【捲土重来】 失敗しても腐らなければピンチがチャンスに 人生に負けは無い

観光客で賑わう上海「豫園」(2006年5月)

一度はサラリーマン生命を断たれるほどの大失敗をしでかした。しかし、決して腐らず希望をもってコツコツ積み上げていけば、必ずチャンスがやってくる。それを逃さず掴み、再挑戦する。そう、人生に負けなどないのです。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

捲土重来

  • 中国語:卷土重来  [ juǎn tǔ chóng lái ]
  • 出典:杜牧(題烏江亭)
  • 意味:重ねてやって来るの意味から、一度は失敗した者が、砂ぼこりを巻き上げるが如く、すさまじい勢いで再び勢いを盛り返すことの例え。

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心緒(しんしょ) 寧ならず

  • 中国語:心绪不宁  [ xīn xù bù níng ]
  • 出典:三国演義
  • 日本語表記:心緒不寧
  • 意味:「心绪」は心持ちのこと。心配で落ち着かないこと。

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東山再起

  • 中国語:东山再起  [ dōng shān zài qǐ ]
  • 出典:晋書(谢安传)
  • 意味:いったん勢力を失った後、再び地位を復活することを言う。
  • 余談:晋代、東山に隠棲していた謝安という高潔がその後、謝安は政界に復帰し昔の勢力を盛り返した、との故事。類語に「卷土重来」という、漢の劉邦と楚の項羽の故事に基づく言葉があります。しかし、項羽は再起できないまま自決しました。一方、謝安は復帰に成功しました。よって「东山再起」の方が縁起が良いのではと勝手に思っています。

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無精打采

  • 中国語:无精打采  [ wú jīng dǎ cǎi ]
  • 出典:紅楼夢
  • 意味:意気消沈する。元気がない。しょんぼりする。体力気力がない。張り合いがない。だらだらした態度。

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伏すこと久しきは飛ぶこと必ず高し

  • 中国語:伏久者飞必高  [ Fú jiǔ zhě fēi bì gāo ]
  • 出典:菜根譚
  • 意味:長い間、伏して力を蓄えていた鳥は、必ず高く飛ぶ。逆境にあえいでいても、腐らず力を蓄えていれば実力を発揮できる時が必ず来る。

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記事:【捲土重来】 失敗しても腐らなければピンチがチャンスに 人生に負けは無い

掴んだ再挑戦のチャンス

 上海に向かう飛行機に初めて搭乗したのは1998年6月18日のこと。目的は、上海現地法人の総経理(社長)としての事務引き継ぎを行うためです。初めての海外赴任であり緊張と不安を抱えた三時間ほどのフライトです。途中、目を閉じるとこの一年の出来事が脳裏に甦ってきます。

 自らの不徳が引き起こした大失敗。25年勤めましたが、その“事件”で心は完全に折れてしまいました。これでサラリーマン生命は断たれたと思わせた減俸処分と左遷人事。しかし、そのショックの大きさよりも、実は、同僚や先輩の激励の方が胸に刺さりました。おかげで、希望を持ち前を向くことができたのです。人生は何があろうと、決して腐らず希望を持ち続け、コツコツと努力を続けていけば再起のチャンスがやってくるものです。

 絶対に避けるべきは、「無精打采」という、生気を欠いた、だらだらとした態度です。それでは幸運の女神も寄り付きません。そして、大切なことはチャンスが来たことに気がつくように、日頃から感性を磨いておくことです。そして「来た~っ!」と感じたら逃がさないことです。そうすれば再挑戦はできます!

 

復活戦の第一歩

 思い出に浸っていると、機内ではファイナルアプローチのアナウンスが。眼下には何故か赤茶けた色の海が。陸上に見える建物はレンガ色が目立ちます。こんな光景を見るのは初めてです。この先の上海での仕事はどうなることやら暗示させ、不安がよぎります。

 当時は浦東国際空港が開港前で、到着したのが上海虹橋国際空港。お世辞にも立派とは言えない小さな国際空港でしたが、降り立ち中国の空気を吸ったとき、「ようし、行こう!」と気持ちが高揚。大きな失敗をしたけれど、「捲土重来」、敗者復活戦の第一歩が始まったのです。

 

容赦ない音攻撃

 浮足立つとはこういうことか。おぼつかない足取りで、出迎えの車に乗り、虹橋空港から高架路を会社のある浦東に向かって走りました。途中、車窓から見える高層ビル群に度肝を抜かれました。日本でも見たことの無い景色に唖然としました。「心緒 寧ならず」、果たしてここで仕事ができるのだろうか。不安が募ります。

 高ぶる気持ちが冷めやらぬうちに会社に到着、さっそく引継ぎが始まりました。前任者と通訳が話す日本語以外に、聞こえてくるのは上海語だけでした。「謝謝」と「再見」しか知らない者にとってはこの上海語、耳に突き刺さる「音」としか聞こえません。退社時間にはヘロヘロ状態に。

 やっとの思いで仮住まいのホテルに帰りつき、部屋のソファーに座りこんで20分。やおらテレビをつけると、またもや中国語の容赦のない「音」が…

 拷問のような日々が二週間続き、ようやく引き継ぎが終了しました。

 

よちよち歩きのスタート

中国ビジネスには何の実績も無いずぶの素人の、頼りないことこの上の無い中国駐在の第一歩。サラリーマンとして致命的ともいえるしくじりの後、10か月後に遂に巡ってきた敗者復活のチャンス。菜根譚には「伏すこと久しきは飛ぶこと必ず高し」とあります。よちよち歩きから始まったけれど、なんと15年という長期にわたる駐在となりました。

 楚の項羽の故事による「捲土重来」。しかし、項羽は再起できないまま結局自決したそうです。もう失敗は許されない窮地で掴んだ復活のチャンス。復帰に成功した謝安の言う「東山再起」という思いをもって挑んだことが奏功したのかもしれません。

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