【彼を知り己を知れば百戦殆うからず】かみ合わない本社と現地 何とする?
中国現地の事情もわかっていないのに、あれこれ指示を出してくる本社。それに対して辟易として憤懣やるかたない様子の現地。このかみ合わない状況を何とする…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
- 中国語:知彼知己者、百战不殆 [ zhī bǐ zhī jǐ zhě, bǎi zhàn bù dài ]
- 出典:孫子(謀攻)
- 原文:知彼知己者、百战不殆。不知彼而知己、一胜一负。不知彼不知己、每战必殆。(彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし)
- 意味:敵と味方の実情を熟知していれば、決して戦いに負けることはない。敵情を 知らないで味方のことだけを知っているのでは、勝ったり負けたりとなる。敵のことも味方のことも知らなければ必ず負ける。
七嘴八舌(しちしはちぜつ)
- 中国語:七嘴八舌 [ qī zuǐ bā shé ]
- 出典:牍外余言
- 意味:七つの嘴(くちばし)と八つの舌。たくさんの意見が色々なところから出ることの例え。
井底の蛙(せいていのかわず)
- 中国語:井底之蛙 [ jǐng dǐ zhī wā ]
- 出典:庄子(秋水)
- 意味:井戸の底に住む青蛙にとっては、空はただそこから見える大きさと考えていた。識見の浅い人であることの例え。井の中の蛙。
是是非非
- 中国語:是是非非 [ shì shì fēi fēi ]
- 出典:荀子(修身)
- 原文:是是非非谓之知,非是是非谓之愚。(是を是とし非を非とするは之を智と謂い、是を非とし非を是とするは之を愚と謂う。
- 意味:正しいものを正しいと判断し、間違っているものを間違っていると判断する、これを智と言う。正しいものを間違っていると判断し、間違っているものを正しいと判断する、これを愚という。特定の立場にとらわれず、物事の善し悪しを正しく判断する、との意。
記事:【彼を知り己を知れば百戦殆うからず】かみ合わない本社と現地 何とする?
わかっちゃいない
中国のとある日系企業の総経理(社長)が、憤懣やる方が無い面持ちでつぶやいたのが「OKY!」との一言。理由を聞いてみると、慣れない中国で精一杯の苦闘を続けているのに、現地のことを何もわからずに本社はあれこれ指示を出してくる。「七嘴八舌」と。人事や財務、更に経営層が。頭にきた現地総経理は「O(お前)、K(来て)、Y(やってみろ)!」と呟いた。
現地では不可能なことや、やらない方がよいことも平然と言ってくる本社と、目の前の現地・現場の間に挟まれて立往生しかねません。
挙句には「何故できない!」と追及してくる。与奪権限を持つ本社には盾を突く訳にもいかず…
わかるわけない
「井底の蛙」ということわざを彷彿とさせる一部の日本人。自分たちの考え方がベストであり、日本流が世界の標準だと思うようです。実際には、世界中に多様な考え方があるにもかかわらず、自分たちの日本流基準を海外でも適用しようとする。
お隣のお家に上がり込んで、そのご家族に自分の家の習慣を押し付けて、うまくいくと思う方が不思議なのに。
本社から二日三日程度の出張で現地を見てレクチャーを受け、それだけで、わかったようなことを言う本社の偉い人。途方もなく長い歴史のその先端で、首までどっぷりつかって生活していても十分にはわからないのに、二日や三日でわかるわけがない。
最も厄介なのは、ほんの少しかじっただけで現地の状況を知ったつもりになっている人。
日中融合
かと言って、何でもかんでも現地の習慣・考え方に従うことがよいとは言えません。それでは、外資企業としての良さが発揮されなくなりますし、現地のためにもならないからです。
現地事情を考慮したうえで、日本流の良い所を「是是非非」で正しく判断することが肝要です。日本標準の管理基準を現地の風習や習慣を理解したうえで、現地ナイズすること。日中の融合が必要だということです。
これができるのは、その両方を知っている現地総経理以外にありません。
成功の第一歩
孫子が残した「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とはあまりにも有名な格言です。
現地における習慣や体制を理解しないまま、日本の管理基準を無理やり中国の現地会社にも適用しようとするのは、愚行以外の何物でもありません。それでは勝算を見出すことはできそうにありません。
成功・勝利への第一歩は、まずは現地を知ることです。しかし、遠い日本にいて現地を理解することは不可能です。ならば、現地にいる日本人総経理の話を聞くべきであるといえます。
もちろん、総経理自身は責任をもって運営することは論を待ちません。同時に本社は、自らが派遣した現地にいる日本人総経理を信頼することです。
ただただ「がんばれ!」との精神論しか示すことができない本社に対して、現地が「OKY!」等とぼやいているようでは成功するわけがありません。
加えて言うならば、うるさい本社を黙らせるには、誰もが認めるほどの、現地会社としての業績を上げることが最強の方法であることはもちろんです。