【君の明らかなる所以の者は、兼聴すればなり】聞く耳を持つ でも鵜呑みは禁物

大連にも菖蒲の花(労働公園2019年5月)
縦社会にある中国現地会社の総経理(社長)は、比較的容易に部下社員達との間が分断してしまうことを知るべきです。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
了(あきら)かなること掌を指すが如し(了如指掌)
- 中国語:了如指掌 [ liǎo rú zhǐ zhǎng ]
- 出典:論語(八佾)
- 意味:物事が非常に明白で、疑う余地がないこと。まるで自分の手のひらを見るように、はっきりと事実がわかっている様子。
傍らに人無きが若し(傍若無人)
- 中国語:旁若无人 [ páng ruò wú rén ]
- 出典:史記(刺客列传)
- 意味:他人を無視して思い通りに振舞うこと。
岸を隔てて火を観る(隔岸観火)
- 中国語:隔岸观火 [ gé àn guān huǒ]
- 出典:乾康(投谒齐已)
- 意味:対岸の火事。他人の危難を救おうとしないで、ただ傍観すること。
君の明らかなる所以(ゆえん)の者は、兼聴すればなり
- 中国語:君之所以明者,兼听也 [ jūn zhī suǒ yǐ míng zhě, jiān tīng yě ]
- 出典:贞观政要(论君道)
- 意味:明君の明君たるゆえんは広く臣下の進言に耳を傾けることである、との意。
口に是とし心に非とす(口是心非)
- 中国語:口是心非 [ kǒu shì xīn fēi ]
- 出典:桓谭(新论・辨惑)
- 意味:口で言うことと腹の中が違うこと。
生呑活剥(せいどんかつはく)
- 中国語:生吞活剥 [ shēng tūn huó bō ]
- 出典:张鷟(朝野佥载)
- 意味:「生呑」は、生きているものを丸呑みすること、「活剥」は、生きているものの皮を剥ぐこと。他人の意見や考えを鵜呑みにする、との意。
直言の路を開き、不諱(ふき)の門を広ぐ
- 中国語:开直言之路,广不讳之门 [ kāi zhí yán zhī lù, guǎng bù huì zhī mén ]
- 出典:唐太宗の名言
- 意味:他の人がいつでも率直に意見を言えるように道を開いておくこと、憚ることなく発言できるように門を開けておくこと。
記事:【君の明らかなる所以の者は、兼聴すればなり】聞く耳を持つ でも鵜呑みは禁物
何これ
あと10日もすればオープン当日を迎えるというのに、これは一体どういうこと…
ほぼ完成している内装工事の現場ですが、フロアに大きな穴が開いているではないか。ここは中国初進出を目指してカウントダウンが進むある日系企業の工事現場。
開店準備に当たっている日本人スタッフの方に聞いてみると、その大きな穴は、下のフロアに繋がる階段を作る場所であるとのこと。
「了かなること掌を指すが如し」、誰が見たってオープンには間に合わないであろうに、開店予定などの計画に変更は無いと言う。担当者曰く「オープンには間に合わないと思う。でも、そんなことを社長には言えない」とのことでありました。
どうする総経理
そんな少しのやり取りの中で、どことなく感じられた「隔岸観火」の雰囲気。結局、その後、社長が自ら現地視察を行い、オープン延期を決断したとのことでした。
何事も社長でしか決められないということの内情は知る由もありませんが…
その日系企業のことはさておき、一般的に、中国・現地会社の運営・事業拡大をミッションとして、采配を振るう総経理(社長)は如何にあるべきなのでしょうか。
総経理自身の態度
実は、本社から派遣され、総経理(社長)として着任早々「何だ、この会社は!」と、自身の尺度とは違う眼前の実態をとらえ、上から目線で詰るような場面が十分あり得ます。
「自分は総経理で現地会社のトップ。自分より偉い人はいない」。だからといって、過度に尊大ぶったりするのは如何なものか。
一般社員からすると、「絶対権力者」である総経理に反抗するわけにもいかず、結果的には「口是心非」となってしまう。すると、当然のように「上に指示あれば下に対策あり」ということを部下社員に実行され、トップである総経理と一般社員との間が分断される。
更に進むと、社員達は公然と牙をむくことになるかもしれません。そんな歪んだ組織になってしまっては期待どおりの事業拡大ができようはずがありません。
聞く耳を持つ
むしろ、まずは、自ら進んで周りの一般社員の意見を聞くという態度をとることが大事ではないだろうか。「君の明らかなる所以の者は、兼聴すればなり」との言葉にもあるように。
特に、中国一年生の総経理は現地のことがよくわかっていないのですからなおさらです。
人の意見をよく聞くということは、部下社員にしてみれば、自分たちに寄り添ってくれている、という親近感を感じるところであり、風通しの良い組織運営の第一歩であります。
手腕が問われる
加えて「直言の路を開き、不諱の門を広ぐ」という心掛けを日頃から実践し、社員達に示すことが求められるのではないでしょうか。
それらを以って目線を下げておかないと、必要な情報がリーダーたる総経理に届かなくなってしまうことが最大の懸念です。せいぜい社員数が百人程度の会社で、総経理が尊大ぶって「傍若無人」のありさまでは何も始まらないのです。
とはいえ、総経理としての厳格さを兼ね備えておくことは不可欠でありますし、部下からの話を「生呑活剥」することは絶対に避けなければなりません。部下からの報告の正否を判断することができる能力を、一刻も早く具えなければなりません。
聞く耳を持つことと厳格さを兼ね備えること、そのあたりの捌きは総経理自身の腕にかかっているのです。