【螳螂捕蝉,黄雀在后】前だけ見ていても勝てない リスクは背後から

大連・中山広場(2019年5月)

 

「螳螂捕蝉,黄雀在后」は、蟷螂が蝉を捕えようとしているが、実は、その後ろには黄雀が蟷螂を狙っている、と。目の前の利益に夢中になっていると、後ろから近づく…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

感激涕零(かんげきていれい)

  • 中国語:感激涕零   [ gǎn jī tì líng ]
  • 出典:唐・刘禹锡(平蔡行)
  • 意味:感激して涙を流す。非常に感激、感動することの例え。

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束手無策

  • 中国語:束手无策   [ shù shǒu wú cè ]
  • 出典:宋季三朝政要
  • 意味:手が縛られ抜け出すことができない。なす術がない、手の施しようがないこと。

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堂堂の陣、正正の旗

  • 中国語:堂堂之阵,正正之旗   [ táng táng zhī zhèn,zhèng zhèng zhī qí ]
  • 出典:孫子(軍争)
  • 意味:軍の陣容が整い勢いが盛んな軍とは戦ってはならない、との意。「正々堂々」の語源。(原文の最後に、敵の行動に応じて変化せよ、と言っています)

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蟷螂(とうろう)蝉を捕え、黄雀後に在り

  • 中国語:螳螂捕蝉,黄雀在后   [ tang láng bǔ chán, huáng què zài hòu ]
  • 出典:庄子(山木)
  • 意味:蟷螂(カマキリ)がセミを捕えようとしているが、その後ろには黄雀(鶸=ひわ)がいてカマキリを狙っている。目の前の利益に夢中になって、後ろから近づく災いに気がつかないことの例え。

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灰を吹く力も費やさず

  • 中国語:不费吹灰之力   [ bù fèi chuī huī zhī lì ]
  • 出典:野叟曝言
  • 意味:ほこりを吹き飛ばすほどのわずかな力も使わないこと。転じて、何の造作もない、朝飯前であることの例え。

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記事:【螳螂捕蝉,黄雀在后】前だけ見ていても勝てない リスクは背後から

寝耳に水

 ごたついていた社内の整備が一段落し、さあ、市場開発に打って出るぞ、と思った矢先、業界を管轄する当局から一枚の通知文書が…

 そこに書かれていたのは「外国資本100%の企業は許可された範囲以外の業種企業を開拓してはならない」という内容。更に「もし同業種企業との契約を保有しているのであれば、その契約を更新してはならない」と。つまり全面的ではないものの、業務停止命令ではないか。

 絶対権力機関からの、寝耳の水である通知に対しては、束手無策」、無力でしかなく、なす術がありません。極端に事業範囲が制限されることになり、設立して僅か数年の小さな会社にとっては、存続にもかかわる大問題です。

 

赤子の手をひねる

 そもそも地元当局傘下企業と日本本社との合弁企業として設立され、その約5年後に中央政府の決定により、当該合弁の相手側企業が合弁を維持できなくなり、やむを得ず合弁を解消。つまり中国側の一方的な都合により合弁が解消され、やむを得ず外資100%の企業として変更登記することになりました。

 そして一方的な業務停止命令とは、如何にも無理無体。抗議をしたものの受け入れられず従わざるを得ないことに。

 実は、その地方政府機関は業界の監督官庁として許認可権を持ち、一方で自ら同業種の子会社を設立していました。とても分かりにくい構図ですが、監督官庁とは右手で握手しながら友好関係を築き、市場では左手の拳を振り上げながら、その監督官庁の子会社と競争していたのです。

 そんなことですから、ちっぽけな民営会社をひねりつぶすことなど「灰を吹く力も費やさず」、彼らにとっては、何の造作も無いこと。

 当時は既に市場競争社会になっていたとはいえ、現実には正当な競争とは程遠い状態でした。

 

正々堂々は有るのか

 事ここに至った状況を見ると、どうも競争相手の影がちらついていました。規模は大きくはないけれど、なかなか手強そうな競争相手の出現に、安閑としていられなくなった件の子会社が、出資者である当局にねじ込んで、競争相手の手足をもぎ取ろうとしたのではないかと思われます。

 マーケットの中でガチンコ勝負をするのならまだしも、自らの企業努力の不足を棚に上げて…

 堂堂の陣、正正の旗」という言葉のとおり、「整然として士気も高い」新進の企業とは真正面からの競争は避けたのでありましょう。

 実はここには元から「正正堂堂」なんて無い。実際には、如何に相手を陥れ、自軍を有利に導くかが問題であり、要は勝てばいいのだ。これは現場で仕事をして得た実感です。

 

影響は最小限

 外国資本100%であっても、企業として存続すること自体は問題なかったのですが、大口顧客の維持、新規顧客の開拓など大きく制限され、会社の業績にも多大な影響が避けられない状況でした。

 そんな状態が何か月か続くと、社員達も「うちの会社、大丈夫か?」という不安感が増幅してきました。彼らにとっても死活問題ですから、そんな不安も理解できます。心配するなということしか言えないことに歯がゆい思いも。

 嬉しいことに半年後に、新しい現地パートナーを見つけることができ、改めて合弁を組むことができました。辛かった苦境を脱することができたのです。そして新体制のもと事業の急拡大にひた走ることになりました。

 それにしても、このことが原因で不安を感じ退職した社員は誰一人無く、また、契約を解約したユーザーもごく一部に止まり、大半は取引を維持してくれました。それどころか、以前にも増して拡大していただいた顧客もあって「感激涕零」。大きな支持を得られたことに感動、本当にありがたい限りでした。

 

背後に

 蝉を捕まえようとするカマキリの如く、マーケットの拡大にばかり目が向いてしまい、背後の備えを欠いていたのです。正に「螳螂捕蝉,黄雀在后」。その「事件」は後方の備えに相当するチャネルが欠け落ちていたことを気付かせてくれました。

 中国で会社を積極的に経営するには「幹部社員の取り組み姿勢」と「社外の協力者」のファクターが欠かせません。しかし、それだけでは発展できない場合もあるということです。

 事業が好調に推移していれば、一方ではそのことを好ましく思っていない人が必ずいるものです。彼らは背後から虎視眈々と狙っているかもしれません。いや、狙っているのです。中国での戦は「正正堂堂」などのきれいごとは言っていられないのです。好調な時ほど、背後に細心の注意を払うべきだと言えます。前ばかり見ていたのでは命取りになりかねません。

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