【車 山前に到りて必ず路あり】 居ては困るこんなとんでも社員への通告は
時に出現する社内に悪影響を及ぼす社員。やむなくお引き取りいただくことになるが、具体的な対応は一考を要するところ。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
裡で喫み外を爬く(喫裡爬外)
- 中国語: 吃里爬外 [ chī lǐ pá wài ]
- 出典:消闲演义
- 意味:他人の事のために自分の所属集団(会社など)を裏切ることの例え。内部の者でありながら、その組織に害を与える者のこと。獅子身中の虫。仲間から利益を得ながら陰に回って外部の人を助けること。
車山前に到りて必ず路あり
- 中国語: 车到山前必有路 [ chē dào shān qián bì yǒu lù ]
- 出典:中国古代の諺(出典はありません)
- 意味:困難に直面した際にも、必ず解決方法があることの例え。案ずるより産むがやすし
睜一隻眼、閉一隻眼
- 中国語:睁一只眼,闭一只眼 [ zhēng yī zhī yǎn, bì yī zhī yǎn ]
- 出典:明・兰陵笑笑生(金瓶梅词话)
- 意味:片目を見開き,もう片目を閉じる。見て見ぬふりをする。大目に見る。無責任な態度を取る。
人を射んとせば先ず馬を射よ
- 中国語: 射人先射马 [ shè rén xiān shè mǎ ]
- 出典:杜甫(前出塞诗之六)
- 意味:目的を果たすためには、その周囲やよりどころにしているものを先に攻めるとよいということ。
記事:【車 山前に到りて必ず路あり】 居ては困るこんなとんでも社員への通告は
許せない裏切り
ある10年選手の社員。若い会社にとっては、誰もが一目置く古参社員です。ところが、あろうことか、社内の後輩社員を使って、自らが手数料を稼ぐ副業をしていました。さらに、社内での立場を利用して、出入りの業者からリベートを貰うという、いずれも不当な利益を得ていたこともわかりました。
中国でそういう種類の事例は珍しいことではありませんが、ここまで度を越えるとなると、社内に悪影響が出てきて、周囲にも変な空気感が漂ってきます。
どう見てもこれは「喫裡爬外」の裏切り行為。会社組織に巣くう「獅子身中の虫」であり、放置すると内部から崩壊しかねません。
知らんぷり
とんでもない「困ったちゃん社員」。そんな社員には即刻退場願わなければなりません、と幹部に質すと、どうも幹部社員たちはその社員の行状をすでに知っていて、つまり「睜一隻眼、閉一隻眼」状態であったのです。
何故なら、その古参社員は、かなり強力なコネを使って入社した経緯があり、幹部社員も知ってはいたのだが、自分への影響を恐れて見て見ぬふりをしていたようです。
しかしながら、会社内で害毒を流すようでは組織運営上も良くありませんし、まして発展途上にある企業としては、あまりにも影響が大きく放置することはできません。どう考えてもその社員は会社にとって「いない方が良い」社員であると言わざるを得ません。
外堀からの攻め
人事権を持つ総経理(社長)だからといって、「いない方がよい社員」をバッサリとやってしまうと、場合によっては厄介なことになる可能性があります。日本人総経理が中国人社員に対してどう対応するかは、結構悩ましくまた微妙な問題なのです。さて、どうしたものか…
ここは、「人を射るには先ず馬を射よ」との格言に従って進めるのがベター。まず外堀を埋めることに。
その言葉に倣うと、会社の中軸を担う幹部社員とのコンセンサスを得ることです。しかし、「辞めてもらおうと思っている」と話しても、積極的な賛意が得られないかもしれません。その古参社員の背景にある人脈の影響を被ることなど誰も避けたいはず。
かと言って辞めてもらうことに、真っ向から反対する意見もないところを見たら、おそらく自分の口から進んで賛意を表すことを憚ったのであろうと思われます。
古参社員の後ろ盾の反撃による会社への影響を見図りながら、幹部社員の理解が得られるまで何回か意見交換を重ねるという努力が必要です。決して急がずに…
案ずるより
幹部社員たちとのコンセンサスが形成された段階で、次のステップへ。
中国では会社と社員が労働契約を書面で締結し雇用関係が成り立っています。有期契約とするのが一般的で、期限到来時に更新するか否かを双方が協議する形態。つまり、双方の意見が一致しなければ契約は成立しないのです。
今回のように辞めてもらいたい社員に対しては、労働契約の満了時に更新しないで契約を終了するのが、どう考えても得策というもの。
更新協議時に満を持して、その旨を本人に通告すると、意外や意外。抗うことは何も無かったのです。ひと悶着を覚悟の上だったのですが、不更新の理由や原因を聞いてくることもありませんでした。抗えば返って自分の体面が損なわれると考えたのかもしれません。
中国に「車山前に到りて必ず路あり」という伝承の言葉がありまが、困難な問題に直面した際にも、必ず解決策はあるという、勇気づけられる言葉です。策を弄したりするのではなく、サラッと対応した方が良い結果となることが多いようです。
納得できない社員によっては仲裁処に駆け込むことも考えられますが、その場合も解決策を見出すことは十分可能です。
いずれにしても、縁故絡みの人事問題は悩ましい限りですが、正論をもってぶれずにきっぱりと、そしてサラッと対応するのがよいようです。但し相手の面子は絶対につぶさないこと、そして、幹部社員を味方につけておく、そういった対応を心掛けたいものです。