【算多きは勝ち、算少なきは勝たず】 国慶節休暇が明けたら焦る総経理
サラリーマンとして、最も楽しいことのひとつが、与えられた長期休暇。一人リフレッシュするもよし、家族と過ごすこともよし。しかし、総経理(社長)ともなればそうも行かない…
成功のヒント 中国のことわざ・格言
重き負い釈(と)くが如し(如釈重負)
- 中国語:如释重负 [ rú shì zhòng fù ]
- 出典:穀梁传(昭公二十九年)
- 意味:重荷を下ろしたようにほっとすること。胸をなでおろす。
算多きは勝ち、算少なきは勝たず
- 中国語:多算胜,少算不胜 [ duō suàn shèng, shǎo suàn bùshèng ]
- 出典:孫子
- 意味:勝算の多い方が勝ち、少ない方が負ける。(大して勝算が無いのに「特攻精神」で、それいけとばかりに突っ走ることが間々あります。それでは将の後に続く兵はたまったものではありません)
為す可きこと大いに有り(大有可為)
- 中国語:大有可为 [ da you ke wei ]
- 出典:李宝嘉(文明小史)
- 意味:仕事や事業など、やりがいがあること。前途有望であること。大いになすべきことがある,
話 投機せず(話不投機)
- 中国語:话不投机 [ huà bù tóu jī ]
- 出典:元・王子一(误入桃源)
- 意味:話がかみ合わないこと。「投机」とは」意見が一致すること。
記事:【算多きは勝ち、算少なきは勝たず】 国慶節休暇が明けたら焦る総経理
待ちに待った長期休暇
十月一日は中国の建国の日である国慶節。この日から一週間の長期休暇となり、春節と並ぶ黄金週間。
現地社員達も待ちに待った休暇であると共に、中国に駐在する日本人総経理(社長)にとっても「如釈重負」、日頃の重責や生活のストレスから離れ、暫くはホッとすることができる、とてもありがたい休暇なのです。
みんな、思い思いに休暇を過ごし、休み明けには、少々疲れ顔で仕事が再開。しかし、現実は休みボケ状態。すべてのメンバーが仕事に復帰し、通常の全力投球体制に戻るのは十月半ば。
そして、正気に戻った総経理が、はっと気がつくことが。
そう、中国では一月から十二月が会計年度なので、国慶節休暇が明けたら、二カ月余で年度末がやって来るのです。あっという間です。
かみ合わない両者
十月後半には、年間予算に対する達成見通しを窺い、その上で十二月末までの追い込み策を実行に移す大事な時期です。もちろん、それは総経理に課せられた任務です。
総経理自身も国慶節の休暇はゆっくり過ごし、リフレッシュすればよいのですが、休み明けには、一般社員と同じように休暇ボケに陥っていたのでは、年度内の追い込みが大変なことになりかねません。
しかし、そこに面倒くさい問題が横たわっています。それは、「話不投機」の本社の存在です。
別に反目し合っているわけではありませんが、どうにも話が今ひとつかみ合わず、イラつきます。日本本社と現地の両者の気持ちはなかなか揃わないのです。
それもそのはず、日本本社の会計年度は、四月から翌年三月。ですから、秋段階では日本本社の年度末はまだまだ先の話。ですから、中国現地のことには今ひとつピンと来ないのも無理はない。
そんな日本本社はさておいて、結局は、現地の責任者である総経理は、十二月末まで、自力で推し進める他はありません。
やりがいのある職務
本社から与えられたミッションを果たすべく日々努力精進し、目の前の仲間である現地社員達とその家族に、幸福を享受してもらうという重い任務を総経理は帯びています。
そのためには、ピントの合わない本社は頼らず、現地の社員達の共同団結の力を以て、自力でやった方が業績は上がり、達成感が得られるというもの。
現有のリソースやパワーをもって、如何に戦えば勝算を見出すことができるのか、不足する所はどこか、どう対策するのか、等々を綿密に分析し勝つべくして勝つ。
これが現地会社の総経理として任に当たる者として最大の責務です。現地会社の責任者たる総経理の仕事は、斯様に「大有可為」、やりがいがあるのです。
最高に面白い責任
但し、如何に本社は頼らず自力でやろうとはいっても、やみくもに突っ走るのでは危なくって仕様がありません。
孫子が残した「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」という言葉を、自らの仕事に生かさねばなりません。
年度末までの僅か二ヵ月半ですが、ゴールを目標ラインとして、そこに到るまでの策を冷静に定め、ラストスパートを利かす期間であり、同時に、その後にやってくる来年度への助走期間でもあります。そのような極めて重要な期間、総経理は国慶節休暇中にそれらの企てを済ませて、休暇が明けるといち早く立ち上がらねばならない責務を負っているのです。
上から言われたとおりにやるだけの日本の部門責任者とは全く異なる、しかし最高に面白く、またやりがいのある「責任」ではないでしょうか。