【志立たざるは舵無きの舟の如し】中国で業績 伸び悩みの原因はどこに
膨大な中国のマーケットに魅せられて意気揚々と現地に進出。未経験の習慣の違い等にも真正面から挑戦と努力を続けた。そして何とか事業を拡大したのに、いつの間にか業績は停滞気味になってしまった。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
苟且偸安(こうしょとうあん)
- 中国語:苟且偷安 [ gǒu qiě tōu ān ]
- 出典:文定集·廷试策
- 意味:いい加減にその場逃れをし、一時の安逸を貪ること。
志 立たざるは舵無きの舟の如し
- 中国語:志不立,如无舵之舟 [ zhì bù lì, rú wú duò zhī zhōu ]
- 出典:王陽明(教条示龙场诸生·立志)
- 原文:如无舵之舟,无衔之马 (志 立たざるは舵(かじ)無きの舟、銜(くつわ)無きの馬の如し)
- 意味:志を持たないということは、舵のない舟やクツワのない馬のようなもので、進むべき方向が定まらない。
志は易きを求めず
- 中国語:志不求易 [ zhì bù qiú yì ]
- 出典:後漢書(虞诩传)
- 意味:しっかりとした志を持っていれば、事を行うのに安易な道を求めようとはしない、困難な事にも避けることはしない、との意。
千篇一律
- 中国語:千篇一律 [ qiān piān yī lǜ ]
- 出典:诗品
- 意味:千篇の文章が公式化されていて同じような調子であること。物事が一本調子で変化に乏しいこと。転じて、どれをとっても同じようで面白味の無いこと。
記事:【志立たざるは舵無きの舟の如し】 中国で業績 伸び悩みの原因はどこに
伸び悩む業績
膨大な中国のマーケットに魅せられて洋洋と現地に進出。未経験の習慣の違い等に苦闘しながらも、何とか事業を拡大してきた。しかし、いつの間にか業績は停滞するようになっってしまった。
中国全土に店舗展開をしていたグローバル小売企業ですら、進出してから24年で完全撤退するという憂き目に会いました。また、撤退には至らないまでも、業績の不振や伸び悩みの壁にぶつかっている企業もあるようです。
なぜそんなことになってしまったのでしょうか。「志は易きを求めず」と、真正面から挑戦と努力を続けたはずなのに。社会の変化や先行き見通し、また、カントリーリスクなど、それなりの理由があるのでしょうが、それまでの苦労、努力を思うと残念でなりません。
楽な方に流れる
日本から派遣され現地で奮闘する総経理(社長)など、事業に携わる社員達は赴任当初は懸命に仕事に取り組んだはずです。しかし、時の経過ととも、努力の度合いと得られる業績の程度がわかり、始めは大きかった挑戦意欲が徐々に薄れてきます。仕事や生活に慣れてくるとどうしても適当にお茶を濁すことも増えてくるでしょう。「苟且偸安」のようになるのは、人間としてある意味で仕方ないことなのかもしれません。
そんな人に限って業績に伸びが無くなった時に、必要なコスト迄カットして益出しをしようとしてしまい勝ちです。なにせ、まあまあの業績を残しておけば、遠からず日本本国へ帰任できるわけですから、無理に挑戦や冒険はする必要が無いのです。
欠けるインパクト
一方で、取り扱う商品の陳腐化も問題です。日本製は如何に品質が良いと言っても、目新しさが薄れてくると時代に後れを取るようになり、訴求力が無くなる。
そんな状態を打開するためのひとつの方法はイノベーションをすること。イノベーションとは中国語では「創新」。新しいものを創造するということで、イノベーションセンターを設けて具体策を検討することですが、問題はどこにセンターを置くか、誰が主体になって検討を進めるのか、ということです。
上海に置こうとすることが多いと思われますが、上海は中国経済の中心地ではあるのですが、中国全体のスタンダードでは無いことを考慮すべきです。
上海は中国の中で突出した超大都市ですが、まるで別世界。その上海で将来の中国事業の発展のカギを握る事業創新を考えても妥当な解が得られるとは思えません。何でもかんでも上海だ、北京だ、という考え方は「千篇一律」と言わざるを得ません。
今後の中国ビジネスをどうやっていくかを考えるためには、中国国内の標準的なところ(たとえば大連)で首までどっぷりつかることが不可欠だと思います。上海にセンターを置くことは中国音痴の日本本社が言いそうなことです。当たり前のことをしていたのではインパクトに欠け、社員達の心には響きません。
志立たざるは舵無きの舟の如し
日本本社から中国現地に派遣され、現地会社の総経理(社長として)現場マネジメントを仕切っているとはいえ所詮はサラリーマン。何年かすれば本社に帰るのだ、というような浮ついた気持ちでいるとすれば、業績のさらなる向上は望むべくも無いこと。イノベーションとは対極にある、薄っぺらな存在でしかありません。
「志 立たざるは舵(かじ)無きの舟の如し」という言葉がありますが、志に欠ける総経理がトップにいる会社は舵のない舟のようなもの。どこに向かうのかわからない舟に乗る社員達が可哀そうです。
志とは目的意識や何のためにという強い意志とも言えます。赴任時にもっていた燃えるような志が失せてしまったとしたら、商品やスキームなどの技術的なイノベーションもさることながら、総経理自身や経営トップ層の頭の中を「創新」した方が良いのかもしれません。