【満は損を招く】 リーダーが却ってボトルネックになってはいないか

大連・労働公園から望むビル群(2017年5月)

 

総経理(社長)やリーダーは、自分がいないと会社は停滞すると思う。しかし、その考えは果たしてどうだろうか。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

羽毛豊かにして満つ

  • 中国語:羽毛丰满   [ yǔ máo fēng mǎn ]
  • 出典:杜诗言志
  • 日本語表記:羽毛豊満
  • 意味:小鳥の羽毛が成長し生え揃った。転じて、既に実力が強大になり、一人前になったとの例え。

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蛇を画くに足を添える

  • 中国語:画蛇添足   [ huà shé tiān zú ]
  • 出典:戦国策(齐策二)
  • 意味:蛇の絵を画く時に、足を付け足す。余計な付け足しをすることの例え。

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願慮重重

  • 中国語:顾虑重重   [ gù lǜ chóng chóng ]
  • 出典:孙犁(文事琐谈)
  • 意味:色々と気を揉むとの意。「顾虑」は心配する、懸念すること。「重重」は幾重にも重なり合うこと。

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満は損を招き、謙は益を受く

  • 中国語:满招损、谦受益    [ mǎn zhāo sǔn, qiān shòu yì ]
  • 出典:書経(大禹谟)
  • 意味:自惚れや慢心は損をまねく 謙虚であると利益を受ける。これは天の道理というものだ。

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禍に因りて福と為す

  • 中国語:因祸为福   [ yīn huò wéi fú ]
  • 日本語表記:因禍為福
  • 出典:史記(管晏列传)
  • 意味:悪いことが良いことに変化すること。

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記事:【満は損を招く】 リーダーが却ってボトルネックになってはいないか

突如の発病

 大連に赴任し5年目。会社内の掌握も進み、市場の様子も見えてきて、業績の拡大にも手ごたえを感じていました。中国全体の経済も成長の一途。さあ、これから勢いに乗って行くぞ、と思った矢先、自身の体調の不調が。

 人間は生身、体調が良くないときもあるだろう、という程度で相変わらず仕事に励んでいたところに、突然の心臓発作が。

 現地の病院に入院を余儀なくされ、治療が続く中で気になるのは、自分の体が今後どうなるのかという不安と共に、会社の様子です。

 願慮重重」、気がかりなことが幾重にも重なり、気を揉む入院生活が続きました。

 

退院後復帰の驚き

 それもそのはず。当時の中国の企業は、総経理(社長)にすべての権限を集中させ、何から何まで社長自身が決裁するのが一般的。総経理は会社の最高権力者で、総経理の指示が無くては何もできません。例えば、総経理が出張中は少額の支払いすらも、できないと取引先から断られることもあるのです。

 会社の業績はどうなったか、社内はきちんと管理されているか、等々心配をしながら治療を続け、二十日余りの入院を経て退院。久々に出社した日、会社の現実を目の当たりにしてびっくり。

 社員の皆が何も変わらず働いているではないか。オフィスには何の違和感も無く会社は動いていて、しかも、業績もいつもと何ら変わっていませんでした。

 羽毛豊かにして満つ」と言われるように、赴任した五年前には未熟であった社員達ですが、いつの間にか毛が生えそろった鳥のように、一人前の堂々とした幹部社員に育っていたことにはたと気がつきました。

 

余計なこと

 入院する前は、誰よりも早く出勤し、誰よりも遅く退社する。土日には自室で持ち帰った仕事をこなすことも厭わず。

 自分がいないと会社は停滞してしまう、と考えていました。どうもその考えは間違っていたようです。社員達が知らず知らずに育っていたことに気がつかなかった。これは「画蛇添足」と、余計なことをしたものだ。

 考えてみれば、会社には部門ごとにそれぞれ十年選手の現地社員が責任者として配置されていたのですから、それぞれが責任をもって運営すればよいことです。

 そこで、足りない所は総経理が補い、或は指導するというふうに幹部社員である責任者を信頼して任せることで、自主性、責任感を深めてもらうように、マネジメントスタイルを変更しました。

 

病気が原因で

 突然の病気入院という禍があったことで、会社運営に対する考え方が大きく変わり、その結果、幹部社員達の仕事に対する自覚が深まりました。彼らが、自主的に組織を牽引し、業績の飛躍的拡大という良い結果に結びつくことになったのです。

 これこそが、史記にある「禍に因り福と為す」ということわざ。病気入院に感謝!

 

満と謙

 何十年も前の時代ならいざ知らず、この変化の激しい現代においては総経理が、会社運営のすべてを担うなどということは到底不可能です。そんなことにこだわっていれば、会社の発展は望めません。

 自分がいなければ会社は回らないという考えは、自惚れ慢心であることに自らが気づかねばなりません。結果的には、社員達の成長を自らが阻害する、ボトルネックにさえなりかねません。

 総経理などのリーダーは、「満は損を招き、謙は益を受く」との言葉を、深く心すべきでありましょう。

 今の総経理は、多くの車両を引っ張る機関車ではありません。新幹線の運転手のような役割が例えとしては良かろうと思います。総経理とは、常日頃から各車両のモーターを点検整備する専門家なのです。それが奏功すれば、運転手のスイッチ操作ひとつで、皆が心を合わせ一斉に走り出します。結果は自ずと見えてきます。

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