【色 人を迷わさず 人自ら迷う】 中秋の名月 天空で餅つく兎に学ばねば
旧暦8月15日は中秋の名月。中国では中秋節です。月では兎が餅をつく、と言われるのは日本。中国では不老不死の薬を作っているのだそうです。この兎、実は遠回しに諸氏に警告を発しているのだとか…?
成功のヒント 中国ことわざ・格言
色 人を迷わさず 人自ら迷う
- 中国語:色不迷人、人自迷 [ Sè bù mí rén, rén zì mí ]
- 出典:明心宝鉴
- 意味:色欲が人を迷わせるのではなく、人が自分で迷うのである。
兎子 窩辺の草は喫せず
- 中国語:兔子不吃窝边草 [ tù zi bù chī wō biān cǎo ]
- 出典:高陽(胡雪岩全传·平步青云)上册
- 意味:兎は巣のそばの草は食べない。転じて、悪党は自分の家の近くでは悪事を働かない。巷間言われているのは、身近な異性には手を出してはならない、との意。
財を以て交わる者は、財尽くれば交わり絶える
- 中国語:以财交者,财尽而交绝 [ yǐ cái jiāo zhě, cái jìn ér jiāo jué ]
- 出典:戦国策(楚策)
- 意味:財産目当ての交際をする者は、相手の財産が無くなれば交際が途絶える。実はこの後に、「以色交者,华落而爱渝」という言葉が続きます。この意味は、相手の美しさなどの色欲で交際する者は、相手の美が衰えれば寵愛が他人へ移る、との意。うわべだけの交わりは「財」にしても「色」にしてもはかないものです。
美人計
- 中国語:美人计 [ měi rén jì ]
- 出典:三十六計
- 意味:美人計(びじんけい)は兵法三十六計の第三十一番目の戦術。色仕掛けで相手の戦意を蕩かせてしまう計略。勢いのある相手と正面からぶつかり合うのは愚策であり、強い敵には美人を献上するのが良いという計略。美人を献上して敵将をこれに溺れさせれば、その敵将の野心や攻撃心を挫くことができる。また、土地や財物と違い、味方に負担がかからない。
- 春秋時代末期に越が呉に滅ぼされそうになったとき、呉王の夫差に対して越の范蠡が美女西施を送り、やがて逆に呉を滅ぼしてしまったという故事。
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ハニートラップの危うさ
総経理(社長)の周辺には時として、何かの目的を隠して近づく人がいます。中でも女性が近づいてきたら…
外交官でもない一民間人である総経理に、ハニートラップを仕掛けられることは無いとは思います。が、それに近いことは十分にあり得ることなのです。例えば、国に申請する何らかの書類に会社の印鑑を押してほしいなど。
どんなに小さな会社であっても、部下社員に対しては絶対的な権限を持っているのが総経理。その故か、目的を隠して近づいてくる。無防備の総経理が気づいたときにはすでに遅し…
美女を献上して敵の力を挫くという「美人計」なる作戦が、古代中国の兵法書である「三十六計」にもある、れっきとした戦術のひとつなのです。
減収、減益等経営上の問題であればまだしも、まったく別のところでの失敗は大きな悔いが残ります。
寂しい勘違い
そんな心配もしなければならない日本人総経理。せめてアフターファイブは気を許したいとカラオケへ。カラオケと言っても歌うのはついで。メインは同席して接待してくれる若くてきれいな女性との語らい。そこでは日本で梲(うだつ)の上がらないおじ様たちも結構モテるんです。
しかし、彼女たちの目的は、もちろんおじさまではなく、おじさまが持っている財布の中身。そこを誤解してしまうことが間々あるようです。
寂しいことに中国には「財を以て交わる者は、財尽くれば交わり絶つ」とのことわざが。所詮はサラリーマン、自分が使えるお金にも限度があり、枯渇すればそこで終わりなのです。金の切れ目が縁の切れ目。勘違いが原因で、会社の金に手をつけるなんて馬鹿なことにはならないよう自覚したいものです。
兎の警告
今の時代、中国でもセクハラは大きな問題として提議されます。日本人が中国の会社で不用意にもこれをやってしまうと、場合によっては帰国を余儀なくされたりするなど、中国でビジネスを成功させるという本来の目的は吹っ飛んでしまいます。絶対に慎むべきは社内での軽率な言動です。
「兔子不吃窝边草」ということわざを覚えておいた方がいいぞ、という中国人の友人。聞けば、「兎は自分の巣穴の周りの草は食べない」という意味だそうな。曰く、悪党は犯行がばれるのを恐れて自分の家の近くでは悪事をはたらかない、というのが本来の意味だと。それが転じて、身近の女性に手を出してはならない、という意味で使われているのだそうです。つまり、彼は、社内の女性社員には決して手を出すな、と言いたかったようです。
秘書は男性社員に限るとの信念(?)を持っていたある一流日系企業の総経理。スケジュール調整など秘書を必要とすることは理解できます。他方、地方出張などにも同行する機会があるでしょうから、無用の誤解を招かないようにとの自衛策であったようです。
迷うべからず
兎はなかなかの利口者で、時にはズルいとさえ言われることわざもあります。満月の中で餅をつく兎を愛でながら、巣のそばの草は食べない地上の兎を見習って、よくよくご用心あれ! 天空の兎はそんな警告を発しているのかも。
中国古来の格言によれば、「色、人を迷わさず人自ら迷う」とあります。いとも簡単にトラップにかかる原因は自分自身にあるというのです。おじ様方の助兵衛根性がその原因でありましょう。
そんなトラップに引っかかり強制帰国の憂き目に会ったのでは、その後のサラリーマン人生に陽は当たりません。決して油断はできないということです。用心するに越したことはありません。