【創業守成】トイレで閃いた目論見 実は実現するより継続拡大することが難事

守ることは容易ではない(大連・中山広場歴史的建造物2015年9月)

 

前人の後を踏襲するだけでは、大きな伸びは期待できません。だからこそ、必要なことは前人にも増した情熱と努力。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

怡然自楽(いぜんじらく)

  • 中国語:怡然自乐   [ yí rán zì lè ]
  • 出典:桃花源记
  • 意味:喜び満足するさま。

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蓴羹鱸膾(じゅん こう ろ かい)

  • 中国語:莼羹鲈脍   [ chún gēng lú kuài ]
  • 出典:晋书·张翰传
  • 意味:莼羹とはじゅんさいの吸い物。鲈脍とは鱸のなます。故郷の味の意。故郷を懐かしく思い慕う情のこと。

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創業守成(創業は易く守成は難し)

  • 中国語:创业守成   [ chuàng yè shǒu chéng ]
  • 出典:貞観政要(唐代に呉兢が編纂した太宗の政治に関する言行録)
  • 意味:「創業」とは事業を始める事、或は国の基礎を固める事。「守成」とは堅実に守っていくこと。事業を始めることに比べると、出来上がった事業を受け継いで守っていく事の方が格段に難しいとの意。今の時代は、「創業難、守業更難」、創業も難しいが、事業を続けるのは更に難しい。ということになるのかもしれませんね。

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踏襲前人

  • 中国語:蹈袭前人   [ dǎo xí qián rén ]
  • 出典:宋史(米芾传)
  • 意味:前人のやり方に沿って行うこと。新しさを打ち出すことが不足している。

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※ 三上

  • 中国語:三上   [ sān shàng ]
  • 出典:欧阳修(宋代の文学家の散文・欧阳文忠公文集)
  • 原文:我平生所作的文章,多是在“三上”,就是马背上、枕头上、厕座上。大概只是因为只有这些地方才可以集中思想吧。(私は文章を考えるときは三つの上が多い。すなわち、馬の背の上、枕の上、トイレに座っているときに、集中して思索できる)
  • 意味:ひらめきは、三つの上で言わばリラックスしているときに生まれるのかもしれません。アイデアは机の上では思いつかないことが多いというもの。

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新年の思い

 日本のお正月である元旦は中国では単なる祝日。街にはお正月の雰囲気はまったくありません。大晦日には自室のテレビで紅白歌合戦を見ることくらいで、おせち料理や雑煮なんて中国にいる限りでは縁がありません。

 しかし、特に単身赴任者にとっては、「蓴羹鱸膾」、日本に残した家族のことを思う日が続きます。

 そこで、大連では毎年、旧正月ではなく日本のお正月明けに、「新年賀詞交歓会」なる催しを実施しています。お雑煮も味わえない元旦を過ごした駐在員が一堂に会し、新年の挨拶を行い、暫しお正月気分を味わう、という楽しい行事です。

 

打ち出した新機軸

 大連日本商工会が主催するこの行事、記憶では2004年のお正月が始まり。実は、この賀詞交歓会はの発案者は何を隠そうこの私。

 大連に赴任し三年目となる2003年に、ある大事な顧客の総経理(社長)から「まあ、順番みたいなものだから…」と言われ、商工会市内分会長の役を仰せつかりました。

 軽い気持ちで引き受けたものの結構大変。前任者から引き継いだ会員向けのセミナーを何回か開催したのですが、参加者の数も顔ぶれも限定的。どうみても、「踏襲前人」の感は否めずマンネリ感が漂っていました。

 多くの方に参加していただけそうなイベントなどは無いものだろうか? あれこれと思い悩んでいたある時、パッとひらめいたのが賀詞交換会の開催でした。

 「馬の背の上、枕の上、トイレアイデアは生まれる」と言われていますが、私が閃いたのはどの上であったのでしょうか。

 

大成功

 第一回目の開催に当たって、友人でもあったあるホテルの総経理に協力をいただき、宴会場を貸し切り、舞台上には新春を寿ぐバックタイトル、さらに鏡開きまで準備していただきました。

 おかげで、賀詞交歓会は大成功。自分のアイデアがこんな大当たりすると、なんとも気持ちがいいこと!

 賀詞交換会はその後も毎年1月に開催され、私が大連を離れるころには日本人コミュニティに根付き、恒例行事となっていました。

 残念ながら、当時の駐在員はほとんど本帰国され、この恒例行事の発案者が誰であるかご存じの方は誰もいなくなってしまいました。

 しかし、新年賀詞交歓会は今も続いていて、その時期になると「怡然自楽」、密かに悦に入っています。

 

踏襲から脱却

 この歴史の長い中国で、わずか十数年間続いただけでは、「伝統」とまでは言えませんが、何であれ、“続く”ということは、なかなかの価値あることではないでしょうか。

 例えば、事業の場合、「創業は易く守成は難し」と。唐代の太宗皇帝は、「創業の難事は過去のこと。今は守成の難事にあたろう」と臣下に答えたという故事があります。

 「守成」とは、受け継ぎ守ることだけではなく、受け継ぎ拡大するところに価値があると思います。そのためには、創業者や前任者以上に情熱を傾け、果敢に挑戦を重ねることが必要です。実はそれこそが「難事」ではないでしょうか。

 しかし、総経理のリーダーシップに社員や仲間の協力と顧客の理解が加われば、その難事は実現できると考えます。

 中国の街中には小さな飲食店や小売店が無数にありますが、よく見ると、新しく開店しているかと思えば、一方では閉店し、そのサイクルがとても短く感じます。中国では事業の規模を問わず、続けながら拡大することは、そう簡単ではないことが容易にわかります。

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