【不拘一格】 自分の経験・習慣に拘るのもほどほどに 環境も習慣も違う

大連・労働公園のはす池(2017年11月)

 

思いのほか上海の夏は暑い。外回りを主とする営業社員は、暑さとも戦わなければなりません。そこで気がついたちょっと変な光景…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一格に拘らず(不拘一格)

  • 中国語:不拘一格   [ bù jū yī gé ]
  • 出典:龚自珍(己亥杂诗)
  • 原文:我劝天公重抖擞,不拘一格降人才。(我天公に勧む、重ねて抖擻して、一格に拘わらず、人材を降せと) 意味は、私は天子様にお願いしたい。すべての利害を払いのけて身分などにはこだわらず、有為の人材を登用するべきだと。
  • 意味:決まった形式にこだわらない、との意。

»記事へ

 

気勢洶洶(きせいきょうきょう)

  • 中国語:气势汹汹   [ qì shì xiōng xiōng ]
  • 出典:荀况(荀子·天论)
  • 意味:勢いがすさまじい様子。

»記事へ

 

荒誕不経

  • 中国語:荒诞不经   [ huāng dàn bù jīng ]
  • 出典:史记·孟子荀卿列传
  • 意味:でたらめで理屈に合わないこと。でっちあげ。

»記事へ

 

舟を刻み剣を求む

  • 中国語:刻舟求剑   [ kè zhōu qiú jiàn ]
  • 出典:吕氏春秋(察今篇)
  • 意味:舟に印を刻んで、ここから剣を落としたと主張したという故事。そんなことをしても何も解決しないのに、旧態に拘泥し改めないことの例え。

»記事へ

 

惟命是聴

  • 中国語:惟命是听   [ wéi mìng shì tīng ]
  • 出典:左傳(宣公十二年)
  • 意味:言われたとおりに、唯唯諾諾と従うこと。何でも言いなりになること。

»記事へ

» 成功の中国ことわざ・格言リスト

 

記事:【不拘一格】自分の経験・習慣に拘るのもほどほどに 環境も習慣も違う

理解できない光景

 夏の上海は日本と同じように梅雨があり蒸し暑い天気が続きます。そんな時季に赴任し、社内で目にした、ちょっと変な光景とは…

 外回りから会社に帰ってきた営業社員が、汗を拭いながらおもむろにネクタイを着けているのです。戻った時には着けていなかったのに。

 そこで彼らに聞いてみました。「皆さんはお客さんを訪問するときにネクタイは着けていないのか。何故、会社に戻ってからネクタイを着けるのか」。 出かけるときにネクタイを着けて、帰ってきたら外すのならわかるが、社員達の行動はその逆。それでは「荒誕不経」、理屈に合わないと。

 

外に出て分かった

 その問いに対して彼らは「気勢洶洶」、何を言ってるのかという雰囲気で、「この暑さの中でバスに乗って移動する。そんな時に、ネクタイを着けている方がおかしい! 人から気がふれたのではないかと思われる」というのです。

 つまり、社内ではネクタイをしていないと総経理(社長)から怒られるので、「惟命是聴」、言われたとおりにハイハイとばかりに、会社に戻ったら仕方なくネクタイを着けるというのです。

 当時のバスは冷房無しが標準で、冷房付きの場合は、運賃が少し高いのです。実際に冷房無しのバスに乗ってみましたが、彼らの言っていることも無理はないことがわかりました。

 冷房が効いたオフィスにいたのでは、外回りの彼らの苦労に気がつかなかったということです。更には、この暑い季節にネクタイを要求するのは、我が社と香港系の銀行だけだ、と揶揄されていたようです。

 

新たな発想で

 しかし、だらしない恰好で大事な顧客を訪問するのも困ります。そこで、一策を案じました。

 真夏にネクタイを締めて外回りをせよなどと言った、どうせできないことを要求しても意味がないので、思い切って、ロゴをあしらったTシャツを作ることにしました。夏場限定のユニフォームです。内勤者も同じTシャツを着て暑い夏を乗り切ろうと訴えました。このアイデアは社員の皆さんに結構受けました。会社施策は様々ありますが、基本は、社員に寄り添った施策であるべきだと言えます。

 当時日本では、真夏でもスーツにネクタイが当たり前。ですから中国に赴任しても日本と同じことを要求したのも頷けます。

 しかし、それは「舟を刻み、剣を求む」、旧態に拘泥し改めないことと同じで、愚行でしかありません。

 蒸し暑い上海の夏にネクタイ着用は似合いません。言わば、上海では日本よりもずっとずっと前からクールビズをやっていたということです、かね。

 

邪魔になるかもしれない成功体験

 日本本社から派遣され中国に赴任する人の中には、日本での成功体験を持つ人が少なくありません。激しい競争の中で勝ち取った成功ですから、そのことに自負を持つのは問題ありませんが、それに固執すると失敗することになるかもしれません。

 何せ日本とは習慣も考え方も大きく異なる中国では、「一各に拘らず」、決まった形式にこだわらないのがよいのです。

 そのためには、組織のすみずみまで目を配り、現場の状況を自らの目で見て、成功を勝ち取る具体策を必死に考え、そして実行することに尽きると言えます。誰にも考えつかないような奇想天外なことがちょうどいいのです。

»現場目線の成功ヒント

お問い合わせ等はメールをご利用ください。info@jita-tomo.net