【人生の大病は只是一の傲の字】自分の傲慢さに気づき 賢と徳で心服を
滲み出てくるほどの「人間的魅力」を身につける不断の努力をすることが何よりも大切。決して上からの目線ではなく、社員達と同じ高さの目線で人として普通に接すれば、きっと社員の皆は心を開き心服するはず。そこに会社発展を成功させるツボがあるのではないでしょうか。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
狐 虎の威を假(か)る
- 中国語:狐假虎威 [ hú jiǎ hǔ wēi ]
- 出典:戦国策
- 意味:他人の権威をかさに着て威張る小人物のこと。狐が虎の威嚇を借りて他の獣を追っ払った、という寓話から。虎の威を借る狐。
傲睨一世(ごうげいいっせい)
- 中国語:傲睨一世 [ ào nì yī shì ]
- 出展:耻堂存稿(留赵给事奏札)
- 意味:すべてが眼中にないこと、傲慢であることの形容。おごり高ぶって横柄な態度で見くだすこと
惟(これ)賢 惟徳、能く人を服す
- 中国語:惟贤惟德,能服于人 [ wéi xián wéi dé, néng fú yú rén ]
- 出典:三国志
- 意味:「賢と徳、この二文字が人を動かすのである。小さな悪だからといっても、決して行ってはならない、小さな善だからといって、決して怠ってはならなぬ」との教え。(蜀の劉備が、息子の劉禅にあてた遺書の一節)
心口 一ならず
- 中国語:心口不一 [ xīn kǒu bù yī ]
- 出典:醒世姻缘传
- 意味:心の中で思っていることと、言っていることが一致しないこと。裏表があること。不誠実であることの例え。
人生の大病は、只是一の傲の字なり
- 中国語:人生大病,只是一傲字 [ rén shēng dà bìng, zhǐ shì yī ào zì ]
- 出典:王陽明(伝習録)
- 意味:人生で最も害になるのは「傲」の一字である、との意。さらにこの後、「人と為って傲なれば必ず不幸なり」と。リーダーとして、よくよく心したい言葉です。
記事:【人生の大病は只是一の傲の字】自分の傲慢さに気づき 賢と徳で心服を
上から目線
大連空港のチェックインカウンターで、大声で叫んでいるある日本人搭乗客。「俺は中国のために仕事をしに来てやっているのに、スーツケースを開けろとは何事か」と。これは実際に目撃したシーン。
荷物検査のためにスーツケースを開けるよう求められた事に対して不満を持ったようです。詳しい経緯は知る由もありませんが、大勢の人が並んでいる中での出来事で、なんともはや上から目線の物言いには呆れます。
「傲睨一世」、まるで世の中で自分が最も偉いとでも言わんばかりの傲慢な態度。得てして、そういった人は、日本ではたかだか一部門のマネージャー。上司と部下の間に挟まれて汲々としていた人が、中国に派遣されたとたんに現地の人に対して偉ぶった振る舞いをする事が間々あるようです。。
威張る小人物
しかし、それは是非もないこと。ごく普通の中間管理者が、突然、現地の社員たちから「総経理(社長)」だ「部長」などと呼ばれるようになり、舞い上がってしまう。さらには、運転手付きの専用車をあてがわれ、いつの間にか「自分は偉くなった」のだと大きな勘違いを犯してしまうのかもしれないからです。
そういった手合いは「狐假虎威」、虎の威を借る狐の如き、威張る小人物と言わざるを得ません。しかし、現地の社員たちは、そんな上司のことはとっくにお見通し。残念ですが、心貧しき傲慢な人、本人だけが、そのことに気がつかないのです。
傲の一字
現地会社は総経理にとっては、自分以外の社員は皆が「部下」ですが、同時に労苦を共にする「仲間」でもあります。多くの現地社員の支えがあって、日本から派遣されてやってきた「総経理」や「部長」がその役職としての仕事ができていることを忘れてはなりません。
中国・明代の儒学者である王陽明は「人生の大病は、只是一の傲の字なり」という言葉を残しています。人は能力や性格など様々な問題を抱えていますが、最も大きな害を及ぼすのは傲慢であることだ、と警告しているのです。
経営幹部として駐在している日本人の頑張りだけで会社が回っているわけではありません。
にもかかわらず、上から目線の傲慢な態度で「仲間」である社員に接していることは、現地会社の責任者が自ら害毒をまき散らしていることに他なりません。
心服は
一般的に中国は所謂「縦社会」。親と子、学校の先生と生徒、お上と国民等々、上下関係の中で「上」にはとりあえず従う。生きていくためにはそうせざるを得ないのも理解できます。
しかし、現実には「心口不一」と心の中と口で言っていることとは必ずしも一致していないことも。
会社にあっても上司が偉そうに上から目線で部下に接するのは、何の不思議もないごく普通のとこです。社員は黙って言うことを聞くでしょう。しかし、だからと言って心服しているとは限らない。社員として生きていくために表面的に従っているのかもしれません。
自らの人間力
三国時代の武将で蜀漢の初代皇帝であった劉備。常に謙虚と信頼をもって部下に接した劉備は、自身の子である劉禅にあてた遺言の中で、「惟賢惟徳、能く人を服す」と書いています。
偉ぶったり、上から目線ではなく、「賢と徳が人を動かす」と。「賢と徳」を身につけるためには、人の上に立つ者自らが人間力(魅力)を身につける努力をしなければなりません。
仕事が「できる人」になろうとする以上に、滲み出てくるほどの「人間的魅力」を身につける努力をすることの方が大事ではないでしょうか。
総経理が上からの目線ではなく、社員達と同じ高さの目線で、つまり人として普通に接すれば、きっと社員の皆は心を開き心服を得ることができます。そうして社員の心に入り込んでいくと、彼らはきっといい仕事をしてくれるはずです。そこに会社発展のツボがあるはずです。