人治の色濃い社会 心強い【左膀右臂】と人脈が成否を分ける

大連・中山広場(2018年5月)

 

がちがちの法治の環境で仕事をしてきた日本人にとっては、制度も習慣も大きく異なる中国のやり方に馴染むにはなかなかたいへん。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

権衝利弊

  • 中国語:权衡利弊   [ quán héng lì bì ]
  • 出典:贵州新区工作的策略
  • 意味:利害を計り比べること。

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根深蔕固

  • 中国語:根深蒂固   [ gēn shēn dì gù ]
  • 出典:老子
  • 意味:根が深く蔕(へた)が固いこと。基礎が堅固で揺るがないことの例え。

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左膀右臂(さぼううひ)

  • 中国語:左膀右臂   [ zuǒ bǎng yòu bì ]
  • 出典:凌叔华(古韵)
  • 意味:左上腕と右の腕。転じて有能で頼みとする助っ人のこと。片腕、右腕。

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掌ひとつ 拍(う)てど響かず

  • 中国語:一个巴掌拍不响   [ yī gè bā zhang pāi bù xiǎng ]
  • 日本語表記:一個巴掌拍不響
  • 出典:红楼梦
  • 意味:手のひらひとつでは、手をたたいて音を出すことができない。つまり、協力者を失って孤立したのでは何もできないということ。

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別に用心有り

  • 中国語:别有用心   [ bié yǒu yòng xīn ]
  • 出典:二十年目睹之怪现状
  • 意味:ここでの「用心」は下心、魂胆の意。下心があること。他に打算があること。

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記事:人治の色濃い社会 心強い【左膀右臂】と人脈が成否を分ける

簡単には揺るがない

 中国は広大な国ですから、地域によっては経済発展状況にも差があり、習慣や考え方にも違いがあります。従って、法律や規定の運用はそれぞれの地方で幅があるのが現実。そして法を運用しているのが各地の地方政府であり「人」ですから、「中国は法治国家だ」といっても結局、傍からは人治の色が濃く見えるのです。

 考えてみれば、三千年とも四千年ともいわれる歴史をもつ中国が、法治国家と言われるようになって僅か数十年。長い歴史の中で、その時代時代で受け継がれてきた考えや習慣は「根深蔕固」であって、そう簡単に揺るぐことはありません。

 むしろ、人治の部分にこそ、事業に関わる者としてのある種の面白さがあるように思います。こうならば、こうしよう、という柔軟な考えを持てない、頭の固い経営者には厳しいかもしれません。

 

近寄ってくる下心

 がちがちの法治の環境で仕事をしてきた日本人には、中国のやり方は馴染めないでしょうから私にお任せを…、と言い寄ってくる現地社員が時にいます。

 確かに彼の言うように日本から派遣された新米の総経理(社長)にとっては、わからないことだらけ。法律や規定によって判断することは勉強すればできるでしょうが、そこに「人治」が加わるともう無理です。驚いたり、あり得ないと思える理解不能なことが少なくないのですから。しかし、そうであっても彼を頼ってみようとするのはバカ総経理の誹りを免れません。

 有用心」、何らかの下心があって近寄ってきたという可能性がプンプン臭います。言い寄ってくる人が、もしこの類であったなら、総経理にとっての結果は悲惨なものになりかねません。総経理たる者は、よくよく脇を締めてかからねばなりません。

 もちろん、総経理が自分で判断すべきことを丸投げするのは、責任放棄に等しい愚行ですから論外です。

 

協力者が必須

 とはいうものの、現地事情を理解しようともせず、日本国内での自らの成功体験をもって、人治の社会を乗り越えようとしたってそれは無茶な話。

 一个巴掌拍不响」、ひとつの手のひらでは、手をたたいて音を出すことができない。つまり、自分の足りないものを補ってもらう立場の、協力者が不可欠です。野心を隠して言い寄ってくる輩などではなく、気の置けない協力者が必要です。

 人治が色濃い社会では特に人脈があるのと無いのでは、ビジネス展開や発展速度が大きく異なってきます。会社の方針を定め、政府の関連部局とのリレーションシップを保持し、安心して会社業務を展開できる状態に保つためには人脈が欠かせないのです。

 

有能な部下

 そして社内には、「左膀右臂」の部下が必要です。その土地に精通した現地人材の存在は、人治の社会で外国人がビジネスを展開する上で、足りないものを補ってくれる存在です。社内に信頼できる自身の右腕を作り、そこから現地の政府系の人脈を広げていくのが現実的です。

 そうして開拓した人脈を例えば表の人脈とすれば、合わせて裏側の人脈を持ちたいものです。これは総経理自身が、社内の「片腕」に頼らず独力で直接開拓した人脈。社内には知られない、いわば社外ブレーン的な人。経営上の様々なヒントを得ることができて、ありがたいことが少なくありません。

 また、個人的な社外人脈を持つと、何かの強い人脈があるらしいから、うかつに取り入ろうとするのは得策ではない、と周囲に思わせるのに非常に効果的。

 

人治にも対応

 どこの国にもあるカントリーリスク。前触れも無く突然の法律規則の変更に遭遇した時には、その都度対応をしなければなりません。時にはたった一枚の通知文書によって、会社存続の危機に見舞われることだってあり得るのです。

 そんな、ただならない一大事が突然降ってくるかもしれない状況下では、会社や社員を守るために不可欠なのが社外人脈。これは、人治色の濃い中国での成功戦略の内のひとつです。

 法治だ人治だと言っても、「権衝利弊」、それぞれの利害を秤にかけて比較し、現実に対応する。

 いざという時に力になってくれる人脈を作ることは、味方を増やすことであり、安心して自身のビジネスを展開することができるようにするためのものでもあります。

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