【一敗地に塗れる】 論争して完膚無きまでの勝利を得るのは考えもの

凛とした空気にはイルミネーションが似合う(2015年9月大連中山広場)

完膚なきまでに相手を打ち負かすと、スカッとするが、妙な遺恨が残る。すると、いずれ自分が「一敗地に塗れる」ことになる。そんな悲劇を回避して、業績を拡大の軌道に乗せるため、総経理として如何にすべきか。「次につながる」形で勝つには…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一敗地に塗れる

  • 中国語:一败涂地     [ yī bài tú dì ]
  • 出典:史記(高祖本纪)
  • 意味:一度の勝負で完全に敗北し、内臓が地面に散らばって泥にまみれる。再起できないほどさんざんに負けること。

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鹿を指して馬と為す

  • 中国語:指鹿为马     [ zhǐ lù wéi mǎ ]
  • 出典:史記(秦始皇本纪)
  • 意味:故意に黒白を逆さまにすること。理屈に合わないと理解していても、無理に押し通すこと。(中国の秦の始皇帝の死後に、権力を得ようとした趙高が二世皇帝に鹿を馬と言って献上した故事)。

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正大堂皇

  • 中国語:正大堂皇     [ zhèng dà táng huáng ]
  • 出典:雪月梅
  • 意味:正々堂々としていること。

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擒(とら)えんと欲すれば故(しばら)く縦(はな)つ

  • 中国語:欲擒故纵     [ yù qín gù zòng ]
  • 出典:兵法三十六計(第十六計)
  • 意味:擒(とら)えたければ、まず手綱を緩めて泳がせる。つまり、相手を追い詰めてはならない、との意。(完膚なきまでに遣り込めると遺恨が残り次に続かなくなる恐れがある)

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正論で論争

 中国人は議論が好きなのか、とさえ思う。相手が上司であろうが、顧客であろうが論争に挑んでかかる。大切な顧客との議論はもってのほかであるが、会社の総経理(社長)にとって、部下社員との議論に陥った時には…

 総じて彼らは、様々な理屈をつけて自分の立場を正当化し、また利益を確保しようとする。もちろん自分のメンツを守ろうとするのは当然なことではあります。

 会社として市場開拓のための戦略などで社員たちと議論する場合、まずは正論を主張すべきです。それも「正大堂皇」、堂々と態度で述べる正論には、一般的には異論を唱えるのは難しい。

 

とにかく勝つ

 社内での議論に備えて、日頃からいくつかの伏線を準備しておかなければなりません。例えば会社理念を日常的に訴え、理解させておくことです。また、就業規則を整備、見直しを行うことも有効です。中でも、「禁止事項」は具体的に列記しておくのがベターです。避けたいのは、禁止事項をいくつか書いて、その後に「その他、社員としてふさわしくない行為」などと抽象的な表現をすると、火種になってしまいます。会社と社員の「ふさわしくない」基準が必ずしも一致していないことがあるからです。

 そんな場面で議論になったとして、総経理として部下社員には絶対に負けてはなりません。彼らはいろんな理屈をつけて向かってるでしょうけれど、例え「鹿を指して馬と為す」と屁理屈をこねてでも勝たねばならないのです。

 もし部下社員に負けたら、そのことがSNSであっという間に拡散され、総経理(社長)の名声は地に落ちてしまい、以後の社内コントロールが不能状態になりかねません。

 

面子は残す

 だからと言って、もし部下に「一敗地に塗れる」ほどの完全敗北をさせてしまった場合、彼は何より大事な面子をつぶされたも同様。その悔しさたるや計り知れない。負かされた方にしかわからないその悔しさで、どんなしっぺ返しをしてくるかわかりません。

 総経理対一般社員であったとしても、窮鼠猫を噛むとの諺のように、足元をすくわれかねないのです。

 総経理として考えておかなければならないのは、負かされたその社員も同じ目的をもって進む仲間であるということです。総経理の対応次第では、多くの社員を敵に回すことになり、場合によっては総スカンを食らうこともあり得ます。試合に勝って勝負に負けた、なんてことになったら本末転倒。

 

次につながる勝ちを

 兵法三十六計には「擒えんと欲すれば故く縦つ」ということが書かれています。これは要するに追い詰めるな、という意味。

 部下との議論は何が何でも負けてはならない。ということで議論に「勝ち」が見えてきたとき、更に完膚なきまでに遣り込めるようなことはしない方がよいというのです。

 会社を経営する総経理がやるべきことは、多くの社員の協力と努力を得て会社業績をより拡大向上させることであって、議論に勝つことではありません。それに総経理は、負かされそうな相手の気持ちも思いやるべき立場にあるはずです。

 総経理は社内の議論では負けてはならないが、常に相手のメンツをつぶさないような勝ち方が求められます。妙な遺恨を残すことは業績拡大には役に役に立ちません。

 「一敗地に塗れる」ほど相手を打ち負かすと、いずれ自分が「一敗地に塗れる」ことになる。立場的にアドバンテージを持つ総経理として、「次につながる」形で勝つ余裕を持ちたいものです。

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