【志は満たしむべからず】 月餅も満月も円満完璧の印 でも失敗もある

大連・労働公園はす池(2019年5月)

 

月餅も満月も円満完璧の象徴。しかし、欠けた所のない完璧な人生や仕事はあり得ない。満ち足りた状態はあまりよくはないのだ。むしろ、適度な不満はあった方がよい。そこから次へのファイトが湧いてくる。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

好景は長からず

  • 中国:好景不长   [ hǎo jǐng bù cháng ]
  • 出典:艶陽天
  • 意味:美しい光景は永遠には続かない。月に叢雲(むらくも)花に風。

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志は満たしむべからず

  • 中国語:志不可满   [ zhì bù kě mǎn ]
  • 出典:礼記(曲礼上)
  • 原文:志不可满,乐不可极(志は満たしむべからず、楽しみは極むべからず)
  • 意味:ここでの「志」は欲望の意味合い。欲望は満ち足りた状態ではよくない、との意。(適度な不満はあった方がよい)

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適得其反

  • 中国語:适得其反   [ shì dé qí fǎn ]
  • 出典:魏源的(筹海篇·议守上)
  • 意味:まったく反対の結果が出ること。裏目に出る。

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趕鴨子上架

  • 中国語:赶鸭子上架   [ gǎn yā zi shàng jià ]
  • 出典:高阳(母子君臣)
  • 意味:アヒルを追い立てて止まり木に登らせること。人にできないことを無理強いすることの例え。

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月餅でクレーム

 「去年は貰ったのに今年は無いのか」「あいつは貰っているのに、俺には無いのか」等と会社にクレームが入った。クレームのもとになったのは月餅なのです。

 何千年もの歴史をもつ中秋節。社員やお世話になった大事な顧客に月餅を配り、感謝の意を表すことが会社としての年中行事になっています。

 しかし、日本のように一箱の月餅を「皆様で…」というわけにはいかない中国社会。会社同士の取引関係であっても、顧客の担当者など個人を対象に贈ることになります。その際に、配慮が十分ではなかったりすると、前述のようなクレームをもらうことになってしまうのです。

 一年間の感謝の気持ちを込めた月餅なのですが、思いもよらず「適得其反」。とんでもない裏目に出て、気まずい思いをするという情けない結果になりかねません。

 

無理強いの過ち

 社員達の考え方がよくわかっていなかったために、良かれと思ってやったことが裏目に出たということが、他にも。

 営業部門に対して、一方的に「目標は大きい方がやりがいがあるぞ…」と訴えた。総経理は、社員に対して高い目標を掲げて挑戦させ、それなりの成果を享受させようと考えたのであったが…

 例えば、目標が10の場合、達成率80%で成果が8。ならば目標を15とした場合は成果が12。達成率が60%であったとしても成果は9になる。

 良かれとの思惑であったのでしょうが、実は社員が感じていたのは、10という目標でも「一杯一杯。目標を15にするということは「趕鴨子上架」のようなもの。単なる無理強いでしかない。

 逆立ちしても達成できそうにないと社員達は感じたようで、皆の戦闘意欲は削がれるばかりです。黙っていた方がまだましであった、なんてことになりかねません。

 

思うようにいかない

 ところで、まん丸でどこも欠けることがなく、円満・完璧の象徴である満月。日本では「ウサギが餅をついている」と言われますが、中国では「不老長寿の薬を作っている」と伝えられています。

 眺める月は同じでも見方はそれぞれ。そんな中秋の名月を眺めていると、突然、雲に隠れてしまった。「月に叢雲、花に風」だ。「好景不長」と言われるように、美しい光景は長続きしないのが世の常。

 中国の仕事も同じで、右肩上がりの業績で快調に走っていたとしても、会社経営に急ブレーキがかかることがあります。

 カントリーリスクもその原因のひとつでしょう。また、日常的な仕事の中でも、習慣や考え方など大きく異なる訳ですから、そこで日本育ちの人間がマネジメントして、期待通りの結果が出ないのも当たり前と言えば当たり前。なかなか思うようにはいかないものです。

 

満ち足りていないと

 会社運営を担う総経理(社長)としては、業績の拡大を目指し社員達の幸福を願って、様々な施策を打ち出し、勝ちに行くのですが、すべてが奏功するわけではありません。

 だからこそ、次なる挑戦への意欲が湧いてくるというもの。

 礼記には「志不可满」という言葉にはむしろほっとします。満ち足りた状態ではよろしくないというのですから。

 一筋縄ではいかぬ中国現地会社の運営。連戦連勝などはあり得ない。いわば80点、否60点の出来栄えで「合格」とするくらいの寛容さが求められます。

 肩の力を抜いてリラックスして臨むのがマネジメントの第一歩ではなかろうか。

 もちろん、手を抜いて適当にやればよいと言うことではない。目いっぱいの努力・行動がなされていることが条件で、結果については寛容の心をもって認めるということです。

 その前提で、満たされなかった部分が残ることが、次へのチャレンジ精神と化し、自分や組織の成長にもつながる。

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