【唯唯諾諾】の組織に勝ち目は無い 【自覚自愿】に変貌せねば

大連市中のアカシア(2019年5月)

 

総経理(社長)という会社内で最も大きな権力を持った人には、下手に相対するよりも「長い物には巻かれろ」式が得策だと考える社員の多いこと。気持ちは理解できるが、それでは会社の大きな発展は望めません。「唯唯諾諾」からの脱却が求められるのです。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

安利は之に就き、危害は之を去る

  • 中国語:安利者就之   [ ān lì zhě jiù zhī ]
  • 原文:安利者就之,危害者去之,此人之情也。(安利は之に就き、危害は之を去る。此れ人の情なり)
  • 出典:韓非子
  • 意味:安全で利益のある方につき、危険で害のあるものから遠ざかるのが、人情である。

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唯唯諾諾

  • 中国語:唯唯诺诺   [wěi wěi nuò nuò]
  • 出典:韓非子(八姦編)
  • 意味:事の善し悪しにかかわらず、他人の言うがままに従うだけで、しっかりとした自分の意見がないこと。「唯」は返事の「はい」のこと。「唯唯」は「はいはい」と返事をすること。「諾」は引き受けることで、「諾諾」は他人の言うことに従う様子。

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自覚自愿

  • 中国語:自觉自愿   [ zì jué zì yuàn ]
  • 出典:白求恩大夫
  • 意味:自覚し、自発的に行う。自ら進んで自ら希望すること。

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明主の其の臣を導制する所は二柄のみ

  • 中国語:明主之所导制其臣者,二柄而已矣   [ míng zhǔ zhī suǒ dǎo zhì qí chén zhě, èr bǐng ér yǐ yǐ ]
  • 出典:韩非子(二柄第七)
  • 意味:名君は二つの柄をもって部下を使いこなす。「導制」とはコントロールするとの意。「二柄」とは賞と罰。つまり信賞必罰で臨むこと。

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記事:【唯唯諾諾】の組織に勝ち目は無い 【自覚自愿】に変貌せねば

自分では何もしない

 ある時、一般の社員が、パソコンを一台増やして欲しいと総経理(社長)に直訴。しかし、その程度のことであれば部門の責任者に対して申請すれば事足りるはず。総経理はその社員にそう伝えたが、曰く、責任者からは「直接総経理に言ってくれ。総経理がOKしたら買おう」ということであったとのこと。何を今さら…

 もし、総経理が購入を認めなかったら、その部門責任者はその社員に対して「総経理が購入を認めないのだから仕方がない。私は買いたいのだが… ケチな総経理だ」というのが落ち。

 これでは、総経理が言わないと何も行動しない、判断もしない「唯唯諾諾」の部門責任者だと言わざるを得ません。

 

人情の壁

 その他にも、顧客との間での価格に関する交渉幅の事前相談等、「どうしましょうか?」と。自身の考えは持たず、言わば丸投げ式の問いかけが少なくありません。

 実は、中国では、何事も全権力を握っている総経理の鶴の一声で決まるのが一般的。ということは、社員側からすると、総経理に下手な対応をしてしまうと、我が身の評価が落ちてしまうことになりかねない。そのリスクを負いたくはないと考えてのことかもしれません。

 安利は之に就く」とは韓非子が残した言葉です。安全で利益のある方につくのが人情であり、加えて、危険で害のあるものから遠ざかるのも人情です。

 一般社員にとって自分の生殺与奪の権限を持つのが総経理であって、「安全」なのか或いは「危険」か。

 よくわからないなら、無難な対応をするのが得策だ、と考えるのも理解できます。

 何も判断しなければ、怒られることもなく心配も無くなるかもしれません。しかしそれでは幹部としての存在意義も薄れ、自身の成長も無くなってしまいます。

 

自主能動の

 担当者からの「直訴」を総経理が判断し、部門責任者に指示する、という一極集中は、一見判断が速いように見えるが、総経理が出張などで不在時には業務が止まってしまうことも。それに何といっても総経理が「直訴」を以て、正しい判断ができるのかどうか疑問が残ります。

 まして今のスピード化、多様化が必要な社会にあって、一極集中では会社拡大が危ぶまれます。

 そこで学びたいのは「自覚自愿」ということわざにあるように、自ら望んで物事を行う、言わば積極能動姿勢のススメです。

 例えば、発生した問題はその部門の責任者が解決する、ということを原則とし、部門長が文字通り責任をもって運営する。もし、自分の部門だけでは解決できないのであれば、関係する他の部門責任者と相談して決めたらよい。それでも解決できないような問題があった時には、総経理に相談をすればよいのです。

 

加えてこれ

 とはいうものの、長く続いた計画経済の名残りを感じさせる社会にあって、社員達に自発能動の考え方を持ってもらうのはなかなか骨の折れる作業です。

 しかし、総経理が一人で切り盛りできるのはごく一部。どうしても取り巻きの幹部社員に活躍してもらわねばなりません。そして、如何に信頼できる幹部社員であったとしても、丸投げは絶対に避けなければなりません。もしそれをやってしまうと、一般社員はその権限を手にした幹部社員の方を向いて仕事をするようになり、総経理はいずれ裸の王様状態にされ、無力なお飾りだけになってしまいます。

 では、どうするか。韓非子は「明主の其の臣を導制するは二柄のみ」と。つまり、「二柄」である「賞」と「罰」をもってコントロールするのがよいと言っています。

 まず幹部社員から自主能動の考え方を身に着けるよう総経理は働きかけを行い、並行して部門内責任運営管理に対して信賞必罰で臨むこと。これによって「唯唯諾諾」からの脱却が見えてくる。

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