは置かれていないようです。いわば片手間仕事。

 そこに派遣された「総務部長」は、保安業務の知識や経験も無い、日本国内ではごく普通の中堅社員。

 そもそも、人事を発令する本社経営サイドにも保安業務に対する認識がそうは厚くないこともあってか、総務部長の職掌に軽く加えただけ。これでは「強人所難」と然程も変わらない。

 海外での基本は、日本人が好きな性善説ではなく性悪説が専ら。日本こそが特殊なのかもしれません。そういう環境で育ち、さらに保安業務の何たるかを理解していない素人の「総務部長」が、現地の警備員を管理するのはそもそも無理な話です。結局、部下の中国人中間管理職に任せっ放し。

 

無関心のトップ

 更に気になるのは、その日系工場の経営層が警備室の実態を、全く知らなかったことです。現場からは故障したという報告は上がってきていないと言うに至っては何をかいわんや、あきれて言う言葉もありません。

 きっと、自社の安全や防犯について会議や朝礼で強調していると思われますが、それはただ口先だけの言葉で社員の心には響いていないと言わざるを得ません。

 むしろ総経理が現場のことには「不聞不問」、無関心であると社員の目に映るようなことになったのでは、さまざまな場面で影響が出ることを知るべきです。

 本社の認識の薄さもさることながら、現地会社の経営を任された総経理として、無責任この上ないという謗りを受けることは免れません。

 

現場に出向く

 ならばと、言い訳上手な彼らに対して、もし皆の面前で大きな声を上げ、それを咎めるようなことをしたとしたら、どうなるでしょう。周囲の社員達の心は総経理から遠ざかる事になり、結局業績の拡大は夢と化します。かと言って、彼らの言い訳を聞き流してしまうと、ますます増長することは疑う余地はありません。

 「自分に非はない」と主張する現地社員に舐められないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

 その大事なポイントのひとつが、総経理が「身臨其境」、自ら現場に出向き、自分の目で実態を見る、ということです。

 自分の問題意識を研ぎ澄まし、いつもは閉まっているドアが開いている、監視カメラのモニターテレビの電源が入っていない、等々本来あるべき状態になっていないことは無いか等々。

 現場の実態を見ると、是正すべきところはどこか、またどういう策を以て行えばよいのか、と色々なことが見えてきます。

 静かなオフィスにいて、部下社員から報告を受けているだけでは、現場のことはいつまで経ってもわかりません。

 部下の言い逃れを防止するためにも、まずは、総経理や日本人経営幹部は自らを正すことから始めなければなりません。現場重視の姿勢は、日本よりも実は中国現地の方が求められます。

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