【天壌之別】情の浅深は月と鼈 四方山 中秋の名月

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一見、おべっかを使っているのように見えるが、実は情の深さの現れ。一方、そんなものは欠片も感じさせない情の浅い人もいる。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

阿諛奉承(あゆほうじょう)

  • 中国語:阿谀奉承   [ ē yú fèng chéng ]
  • 出典:东鲁古狂生(醉醒石)
  • 意味:「阿谀」、「奉承」どちらもおもねること、またお世辞を言う、おべっかを使うとの意。

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双喜 門に臨む(双喜臨門)

  • 中国語:双喜临门   [ shuāng xǐ lín mén ]
  • 出典:二十年目睹之怪现状
  • 意味:二つのおめでたいことが一緒にやって来た、との意。盆と正月が一緒に来たよう。二重のおめでた。

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天壌(じょう)の別

  • 中国語:天壤之别   [ tiān rǎng zhī bié ]
  • 出典:抱朴子(内篇·论仙)
  • 意味:「天壌」とは天と地のこと。天と地ほどの違い、差が大きいことの例え。月とスッポン。

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天道は親(しん)無し

  • 中国語:天道无亲   [ tiān dào wú qīn ]
  • 出典:老子(第七十九章)
  • 原文:天道无亲,常与善人(天道は親無く、常に善人に与す)
  • 意味:天の道は公正でえこひいきせず、常に善人に味方する、との意。親疎の別無く、人に公平に機会を与える。

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共に飲む一江の水

  • 中国語:共饮一江水   [ gòng yǐn yī jiāng shuǐ ]
  • 出典:李之仪(卜算子)
  • 意味:お互いに長江の水を飲む。共通の感情があること、また、隣国同士の友好の意味もある。原文では「我住長江頭,君住長江尾(我は住む 長江の頭、君は住む 長江の尾)」「日日思君不見君,共飲長江水(日日君を思えど 君を見ず、共に飲む 長江の水)」という風に、離れ離れの二人が同じ長江の水を飲み、互いに相手を想うという情景が浮かんできます。長江と同じように、離れた二人が同じ月を見るという「城里的月光」という題名の歌もしっとりします。

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記事:【天壌之別】情の浅深は月と鼈 四方山 中秋の名月

中秋節を前にして

 とある宴席での事。ホスト役の挨拶に続いて、ゲスト側の代表が答礼の挨拶をしました。「今日は”双喜臨門”だ。まもなくおめでたい中秋節が来る。且つ、今日はあなたにお会いできて、共に食事をすることができました。これは二重の喜びです!」と。

 中国で中秋節は春節と並んでとても大切な伝統行事です。従って「中秋節おめでとう」は当然だとしても、歯が浮くようなお世辞を面と向かって言われると、お尻のあたりがむず痒くもなるというものです。

 古来、中国では「阿諛奉承」というおべっかを使うという意味のことわざがあります。

 おべっかであるとわかっていても、何とも言えない面はゆい気持ちになります。とはいえ、なかなか耳ざわりがよく、悪い気がしなかったので、まあいいか…

 

浅深の大きな違い

 また、こんなシーンも。本社から派遣され現地会社の総経理として長く務めていたが、本社命令により総経理職を辞して帰国することになった。

 現職の間は「総経理」と職名で呼んでいたのに、辞令が発効した翌日には「…さん」と、さん付けで呼ぶ後任の日本人。勿論、そう呼ぶのは間違いではありませんが、何か薄情に感じてしまう。

 一方、帰国して何年も経ち、久しぶりに連絡があった元部下達は一様に「総経理!」と以前と同じように呼ぶのです。

 一見、おべっかを使っているように聞こえるかもしれませんが、実は必ずしもそうではなく、むしろ共に闘ったという「情の深さ」が現れた言葉ではないでしょうか。そう呼ばれると、共に苦労した往時のことが甦ってきます。おそらく生涯、それは変わらないのではないかと思います。彼らの情の深さには感嘆しかありません。

 天壌の別」という中国のことわざがあります。両者の情の浅深は天と地ほどの違いに感じられ、まるで、美しい「月」と、醜い代表格の「スッポン」のようです。

 

月に思いを

 仕事や学業などそれぞれの理由で離れて暮らす家族や恋人同士。しかし眺める月は同じ。北宋代の詩人である李之儀は「共に飲む長江の水」と詠んでいます。

 逢うことはできないが、長江の流れに佇み、夜空の「月」を眺め、相手のことを想うという光景が目に浮かび心に沁みます。拝金主義など、ともすると何かと殺伐とした社会にあっても、何ともしっとりとした情の深さを感じさせてくれるではないですか。

 また、老子は「天道は親無し」という言葉を残しています。すべてのことは昼間は太陽が、夜には「月」がお見通しであるというのです。うわべだけを追いかけ繕うのではなく、情に厚い善人でありたいと思います。

 そして、数々の紆余曲折を経てきた日中関係。関係が良い時にお付き合いするのは簡単かもしれませんが、悪い時であっても変わらず草の根のつき合いを継続する。これも人間として情の深さがなせる業ではないでしょうか。

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