如何にそっくりなものを作っても【画竜点睛】を欠いたなら…

大連中山広場歴史建造物・中国銀行大連分行 (旧横浜正金銀行大連支店 2015年9月)

 

形は出来上がっているにもかかわらず、うまく行かない事があります。恐らくは現地に伝えきれていないものがあるからです。実はそこが事業の核心であり、それを忘れては成功は手にできません。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

画竜点睛

  • 中国語:画龙点睛   [ huà long diǎn jīng ]
  • 出典:歴代名画記(张僧繇)
  • 意味:「画竜」とは竜の絵を描くこと。「睛」は瞳のことで「点睛」は瞳を描くこと。多くの場合、「画竜点睛を欠く」という形で用いられます。ほとんど完成しているが、最も重要なところ、肝心の部分が欠けている、という意味。仏造って魂入れず。
  • 故事:中国の南朝梁の時代、张僧繇という絵師が壁に四匹の竜の絵を描きました。 その竜は今にも天に昇っていきそうな勢いでしたが、なぜか竜の瞳が描かれていませんでした。その理由を絵師に尋ねると「瞳を入れると飛び去るから」と言いました。人々はそれを信じようとしなかったので、仕方なく竜の瞳を描き入れると、竜は雲に乗ってたちまち天に昇って行きました。

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脚踏実地(きゃくとうじっち)

  • 中国語:脚踏实地   [ jiǎo tà shí dì ]
  • 出典:邵雍(邵氏闻见前录)
  • 意味:足が地に付いて、危なげがなくしっかりしていること。仕事ぶりが堅実で真面目なこと。

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掉以軽心

  • 中国語:掉以轻心   [ diào yǐ qīng xīn ]
  • 出典:答韋中立論師道書
  • 意味:物事に対し軽はずみな態度をとること。たかをくくる。詰めが甘いこと。

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東施 顰(ひそみ)に效(なら)う

  • 中国語:东施效颦   [ dōng shī xiào pín ]
  • 出典:庄子(天运)
  • 意味:むやみに人のまねをすること。鵜のまねをする鳥。「顰」とは眉を寄せ顔をしかめること。
  • 故事:春秋時代の美女の西施が病気の時眉にしわを寄せたのが美しく見えたので,隣の醜い女がこれをまねたところいっそう醜くなった。

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人まねの限界

 中国東北部にある大連市は日本との縁が深いためか、街の規模に比して多くの日本料理店があります。

 一人でも友人とでも異国の地で美味しい日本食が食べられるのは日本人としてありがたいことです。しかしよく見ると、安定して経営されているお店はそう多くはないようです。

 その中で健闘しているのが良く言えば非常にローカライズされ生き続けているお店です。例えば、個室に入ると真ん中にでんと丸テーブルがあり、しかも回転するのです。てんぷらやお寿司がテーブルに乗せられくるくる回る。でも、それちょっと変。

 また、食べ放題のお店ではガ―っと注文するので、料理がテーブルに乗りきらずにお皿の上にお皿を重ねる、まるで中華料理店のような日本料理店。

 東施 顰に效う」と、むやみに人のまねをするのは却ってよくないですよね。

 日本料理は客単価が高く利益率もよいという話を聞いて、儲かりそうだと考えた老板(経営者)なのかもしれません。この手のお店には日本人はあまり行きませんが、リーズナブルで手軽に日本料理(らしきもの)が楽しめるとあって、中国人固定客がついて割に繁盛しているということです。中国マーケットにおいては中国人からの支持が無ければ生きてはいけないので、このような割り切り方も有り、ということでしょう。

 

長続きする理由

 日本料理店の中で、日本人だけでなく現地の中国人にも人気があり、すっかり根付いているお店もあります。

 約30年前に大連で初の日本料理店として開店したのがその人気店のひとつ。何と、30年たった今もその店は健在で、大連に数ある日本料理店の中でトップクラスの人気店です。更に驚くことに、そこで修業を積んだ中国人の板前さんが何人も独立し、それぞれ立派に日本料理店を経営していることです。経営も料理人も皆中国人であることに驚かされます。

 そのお店を開いたのは東京の魚河岸で会社を経営していたある日本人。天安門事件が発生した当時の北京に出店、その後大連にも進出したそうです。よくもまあそんな時代にと、気概の強さに舌を巻きます。

 中国で古くから言われている「脚踏実地」とのことわざ。足が地に付いて、危なげがなくしっかりしていることを意味することわざですが、30年もの間、トップを維持することができたのは、儲けに走らず基本をきっちりと守ってきたからできたのではないでしょうか。日本料理のレシピや技術だけではなく、本物の日本料理をお客に提供するという料理哲学を時間をかけてずっと伝えてきたのだろうと思います。

 

甘い詰め

 一方では残念なお店も少なくありません。

 中国進出と言うロマンを叶え、日本料理店を新規出店。レシピや技術をひと通り教えたら、これで良しということで、現地の料理人や従業員に後を託し、自分は日本に帰る経営者。その後は月一くらいのペースで様子を見に来る…。そんな日本人経営者も少なくありません。

 実はこれが最も危険なパターンです。コストや時間などの事情があるのでしょうが、中国ビジネスがそう簡単には成功しません。

 せっかく苦労して出店したのに、最後の所での詰めの甘さが非常に残念です。そんなに甘くはないということ。中国にある「掉以軽心」ということわざは、物事に対し軽はずみな態度をとる、詰めが甘いことを警告しています。

 

真似できないもの

 レシピはマニュアルでわかりますが、事業に対する思いなどの肝心なことは短期間では伝わりません。しかし、そのことこそが最も大事なところなのです。

 ほとんど完成しているのに、最も重要なところが抜けているという意味の「画竜点睛」。このことわざの故事に考えされられます。

 飲食店に限らず、どんな事業でもマニュアルや技術だけではなく、文字や絵に現わし難い肝心なものがあるはずです。そこを軽んじていては中国での成功は危ういものになってしまいます。逆に言えば、マニュアルや製品はコピーができますが、その肝心なものはそう簡単には真似ができないということです。まさに核心です。

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