【善悪の報いは影の形に随うが若し】だからこそ善にも悪にも対応しなければ…

大連・中山広場の歴史的建造物(2016年10月)
「性善説」はともかく、「性悪説」をベースにして考え現地会社を運営するのは、日本人にとっては少々馴染みにくいところがあります。しかし…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
数ふるに勝つべからず(不可勝数)
- 中国語:不可胜数 [ bù kě shèng shǔ ]
- 出典:墨子(非攻)
- 意味:数が多くて数えきれない、との意。
上下一日に百戦す
- 中国語:上下一日百战 [ shàng xià yī rì bǎi zhàn ]
- 出典:韩非子(扬权)
- 原文:上下一日百战。下匿其私,用试其上;上操度量,以割其下。(上下、一日に百戦す。下は其の私を匿し用って其の上を試み、上は度量を操って以って其の下を割く)
- 意味:君主と臣下は一日に百回戦っている、との意。臣下は本音を隠して君主(の出方)を試している、君主は一定の尺度を定め、臣下(のかばい合い)を割く。
精明強幹(せいめいきょうかん)
- 中国語:精明强干 [ jīng míng qiáng gàn ]
- 出典:新唐書(苏弁传)
- 意味:非常に有能で頼りになる人物や組織を表す言葉。「精明」は洞察力や判断力に優れていること。「強幹」は実行力や統率力に優れていること。いわゆる「やり手」。
善悪の報いは影の形に随(したが)うが若し
- 中国語:善恶之报,若影随形 [ shàn è zhī bào, ruò yǐng suí xíng ]
- 出典:旧唐書(くとうじょ)[ 张士衡传 ]
- 意味:善事や悪事の報いは、物の影が形に沿って見られるように確実に現れる、との意。
政を為すは猶お沐するがごとし
- 中国語:为政猶沐也 [wéi zhèng yóu mù yě]
- 出典:韓非子
- 意味:政治とは髪を洗うようなものである。髪を洗えば抜け毛が出るが、新しい毛の発育を促す事にもなる。政治を行えば、抜け毛のような些細な損失もあるが、それを恐れず実行すれば大きな利益を得ることができる。
記事:【善悪の報いは影の形に随うが若し】だからこそ善にも悪にも対応しなければ…
枚挙に遑なし
「社員を見たら泥棒と思え」と、何ともエキセントリックな言葉を発したのは、東南アジアで事業展開するある日系企業の現地責任者。
よほど、痛い目に遭ったのであろうか。仲間であるはずの自社社員のことをそう呼んだ。確かに、中国現地企業においても、トイレットペーパーやボールペン、果ては会社の試作品に至るまで、様々な物が社外に流出する事がある。
物以外にも、会社のロゴを勝手に使って実家で商売をしていたというとんでもない出来事もあった。現地企業における大小の悪事は、実は「数ふるに勝つべからず」なのです。
戦う総経理
他方、「会社の財務担当者には身内を当てる」という地元企業の中国人総経理(社長)の考え方。理由はおおよその察しがつくというもの。
お金を扱うのが財務の仕事であるし、また、会社内部の情報も知り得る立場である財務担当者には、余分な心配をしなくともよい人を、と考えるのは現地状況を考えると至極理解ができる。
更には、保険会社から支払われる社有車の無事故返戻金を懐に入れようとしたりと…
そんな企業の中で、総経理たる者は「上下一日に百戦す」状態となるのも無理はないように思います。
悪行の報い
悪事とわかっていながら、たまたまかもしれない成功を手にすると、それを見た周囲の同僚からは「精明強幹」とはやされ、本人も悪い気はしない。
しかし、小さかろうと所詮悪事は悪事。中国古典には「善悪の報いは影の形に随うが若し」との言葉があるように、悪事にも必ず報いがあるものです。いずれ白日の下に晒されることになります。
したたかさも大事
日本では一般的に「性善説」で物事が考えられていまずが、中国現地で同じような考え方でに運営をしようにも、それは脆弱な対応と言わざるを得ません。
しかし、多くの社員を雇用し、彼らの協力を得て事業拡大に突き進むためには、「社員を見たら泥棒と思え」式の考え方でも、しっくりこない。
いわば、「信用はしてるけど信頼はしてない」という考え方をマネジメントの中に具現化すべきであると考えます。「政を為すは猶お沐するがごとし」との言葉を嚙み砕きたいものです。性善説と性悪説、いずれにしても多少の損失は避けられない。時に応じてうまく使い分けるしたたかさを身につける努力を行わねばならい。