【苟に日に新たに、日日に新たに】 これこそ長期在任の緩みを克服する秘訣

大連・友好広場のモニュメント(2016年10月)

 

総経理(社長)の在任期間が長くなると、どうしても緩みが出てくる。それは会社組織全体に伝搬することが避けられない。すると…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

完膚無き体(体無完膚)

  • 中国語:体无完肤   [ tǐ wú wán fū ]
  • 出典:陈寿(三国志·魏志·邓艾传)
  • 意味:全身が傷だらけであること。完膚なきまで、との意。「完膚」は傷の無い肌のこと。

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剣は砥(と)を待ちて而る後に能(よ)く利(り)なり

  • 中国語:剑待砥而后能利   [ jiàn dài dǐ ér hòu néng lì ]
  • 出典:淮南子
  • 意味:剣は砥石にかけて研ぎあげて鋭い切れ味が生まれる。人間も同様で自分を立派な人間に育て上げるためには、普段の修養を怠ってはならない。リーダーたる者は自分を砥石にかける労力を惜しんではならない。

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重起炉灶(ろそう)

  • 中国語:重起炉灶   [ chóng qǐ lú zào ]
  • 出典:北伐途次
  • 意味:かまど(炉灶)を築き直すこと。挫折した後、新規まき直しすることの例え。再出発すること。

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手を游せ閑を好む(游手好閑)

  • 中国語:游手好闲   [ yóu shǒu hào xián ]
  • 出典:後漢書(章帝纪·元和三年诏)
  • 意味:ぶらぶら遊んでいて働かないこと。

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苟(まこと)に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり

  • 中国語:苟日新,日日新,又日新   [ gǒu rì xīn, rì rì xīn, yòu rì xīn ]
  • 出典:大学
  • 意味:一日努力し、一日一日重ねるごとに新たになるよう努力し、更に毎日新たにし行く。自分を新たにする努力を毎日続けなければならない、との意。

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記事:【苟に日に新たに、日日に新たに】 これこそ長期在任の緩みを克服する秘訣

緩みが失敗の因

 日本国内の地方支社責任者として、在任期間が5年を経過し「長期政権だ」と自慢していたが、突然、部下の不祥事が三件連続して勃発。管理責任を問われ、あっけなく撃沈。役職は解任、閑職に回された。

 体無完膚」に打ちのめされ、サラリーマン生命も遂に尽きたとさえ思えました。

 在任期間が長くなり、いつの間にか心が緩み、緩んだ心に、まるでサイレントキラーのように巣くっていたものが、一気に噴き出したのだと言えます。責任者の緩みは間違いなく組織に伝搬すると思わねばなりません。

 

再起の赴任

 その後、先輩諸氏の励ましにより、サラリーマンとして首の皮一枚で命がつながりました。

 そして得た中国駐在という再起へのチャンス。赴任するときには、上司から「中国で三年ほど頑張ってこい」と言われ、「重起炉灶」の赴任となりました。

 上海、大連と結局思いもよらず14年半という長期の駐在となったのですが…

 

のらりくらりで

 現地に進出している日系企業の中には、総経理(社長)の任期を三年程度に設定している企業が少なくありません。

 しかし、習慣や環境が日本とは大きく違う中国では、そこに慣れるだけで一年はたっぷりかかります。自分のイメージどおりの仕事ができるのには最速でも三年はかかるというのが実感です。三年任期であれば「さあこれから仕事をするぞ」という時に帰国、交代ということになってしまいます。

 すると、またもや中国ど素人の後任がやってきて環境に慣れる所から始めることになります。

 どうせ三年すれば帰国することになると思っている総経理、三年もすればまた交代するのだから、真剣に仕事をする気になれない現地社員。どちらも、「游手好閑」、のらりくらりの状態では、業績の伸びは大きくは期待できません。

 

緩みへの対策

 三年程度で交代するよりは、中国で経験を積み、現地に慣れた総経理の方が、現地社員の積極性を引き出し、その結果、会社業績が向上する事になると言えます。

 一方、在任期間が長くなるとマンネリ化が懸念され、緩みが生じることが心配されます。

 周期的に短期で交代するのがよいのか、或は長期がよいのか悩ましい問題です。

 ただ、言えることは「苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」との格言の実践が、総経理には特に求められるということです。在任期間が長くなると、人はどうしても脇が甘くなる。これを緩みを戒める格言です。

 振り返ってみると、中国に駐在した約15年の間に、三回ほど危なかったことがありました。いずれの時も「あ、これちょっとヤバいかな」と途中で気がつき、最悪の事態に至る前に軌道修正をすることができました。そして再び脇を締め直すことができたのです。日本国内での大失敗の経験は生かされました。

 

自分磨き

 中国の特殊性を考えると、会社経営にとってベストプランは、「長期にわたって在任し、且つ緩みがない」状態だと言えます。

 つまり、赴任した総経理は、ある程度の中長期的な視野に立ち、現地の習慣や風土に慣れ親しみ、同時に緩みのない組織運営に当たるのが、求められるところです。

 それを如何にして実現するのか?

 剣は砥を待ちて而る後に能く利なり」とあるように、自分を砥石にかけるが如く、普段から自分を高める努力を惜しみなく実行しなければなりません。

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