【理直気壮】 中国には有るのか負けるが勝ち とにかく負けられない議論
何としても相手の理解を得なければならないときの議論。絶対に負けてはならない議論を敢行する時には、論理の組み立てとともに必要なことは…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
侃侃(かんかん)として談(かた)る
- 中国語:侃侃而谈 [ kǎn kǎn ér tán ]
- 出典:論語
- 意味:「侃」は剛直。憚ることなく議論すること。侃侃諤諤。
退くを以て進むと為す
- 中国語:以退为进 [ yǐ tuì wéi jìn ]
- 出典:揚雄(法言·君子)
- 意味:謙遜して相手に譲ることを道徳的な進歩であるとする。その後、転じて、前進するためにひとまず後退するとの意。負けるが勝ち。
人多く手雑(ま)じる
- 中国語:人多手杂 [ rén duō shǒu zá ]
- 出典:红楼梦
- 意味:手を付ける人がやたらと多くいること。船頭多くして船山に上る。
風雨同舟
- 中国語:风雨同舟 [ fēng yǔ tóng zhōu ]
- 出典:孙子(九地)
- 意味:同船して共に風雨と闘うこと。力を合わせて困難に立ち向かう。
理直気壮
- 中国語:理直气壮 [ lǐ zhí qì zhuàng ]
- 出典:冯梦龙(古今小说)
- 意味:理屈が通っていて正々堂々としていること。話の筋が通っている。
記事:【理直気壮】 中国には有るのか負けるが勝ち とにかく負けられない議論
議論大好き
出先から意気揚々と会社に戻ってきた若い社員。「顧客と議論して勝ったぞ!」と。勝って帰って来たのに、「お客と議論してどうする気だ」とたしなめられ、納得できない様子。
中国では屁理屈も含めて、理屈っぽい人、やたらと弁の立つ人が多い。とにかく彼らは議論が好きで議論に勝つことに快感を覚えるように見えます。
口角泡を飛ばし「侃侃として談る」という、そんな議論なのです。
上海のある設立後四年程度経過した日中合弁企業。中国側の出資者は口を開けば「四年も経つのにまだ一元の利益ももらっていない」と文句たらたら。
対する日本側は「事業の性格上、利益が出るのに五、六年かかる」と応戦。透かさず中方は、「利益が出ないのは経営を主導する日本人総経理(社長)が悪いせいだ」と。
三国志さながら
その中国側企業が更にイラつくのが利益の出ていない合弁企業の「人多く手雑じる」といった体の経営機構。合弁企業出資者の日中双方から派遣された経営層に加え、日本本社が北京に設立したホールディング会社から派遣された副総経理の三人が、会社経営を担うという構図。会社内が三国志さながらに三派に分かれ、それぞれがまるで利益代表のように口を出し指図をするという、なんともややこしい状態であったことです。
何をやるにもまとまりを欠き、どこに向かうのかよくわからない、船頭多くして船山に上るとはこのことか。
共同して
議論を戦わすのは結構なことではあるが、お互いに口を開けば相手への悪口三昧。本来中国市場の開拓に注ぐべきエネルギーは社内でくすぶっていました。会社運営を行う幹部に団結も何もあるはずはなく、そんな状態では、成功するわけもありません。
孫子は「風雨同舟」と、同じ船に乗り合わせ、嵐に遭遇した場合には助け合うものだという言葉を残しています。
出身母体はそれぞれ異なっているとはいえ、会社の目指す方向は同じはず。その違いを乗り越えて、多くの社員達と一緒に乗っているこの船が、ちゃんと目的地に到着できるようにリードし、運営に努力をすべきなのです。
負けられない
日本では様々な議論のシーンで、「負けるが勝ち」と考えその場を収めることを優先することも少なくありません。
中国には、「以退為進」との古いことわざがあるにはありますが、現実の議論の場では、そのようなことはまったくと言っていいほどありません。
相手が合弁相手方であれ、自社の中国人社員であれ理論や議論で負けてしまっては、その後、力関係で不利を招き、場合によっては制御不能の事態となりかねません。
ですから唾を飛ばしながらの論争になった場合でも、中国の現場では一歩たりとも退いてはなりません。もちろん恫喝したり大きな声を出すのではなく、どこまでも冷静に、理路整然と。たとえ多少の屁理屈をこねてでも負けてはならないのです。
話の筋を通す
相手に議論で負けないためには、「理直気壮」による議論が基本。加えて、絶対に負けてはならない議論を敢行する時には、論理の組み立てとともに、理屈をこねまわしてでも納得させる気合が必要があります。勝つためには多少のこじつけも時には必要なのです。
但し、自分の利益だけを考えていたのでは相手の理解を得るのは困難。特に中国では論争の勝ち負けには関係なく、相手のメンツは守ることを疎かにすると相手の承服を得ることは難しくなります。
総経理として懸命に頭を巡らし、誰もが納得する具体的な理論を考え展開しなければなりません。その理論はきっと合弁当事者の双方に幸福をもたらすことになります。極論すれば中国市場を開拓する合弁企業の成否は総経理の肩にかかっています。
自他共の精神による、誰もが納得する理論武装は、合弁の基礎を強くすることになり、中国での成功を得る背骨でもあります。