【人と与にするには備わらんことを求めず】 只々感服 それ よく考えたものだ

大連瀋陽間を疾走する高鉄(2018年5月)

 

大連から瀋陽へは約400キロ。高速鉄道が開通する前は、バスや特急列車など四時間の出張旅にはいろいろな出来事が…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

感恩戴德(かんおんたいとく)

  • 中国語:感恩戴德   [ gǎn ēn dài dé ]
  • 出典:三国志(吴志·骆统传)
  • 意味:心からありがたく思って感謝すること。感謝感激する。

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欽佩已まず

  • 中国語:钦佩不已   [ qīn pèi bù yǐ ]
  • 出典:官场现形记
  • 意味:感服することが已まないこと。感じ入ること。

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人と与(とも)にするには備わらんことを求めず

  • 中国語:与人不求备   [ yǔ rén bù qiú bèi ]
  • 出典:書経(尚経)
  • 意味:他の人に接する時、相手の人に「完全」を期待してはならない、との意。

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略勝一籌

  • 中国語:略胜一筹   [ lüè shèng yī chóu ]
  • 出典:聊斋志异·辛十四娘
  • 意味:わずかに勝っていること。

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感謝的心

  • 中国語:感恩的心    [ gǎn'ēn de xīn ]
  • 台湾出身の歌手、欧陽菲菲(オーヤン・フィフィ)のヒット曲のタイトル。1971年、日本デビュー曲の『雨の御堂筋』が大ヒット。

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記事:【人と与にするには備わらんことを求めず】 只々感服 それ よく考えたものだ

終点の瀋陽で降車したら

 大連発瀋陽行きの高速バス。約四時間のバス旅。

 瀋陽のバスターミナルに到着し、外に出たところで待ち構えていた中国人のおばちゃんが、使用済みの乗車券をくれと言っています。こんなものを貰っていったいどうする? 乗車券を集めるのが趣味なのか、はたまた…

 実は、使用済みの乗車券を貰って、それを必要とする人に転売するのだそうです。仕入原価ゼロの商売。

 出張などの費用精算の際に、使用済み乗車券を領収書の代わりに使うのが一般的。そこで、その「仕組み」を活用して、おばちゃんたちは売り上げを手にし、それを買った人はカラ出張の証拠書類として重宝する。そんなからくりでした。

 いやはや「欽佩已まず」、よくぞそんな事を思いついたもの。只々感服。

 ついでながら、本当に出張した時には、下車駅などの改札出口で、係員が確認後にその乗車券を返してもらわなければなりません。これを忘れると、会社の財務担当者から叱られることに。

 

特急の個室でイライラ

 大連瀋陽間は2012年に開通した高速鉄道が何といっても最も速くて快適。それ以前の移動手段は、高速バス以外にも、会社の車、飛行機などがありますが、最もらくちんであったのが特急列車の寝台コンパートメント。

 個室に二段ベッドが二つあって定員は四人。朝の八時ごろに大連駅を出発して、昼頃に瀋陽に到着。その間約四時間、寝台に寝転がっていられるのです。

 ただ、見知らぬ中国人三人と狭い個室で四時間過ごすのは結構きつい時もあります。

 例えば、瀋陽に到着するまで約4時間、他の乗客にはお構いなしに電話をかけまくる中国人の乗客。それも、「俺は今から瀋陽へ出張する。そのあと長春と北京を回って〇〇日に大連に戻ります…」と、そればっかりをいろんな人に、まるで録音データを再生してでもいるかのように、延々と電話している人がいました。

 きっと、当時は遠くに出張すること自体が、他人に自慢できるステータスだったのかもしれません。そんな場面に居合わせるともう最悪。イライラがつのります。

 しかし、よく考えてみると、自分だって大したことのない人間なのだから、「人と与にするには備わらんことを求めず」と、同室の人に完全を求めるのは如何なものか、ということですかね。イラついた気持ちが和らぎ、寛容の心が湧いてきます。

 

ほっこりも

 一方で、ほのぼのとすることに遭遇することもありました。小さな子供とおばあちゃんの二人旅。

 おばあちゃんは、子供を寝かしつけようとして、「早く寝なさい、でないと警察が来るよ」と。昔の親はよくそんなことを子供に言ってましたよね。

 しかし、その子供は、「おばあちゃん、僕を騙さないでよ」って。子供にはおばあちゃんの一言が脅し文句だとわかっていたようです。どうも子供の方が「略勝一」、一枚上だったようです。でも、微笑ましい光景にホッとしたことがありました。

 

忘れてはならない

 意外と、と言えば語弊がありますが、高速バスが最も静かで快適に移動できます。

 そのバスは虎のイラストが描かれた「虎跃快客」という名の高速バス。一人掛けの列と二人掛けの列があり、一人掛けを選べば隣を気にせず、リクライニングさせてゆったりと座れ、よく眠れるのです。

 このバスは現地の日本人の間では通称「虎バス」と呼ばれていて、結構人気がありました。

 で、この「虎バス」、終点に近づいたころ、いつも「感恩的心」というタイトルの曲が車内に流れます。

 「どんな苦難にも負けないで、運命にも感謝し、恩義を大切にする」そんな感じの歌詞なのですが、なかなかいい曲でメロディーが心に入ってきます。

 バス会社が乗客に「感恩戴德」の意を表した、といったところです。

 今では、高鉄(新幹線型の高速鉄道)がはるかに便利で、当時のような情景はなくなりました。何と言っても大連瀋陽間が最速約2時間。この高鉄、静かで乗り心地は最高です。惜しむらくは、電話の音声は相変わらず。高鉄の列車は素晴らしく綺麗になりましたが、乗っている人は以前と何ら変わりないことですかね。でも考え方によればこれこそが、今も残る昔の情緒ですね。

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