【防人之心無きベからず】人を騙すな 人から騙されるな 脇を締めよ
「防人之心不可無」は、菜根譚にある言葉で、防衛する心が無くてはならないとの意。「性善説」をベースにすると、どうしても脇が甘くなり、その隙間につけ込まれ、失敗に繋がることが考えられます。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
軽挙妄動
- 中国語:轻举妄动 [ qīng jǔ wàng dòng ]
- 出典:韓非子(解老)
- 意味:慎重に考えず、軽率な行動をとること。軽はずみな振る舞いをすること。
言を謹み行を慎む
- 中国語:谨言慎行 [ jǐn yán shèn xíng ]
- 出典:礼記(缁衣)
- 意味:言語、行動共に注意深く慎むこと。
左思右想
- 中国語:左思右想 [ zuǒ sī yòu xiǎng ]
- 出典:冯梦龙(东周列国志)
- 意味:多方面にわたって考え思案すること。
防人之心無きベからず
- 中国語:防人之心不可无 [ fáng rén zhī xīn bù kě wú ]
- 出典:菜根譚
- 原文:害人之心不可有,防人之心不可无(害人の心有るべからず、防人の心無きべからず)
- 意味:人を害するような心が有ってはならない、防衛する心が無くてはならない。つまり、他人を陥れようなどと考えてはならないし,他人から陥れられないよう警戒心を失ってはならない。人を騙すな、人から騙されるな、との意。
記事:【防人之心無きベからず】人を騙すな 人から騙されるな 脇を締めよ
携帯を貸して…
オフの午後のコーヒーショップでまったりとしたひと時。店内は中国人でほぼ満席。盛況ぶりに感嘆する。
そこに突然、小学低学年らしき見知らぬ男の子が近づき、何やら言ってきた。聞いてみると、「お母さんとはぐれて困っている。連絡を取りたいので、携帯電話を貸してほしい」という。
一緒に買い物にでも来て、迷子になったのかもしれないが、勇気を出して言ってきたのだろう。きっと心細い思いをしているに違いない…
しかし、ちょっと待てよ…
店内には多くの中国人がいるのに、何故、彼らのところへ助けを求めないのか。或いはお店の店員さんに言えばいいのに。何となく引っかかる…
話を聞いていたほんの少しの合間に「左思右想」。頭の中で、いろいろな想像が巡らされる。最悪のケースは、親切心で貸した携帯電話が、まんまと持ち去られることにも…
それに、この携帯は会社名義。さて、どうしたものか。
シャッターをお願い…
ある日、友と観光に。中国の悠然とした景色をバックに二人で記念撮影を。通りがかりの人にシャッターを押してもらおうか。
見ず知らずの人に大事なデジカメを委ね、数メートル離れて立つ。そこで、「一、二、三」と掛け声がかかるや、彼はくるりと踵を返し一目散。あっけにとられている間にデジカメが…
あるかないかわかりませんが、そんな想像をすると、自撮り機能が無い時代、記念の写真は一人ずつお互いに、ということになります。 午後の一杯の珈琲や観光地での写真などのシーンは、日本では何ら気遣いはいりませんが、海外ではそうでもないのです。
日本と同じような感覚で取った行動が、とんでもないことになってしまった時には、周りからは「軽挙妄動」だという謗りを受けることにもなります。もし、会社内に知られると、「うちの総経理は馬鹿じゃないのか…」と手厳しい思われ方も。
負けない努力を
国情や習慣の違う環境にあって、失敗せずに成功を勝ち取るには、人に騙されないように常に警戒心をもつことに加えもうひとつ。
礼記にある「謹言慎行」という言葉。田舎から出てきたばかりで、財布を落として困っている、というお涙頂戴の話をしてくる見知らぬ人に、思わず二百元を手渡した自らの善行ぶった行動に自ら酔う。醒めたときにこっそり反省する自分がいる。オンの時はもちろん、オフであっても、自らの言動を慎重にすることが、大事ではないでしょうか。要は何事にも負けないこと、騙されないことです。
人の性は悪
「人の性は悪」とは荀子の言葉。人は生まれつきの本性は悪であり、その後、不断の努力で学問に励むことによって「善の性」に導くというもの。とすれば、世の中には「悪」をベースにした人ばかり。それぞれの精進の度合いによって「善」への進度が違うとは言え。
そういう社会の中で現地会社を運営している日本人総経理(社長)が、心すべきは「防人之心無きベからず」という格言ではなかろうか。防衛の心、つまり警戒心を失ってはならない、ということです。
海に囲まれているせいか、日本では「性悪説」の考え方はなかなか馴染めない。しかし、海外の地で「性善説」をベースにすると、どうしても脇が甘くなり、その隙間につけ込まれ失敗に繋がることが考えられます。そうなれば、部下社員あたりからも、頼りない人だとの謗りを受けることは免れない。
周囲から甘く見られた総経理は後々、マネジメントが効きにくくなるのは言うまでもありません。