二百五や十三点にはご注意を 詩経にある【温温たる恭人】に
どこの国にも人を罵ったり嘲る表現や縁起担ぎの数字があり、それぞれ違いもあって面白いものです。それぞれの背景や起源を理解することは勿論必要です。が、合わせて、何があろうと相手を罵るのではなく、穏かさと恭しさをもって接する方がよいのではないでしょうか。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
温温たる恭人はこれ徳の基なり
- 中国語:温温恭人,惟德之基 [ wēn wēn gōng rén, wéi dé zhī jī ]
- 出典:詩経(大雅)
- 意味:柔和で慎み深く人に対して恭しいことは徳の基である、との意。徳のある人は人からも信頼される。反対に冷たいとか刺々しいなどと言われる人には、誰も集まってこない。また、傲慢な人は他から支持されない。
九牛二虎之力
- 中国語:九牛二虎之力 [ jiǔ niú èr hǔ zhī lì ]
- 出典:列子(仲尼)
- 意味:九頭の牛と二頭の虎の力、の意。匹敵することのない、極大の力の例え。無敵。
自言自語
- 中国語:自言自语 [ zì yán zì yǔ ]
- 出典:桃花女
- 意味:独り言を言うこと。
眼は見ず、心煩わしからず
- 中国語:眼不见,心不烦 [ yǎn bù jiàn,xīn bù fán ]
- 出典:紅楼夢
- 意味:見なければ心を煩わせることもない。知らぬが仏。
記事:二百五や十三点にはご注意を 詩経にある【温温たる恭人】に
何だ十三点
ある時、上海で乗ったタクシー。運転手が小声で「自言自語」。よく聞いていると、「十三点!」とぶつぶつ独り言を言い舌打ちをしている。
この「十三点 」は人を嘲る言葉です。運転中に他の車に割り込まれたりしたとき、「ば~か!」という感じ。
このような由来があるそうです。上海と深圳にある中国の株式取引所では、以前、この二つの取引所の時間を正確に保つ為に、一時には鐘一つ、 二時は鐘二つ、という具合に、一時間ごとに鐘を鳴らしていました。ある時、深圳の株式取引所で十二時に十三回鐘が鳴らされました。この事を上海の人は、深圳が十三回も鐘を鳴らしたとして、嘲り笑ったということです。
つまり、「わけのわからないことをする間抜けな奴だ、頭がおかしいんじゃないか」ということです。また、一般には良くしゃべる、一言多い人のことを表す意味もあるそうです。
これヤバい
会社の営業会議で、新規契約の目標値について、総経理(社長)は今月は「250にしよう」と訴えた。その時、会議の雰囲気が何となく変。ある社員は「では260にしたらどうか」と提案。総経理は部下からの予想外の意見に嬉しく上機嫌。
しかし、後で訳を聞いたところ、「眼は見ず、心煩わしからず」、知らぬが仏の状態であったことがわかり思わず苦笑い。
「250」は中国語では「二百五 」と発音し、その意味は数字以外に「うすのろ」とか「あほう」という意味があるとのことでした。
昔の中国では銀500両を「一封」、250両を「半封」と言ったそうです。
「封」と同じ発音で「疯」という字があり、これは「気が狂っている」ことを意味する言葉。ということで、250両を「半疯」、つまり「頭が普通ではない。アホな奴だ」となったとの説があります。
ということで、日常の生活や仕事の中で「250」という数字は見かけることがありません。日本では特に何ともない数字ですが、意味はまったく違うのです。買い物の時、値切って「250元にして!」と言おうものなら、相手は「うすのろというのか!」ということになり喧嘩になりかねません。
無敵の数字
中国でも普段の生活の中に「縁起担ぎ」は根付いているのですが、へーと思うことが少なくありません。
その内のひとつが、中国人は偶数(中国語では双数)を好む、ということ。中国では、偶数が吉祥を代表しており、慶事などおめでたいことには、昔から“成双成对”と言って「対」で一組になるものが好まれます。つまり、偶数はおめでたく、縁起の良いことを現わしていると考え、一方で奇数(中国語:单数)は、単独、孤独と言ったイメージを持っているようです。
従って、例えば部下社員が結婚するときのお祝い(红包)は、600元や800元など偶数でなければなりません。間違っても、日本のように割り切れないようにと奇数で渡すと、縁起でもないと反感を持たれるかもしれません。
しかし、いくら偶数(双数)が好まれても、「九」は別。日本では“苦”に通じると忌み嫌われますが、中国では「九」は「久」と同じ発音であるので、永久、久しいなどに通じる、ものすごく縁起が良いとされる数字です。
「九」を見ても正反対の意味を感じるのですが、どちらも発音に由来するという点では両者共通しています。
無敵の強さを意味する「「九牛二虎」という言葉。牛」は頑固、強情、高慢などを象徴します。「虎」は勇猛を象徴。ここにも縁起の良い「九」と偶数(双数)·が使われています。
身に着けたい徳
どこの国にも人を罵ったり嘲る表現や縁起担ぎの数字があり、それぞれ違いもあって面白いものです。
しかし、両者間で問題があったとしても、相手を罵るのではなく、穏かさと恭しさをもって接する方がよいのではないでしょうか。
ヒューマニズム(人間主義)によって、両者間の隔たりを越えて友好を結ぶことができる、とはある賢人の言葉です。そういう「温温たる恭人」は周りからも信頼され結局は成功の人生を歩むことができるのだと教えています。自他共の精神が求められます。