びっくり【異想天開】の出来事 性悪説でないと成功は無理…
「異想天開」とは、奇想天外で、現実離れしていること。そんなことが、会社の中で起きるとは。それも、とんでもない悪だくみで…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
異想天開
- 中国語:异想天开 [ yì xiǎng tiān kāi ]
- 出典:镜花缘
- 意味:拠り所が無く突飛であること。奇想天外。現実離れしている。
進退両難
- 中国語:进退两难 [ jìn tuì liǎng nán ]
- 出典:衛公兵法
- 意味:前進するも後退するも難しい。にっちもさっちもいかないこと。
両面三刀
- 中国語:两面三刀 [ liǎng miàn sān dāo ]
- 出典:李行道的(灰阑记)
- 意味:良くない下心で表と裏を使い分けること。二枚舌を使うやり方。
吾が叛くべからざるを恃む
- 中国語:恃吾不可叛也 [ shì wú bù kě pàn yě ]
- 出典:韓非子(外儲説篇)
- 原文:不恃其不我叛也,恃吾不可叛也(其の我に叛かざるを恃まず、吾が叛くべからざるを恃む)
- 意味:(臣下が)叛かないことに期待をかけるのではなく、叛けないような態勢を作る。
記事:びっくり【異想天開】の出来事 性悪説でないと成功は無理…
何だそれ
とある日系工場でびっくりするような事件が勃発。そこは従業員1000人規模の比較的規模の大きな工場。ある時、日本人管理者が、原材料の出庫量と製品出荷額のバランスが取れていないことに気がつきました。
どうも原材料を盗まれたらしい。しかし、社内で調査しても、詳しい状況がどうにもわかりません。そこでやむなく警察に調べを委ねました。すると、担当者にとっては「異想天開」の、驚きの状況が知れる所となりました。
実は、犯行グループは、管理者が手薄になる夜間の時間帯に、正規の材料を不正に出庫し、生産ラインを動かし、出来上がった製品を外部に横流ししていたのです。
驚くことに、社内に不正を働くグループが紛れ込み、原材料を管理する係、生産ラインの担当など、必要箇所に一味の構成員が配置されていました。
外部には横流し品を売りさばく「営業部隊」までいたようです。原料も生産ラインも本物を使っていますから、品質は正規品と全く同じで、しかも価格は正規品よりも格安ですからよく売れた、ということです。
あり得ないことが
そうして組織化された不正チーム。何人かの悪徳不良社員らが共謀して悪巧みを働いたのではなく、日本製品を横流しして荒稼ぎをすることを目的に、会社内に送り込まれたチームであったのです。
背景にはこんな事情がありました。多くの従業員を抱える企業では、少なからず一定の人数が退職し、その補充のために中途採用をしなければならないことが日常化し、ほぼ年中にわたって採用面接を行っていました。
そこに目を付けた悪巧みチームは、従業員募集の際に正式に応募し、面接に合格して入社した、れっきとした社員でした。もちろん企みは等は噯びにも出さず、真面目然として面接を受けたのです。下心を持って表裏を使い分ける「両面三刀」ということわざそのもの。
日系企業は中国企業に比べて管理が厳しいといっても、日本人は基本的には性善説。人を容易に信用し信頼もする日本企業が、そのような計画的、且つ周到に仕組まれた企みの前にはなすすべもなくひとたまりもありません。
それにしても、真面目な社員を装い会社からは給料をもらい、裏側では製品を横流しすることで不当な利益を得ていたのには驚くばかり。
小さいことを見逃すと
結局、彼らは司直の手に委ねられました。そこまでではなくとも、どの企業でもよく発生するのが、社内の物品が不正に外部に流失するという問題です。
トイレットペーパーからその企業の試作品に至るまで、対象になるのは様々です。しかしいずれも笑ってはいられないものばかりなのです。たいした被害ではないからと甘く見ていると、いずれのっぴきならない大問題になる可能性があるからです。
一巻や二巻のトイレットペーパーくらい大したことではないと見逃していると、いずれ、会社のパソコンが無くなったりと、どんどんエスカレート。
あわてて、「犯人」を特定したとしても、その社員から社内の秘密をばらすぞと逆切れされるのが落ち。酷いケースは、そうとは気づかないうちに幹部に登用していたり…
そうなると会社としては「進退両難」と、にっちもさっちもいかくなることもあり得ます。
と、いうことで、一般庶民の生活レベルが上がっては来ていますが、企業にとってはその種の悩み事は昔も今も変わらないようです。
性悪説
そもそも、社員募集の面接には、細心の注意をもってその応募者の人となりを観察しているとは言っても、10分程度の面接では信用できるかどうかを判断することは到底無理です。
つまり、信用できるかどうかわからない応募者をちょっと見ただけで社員として採用しているわけです。にもかかわらず、性善説の日本人管理者は自社の社員であると言うだけで信頼してしまう。
社員はある意味で身内と同じ。それを信じるなとは、日本人には馴染みにくい考え方です。それだけに面接時の経緯を考えると、社員に対する普段のマネジメントがより重要になると言えます。
「吾が叛くべからざるを恃む」とは、社員が悪事を働かないことに期待をかけるのではなく、働くことができないような態勢を作ることが大事だと読めます。
社員をむやみに信用しないことは、社員が悪事に手を染める可能性を低くすることになり、結果として、彼らは社員であり続けることができるということにもなります。
韓非子流の性悪説により簡単には信じないことが、結局自分の身を守り、相手を守ることにもなります。此の地では、少なくとも性善説では心許ない。