【病は口より入り禍は口より出ず】 何気無いひと言が面倒のもとに

大連市中山路の夜景(2017年5月)

 

総経理(社長)のような影響力のある立場にある人が、不用意な発言で問題を起こし、事態ををこじらせてしまっては、事業の発展、会社の拡大など夢のまた夢になってしまいます。成功を勝ち取るためには、自分の発言には十分注意し、また慎まなければなりません。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

矯揉造作

  • 中国語:矫揉造作   [ jiǎo róu zào zuò ]
  • 出典:周易(说卦)
  • 意味:わざとらしく不自然なこと。芝居がかっているとの意。「造作」はわざとらしい、思わせぶりであること。

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呼牛呼馬(こぎゅうこば)

  • 中国語:呼牛呼马   [ hū niú hū mǎ ]
  • 出典:荘子(天道)
  • 意味:何と言われようと気にせず、言うにまかせる事。相手の言うのにまかせて、自分では逆らわないことの例え。
  • 故事:老子を非難したある男に対し何も反応しなかった。その理由を老子は「私を牛と呼べば私は牛と思う。私を馬と呼べば私は馬と思うだけだ。なぜなら、人がそういうのにはそれなりの根拠があるはず。それに逆らえば災いを被る」と。

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先入之見

  • 中国語:先入之见   [ xiān rù zhī jiàn ]
  • 出典:漢書(息夫躬传)
  • 意味:物事の調査研究の前に、見方や考えを形成すること。先入観、既成観念。

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禍は口より出ず

  • 中国語:祸从口出   [ huò cóng kǒu chū ]
  • 出典:晋朝·傅玄
  • 原文:病从口入,祸从口出(病は口より入り、禍は口より出ず)
  • 意味:うっかり発した言葉が思いもかけない禍を招くことがある。不用意な発言はしないこと。口は禍のもと。

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記事:【病は口より入り禍は口より出ず】 何気無いひと言が面倒のもとに

わざとらしく

 ある日の上海浦東空港のチェックインカウンターでの小さな出来事。順番待ちの行列に並んでいると、前にいた小さな子供連れの日本人のお母さんが、やおら振り返り、「日本語、わかりますか?」と日本語で聞いてきました。

 (…? 俺、日本人やけどな…) 大阪人の茶目っ気から思わず「少しだけならわかりますよ…」と、「矯揉造作」、たどたどしく答えました。そのお母さんは列から離れた子供を連れ戻す間、スーツケースを見ておいてほしかったようです。

 

逆らわずに

 何処から見ても俺は日本人だろうが…と思いつつも、中国には「呼牛呼馬」ということわざがあるではないか。

 雰囲気なのか、身なりであったのかわかりませんが、そのお母さんが、そういうのにはそれなりの根拠があるはず。それに逆らえばさらなるショックに襲われるかもしれない。

 「日本人に向かって何を無礼な…」などと無粋なことは心の中でつぶやくことにとどめました。

 

先入観

 住んでいた大連のアパートメントで、突然、部屋が停電。経済発展に伴ってインフラも安定し、さすがに突発停電はめったに無くなった頃です。

 復旧予定を電話でフロントに尋ねました。勿論中国語で。すると、電話に出たフロントのコンシェルジュから「私、日本語、わかりません」とたどたどしい日本語で。「ン…? 俺は中国語で話してるんだけど…」

 当時は、社内の会議も通訳無しで中国語で行うほどにまでなっていたのに。その「自慢」の中国語が通じなかったことのショックの大きかったこと。

 日本人が比較的多く住むそのアパートメントのコンシェルジュには、日本語を話す中国人スタッフもいます。

 実は、フロントでは電話に部屋番号が表示され、日本人が住んでいることがすぐわかります。そしてそのスタッフは日本人が中国語を話すわけがないと思い込んでいる。原因はきっとこれだ。

 しかし、漢書には「先入之見」と既成観念にとらわれてはならないとあるではないか。そんなことを言っても詮無いこと。

 そのちょっとした出来事を、会社の中国人社員に話したら、みんなから大笑いされました。

 彼らにしてみれば、毎日一緒に仕事をしているから多少の発音の悪さは自分たちでカバーしているのだ…と言いたかったかもしれません。ここはコンシュルジュの先入観の問題にしておいてほしいのだが…

 

発言に注意

 言葉に関するたわいない経験談はただの笑い話です。しかし、時と場合によってはそうはいかないことがあります。

 拙い中国語であったとしても、何とか思いは伝わります。しかし、会社を代表する総経理として言ってはならないことを言ってしまうと、これは大変厄介です。

 禍は口より」とは傳玄の言葉。単なる言葉の行き違いで友人と仲たがいすることだってあります。

 総経理(社長)や老板(経営者)という立場にある人は、自身の発言には十分注意し、また慎まなければなりません。

 何でもない問題をこじらせてしまったり、最悪の場合は、社内の皆から総スカンを食らうことにもなりかねません。自らの事業を発展、成功させるためにも、不用意な言葉は無用のトラブルの発生の元であり、是非避けたいものです。

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