【四時の序、功を成す者は去る】 やり方次第では自縄自縛に陥り勝ち抜けない

大連・中山広場の夜景(2016年10月)
日系企業はルールを守り管理も厳格だ、というのが中国の人達の間で定説となっている。そして、それを了として日常の運営を行っている。しかし、よく言えば極めて柔軟な社会の中で、そんなことで勝ち抜けるのだろうか…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
四時の序、功を成す者は去る
- 中国語:四时之序、成功者去 [ sì shí zhī xù, chéng gōng zhě qù ]
- 出典:史記
- 意味:「四时之序」とは四季が移り行くこと。例えば、春は役目を終えると座を夏に譲る。人も同じように、成功し役割を終えたら、潔く表舞台から身を引くべきだ、という意味。
正経八百
- 中国語:正经八百 [ zhèn gjīng bā bǎi ]
- 出典:张天民(创业)
- 意味:厳粛で真面目である。生真面目であること。「正経」は正しい道、正道のこと。「八百」は数の多いことの例え。
陳(ふる)きを推して新しきを出だす(推陳出新)
- 中国語:推陈出新 [ tuī chén chū xīn ]
- 出典:梁溪漫志·张文潜粥记
- 意味:「陈」は「古い」との意。「推」は外に押し出す、との意。古いものを工夫して新しいものを打ち出し、発展させること。
繭を作るに自らを縛す
- 中国語:作茧自缚 [ zuò jiǎn zì fù ]
- 出典:白居易
- 意味:蚕は生糸を出して繭を作り、自分をその中に閉じ込める。何かをやろうとした結果、自身が自身を困らせることになることの例え。自縄自縛。
流年は水の似(ごと)し
- 中国語:似水流年 [ sì shuǐ liú nián ]
- 出典:汤显祖(牡丹亭)
- 意味:「流年」は光陰、年月のこと。歳月は水の流れのように速い、との意。
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若い会社にも
1994年に中国で設立された比較的若い会社であるが、男性60歳、女性55歳という当時の定年退職年齢にルール対して、20年も経過すると退職年齢に達する社員が出てきます。
会社設立直後に一社員として入社したある社員もその内の一人。目立たないが、とにかくコツコツとした仕事ぶりは「正経八百」そのもの。
それは周囲の若い社員達も含めて皆が認めるところで、そこにいるだけで安心感を与える、古参社員でした。
歳月の過ぎ去る速さ
瀋陽に拠点展開をした際には、会社として白紙状態のエリヤでもあり、まずは会社理念などを現地の新入社員に正しく伝承する事に重きを置き、責任者として彼を選抜しました。大連で経験を積んだ彼は、社内でも「最も信頼できる正直者」という評価であり、彼は責任者として最適任と断じたのです。
そして、見事に立ち上げの任務を果たしました。その後、大連に帰任。ついには副総経理(副社長)にまで昇格しました。
そんな彼が定年に達したとは「似水流年」、歳月が過ぎ去る速さを改めて感じます。
彼は彼は若くして入社後、二十数年にわたって真面目一筋に懸命の努力を続け、遂に会社規定により定年を迎えたのです。その間、結婚をし、子供をもうけ、自宅やマイカーも購入し、所謂「小康生活(中流生活)」を実現しました。
定年に至り身を退く
彼のような成功者が定年を迎え、それをもってスパっと表舞台から去るのは、「四時の序、功を成す者は去る」という言葉のとおりではあります。が、些か寂しく感じるのもまた事実。
四季の移ろいは毎年繰り返され、絶えることはありませんが、定年となり去った人は再び戻ってはこないのです。つまり、会社にとってのマイナス要素が含まれていることにも着目しなければなりません。
ルールに自縛
「定年」、それは勝利者の前にも立ちはだかる、会社規定なのです。勿論、それを否定するわけではありませんし、また、ルールをきちんと守ることは当然です。
しかし、定年に達したというだけで、無条件に退職するというのは、ある意味で会社組織のパワーを削いでいると言えないだろうか。日本国内であればともかく、有能な人材がそんなにも豊富ではない、また、会社自体の歴史が浅い中国現地会社にとっては懸念されます。
「繭を作るに自らを縛す」と、自らルールを作り、守った結果、最終的には自分が困るというのでは、何をか況やである。中国でのビジネス拡大の妨げにさえなりうるのではないかと考えます。
何事も柔軟に
ルール無視は論外ですが、ルールにとらわれすぎるのも如何なものか。特に中国ではそう考えざるを得ません。有能な社員がいなくなることで、連続性が途切れてしまうことは、時には自らハンディを創り出すことになります。
「規定の年齢に達したら即、定年退職」という杓子定規のような考え方ではなく、「推陳出新」と、柔軟に物事を考え対処することの方が中国には通じそうに思います。
余人をもって代えがたいような人材など、会社にとって必要な場合は、その人材を留保することを考えた方が得策ではないでしょうか。そのためには、役職定年のような考え方や、顧問や副役職で雇用を継続するなどの方法も考慮すべきではないだろうか。
定年に達した社員がどんなに有能で会社にとって必要な人材であっても、定年年齢で自動的に退職するという、自分達で決めたルールをとにかく守ろうとするのはまるで自縄自縛、それは、時として「成功」を先延ばしすることでしかありません。