【満身是胆】三国志・趙雲のように胆の据わった総経理に

胆を据えた大連・森茂ビル(2014年2月)

中国に駐在し総経理(社長)として勤務。そんな時、思ってもいない大事件に遭遇することがあります。その時に、浮足立ってしまうと、部下社員達がどう感じるでしょうか。リーダーが我が身の安全を最優先することは如何なものか。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

満身これ胆なり

  • 中国語:满身是胆   [ mǎn shēn shì dǎn ]
  • 出典:三国志(蜀书・赵云传)
  • 意味:度胸が大きく何も恐れるものは無いことの形容。
  • 故事:蜀の将軍の趙雲(字は子龍)は、曹操軍が本陣まで追撃してくると、その陣門を開き、たった一騎で曹操軍と対峙した。曹操軍は微動だにしない趙雲に恐れをなして撤退した。このことから劉備は「子龍(趙雲の字)は満身これ胆である」と感嘆した。

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山に虎有ることを明知し、虎の山に行くことを偏向す

  • 中国語:明知山有虎偏向虎山行   [ míng zhī shān yǒu hǔ piān xiàng hǔ shān xíng ]
  • 出典:清代・纪昀(阅微草堂笔记)
  • 意味:山に虎がいると知って、虎の山に行く。困難で危険であることを畏れず、勇往邁進することの例え。

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乱七八糟

  • 中国語:乱七八糟   [ luàn qī bā zāo ]
  • 出典:曾朴(孽海花)
  • 意味:毛先ほどの秩序もなく、ひどい様子。めちゃくちゃ。

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臨陣脱逃

  • 中国語:临阵脱逃   [ lín zhèn tuō táo ]
  • 出典:疏辩
  • 意味:敵前で脱走すること。いざというときに尻込みをすることの例え。

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惴惴不安

  • 中国語:惴惴不安   [ zhuì zhuì bù ān ]
  • 出典:詩経(秦风・黄鸟)
  • 意味:怖くてびくびくすること。不安でおずおずする。「惴惴」とはびくびくするさま。

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記事:【満身是胆】三国志・趙雲のように胆の据わった総経理に

消える日本人

 2002年11月に広東省でSARS(重症急性呼吸器症候群)が勃発し、あろうことか翌年の3月には大連に飛び火したのです。

 SARSは当時の中国では「非典=非典型肺炎」と呼ばれ、誰もが経験したことのない疾患であっただけに、皆が「惴惴不安」、怖くてびくびくし不安であったのもやむを得ません。もし社内で発生しようものなら会社は閉鎖されてしまいます。そうなると顧客にサービスを提供することができなくなり、会社にとっては致命的。

 毎朝出勤してきた社員の体温検査を実施、客先訪問時の対策なども行い、何としても防がねばならないという強い思いがありました。

 現地に進出していた多くの日系企業では駐在員が帯同していた家族を安全のために一時帰国させ、また、中には駐在員自身も避難、帰国するところも。その結果、周囲から日本人が少なくなってきたのです。

 

ごちゃごちゃ

一方、本社は社員に対し中国への出張を禁止する指示を出したため、出張者は皆無。まるで「危険地域」扱いです。`駐在社員用にマスクを贈ってきた以外に何も音信の無い日本本社にやり場のないもどかしさを感じつつ、駐在社員は最前線で変わらずに仕事をし、生活をしていたのです。

 マスクをつけて仕事をしている日本人を見て、当時、マスク着用の習慣がなかった現地の社員達の目には奇異に映ったことだと思います。政府からは狭い部屋で多人数が集まる会議等は避けるように、との指示も出され。屋外で社内幹部会議を開催したことも。

 大した動きのない本社や現地テレビによるSARS関連の報道の中で、会社経営者として社員やその家族を守り、会社を守りと、頭の中は正に「乱七八糟」。

 そんな中で想定外であったのは、顧客との会食機会が激減。狭い個室での会食による感染を恐れたのでしょうが、変わり身の早さに感心させられました。

 

どの面

 現地会社において社員とともに仕事をしている日本人は、このような時には一時的に帰国したり安全な国外に退避したりできますが、現地社員にはそんな逃げ場はありません。

 そんな彼らを残して「臨陣脱逃」していいものでしょうか。事態が収束し現地に戻った際に、どの面を下げて彼らに接するというのか。

 感染症の蔓延以外にも、例えば地震や台風などの自然災害、政情不安、その他にもカントリーリスクなど、大きな出来事に見舞われることがあります。現地に駐在をし、会社を運営していてそんな事態に遭遇した時に、さてどうすればよいか。

 

胆を据えて

 我が身の安全を第一としなければならないということを否定するわけではありませんが、他方、何があろうと一歩も退かないという心も持たねばならないと思います。

 それでなくても、とかく現地社員からは「日本人駐在員はどうせ腰掛だ」と思われがちです。日頃の行動はもちろんですが、特に「いざ」という場面での駐在員の態度・姿勢は強烈に印象に残るはずです。「勇将の下に弱卒無し」と言われるように、強いリーダーを認識した部下社員達は、その後には大きな力を発揮してくれるに違いありません。

 三国志の中の趙雲の如き「満身是胆」がお手本です。駐在員としてどのような事態に遭遇しようとも決して動じない、胆が据わった態度が必要ではないでしょうか。

 

どんな困難でも

 現地社員の仲間達、多くの顧客に対応する責任者として、現場から退避することなど、考えられませんでした。たとえ、日本本社から支援がなくても、自分の周囲から日本人が一人もいなくなったとしても、ここで頑張るぞと意気込みが大切ではないでしょうか。

 中国古典にある「山に虎有ることを明知し、虎の山に行くことを偏向す」とのことわざは、困難で危険であることを畏れず、勇往邁進することの例えです。本社から派遣された日本人がSARSなどの非常時に、現地にとどまるということは犬死になりかねないという意見もあろうかと思います。しかし、どのような困難にぶつかっても、総経理たる者は会社を守る、社員を守る、顧客を守るという強い決意に立つべきだと考えます。それが総経理の責任ではないでしょうか。

 そう腹をくくると、不思議と心が落ち着き、打つ手が見えてきます。そして、その姿は社員にどれほど頼もしく、また誇らしく映ったのではないかと思います。

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